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蛍光顕微鏡

暗室不要・フル電動制御・クリアな画像を実現したオールインワン設計の蛍光顕微鏡。生きた細胞間のコミュニケーションプロセスの観察や、全体像の高解像度撮影、全体形状を見ながらの分散状態の定量化など、従来の顕微鏡観察の常識を大きく変える蛍光顕微鏡です。

蛍光顕微鏡

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生産終了品

  • 「BZ-X」シリーズは、高度な観察能力とターゲットを瞬時に捕捉するフル電動操作系、先進の撮影機能や最先端の解析機能などを備えたオールインワン蛍光顕微鏡です。暗室不要、設置面積はA3用紙サイズ。モノクロ・カラー切り換え型の高感度冷却CCDカメラを搭載しており、高精細観察が可能です。大型電動ステージで見たい場所へすぐにアプローチでき、高速オートフォーカスや撮影条件再現機能などにより、作業者によるバラつきのない観察を実現しています。蛍光ボケのない高精細な撮影、マルチウェルプレートの全面一括自動撮影のほか、設定した間隔で明視野、蛍光、位相差のタイムラプス撮影が可能です。さらに、蛍光顕微鏡に欠かせない画像解析による定量化は自動化されており、三次元解析や動態解析、時系列自動定量化など豊富な解析機能を備えています。

    ありのままを映し出す高度な観察能力

    微弱な蛍光シグナルを鮮明に捉える高感度冷却CCDカメラを搭載。モノクロとカラーをワンタッチで切り換えることができ、観察目的や対象物に合せて、最適な観察方法を選択することができます。モノクロCCDでは高感度・高解像度の観察が可能で、高速・高階調・定量性を実現しています。一般的なカラーCCDに使われる赤外カットフィルタがないため、近赤外波長など長波長にも対応しており、ライブセルイメージングに最適です。また、16,384階調(14bit)の高階調データが取得でき、カラーフィルタがなく蛍光の色によって素子の受光量にばらつきの出ないモノクロCCDは、高精度な定量評価にも適しています。一方、カラーCCDでは色再現性の高い3CCDによる画質を実現しています。
    光源には、広い波長で高い光量を持つメタルハライドランプを搭載し、1台で紫外から近赤外まで幅広く対応。対物レンズには、要求解像度の高い医学分野での実績と、デジタルマイクロスコープなど各種光学顕微鏡で培った光学技術を結集し開発したオールインワン蛍光顕微鏡専用レンズを搭載。高精度光学系を最大限に活かした鮮明な観察ができます。

    蛍光
    位相差
    明視野
    近赤外を含む650~900nmの波長域は「生体の窓」と呼ばれ、生体組織からの自家蛍光や光の散乱が弱く、生体深部の蛍光観察に適しています。この波長域においては、低毒性で発光効率の良い蛍光色素の開発も活発で、今後のバイオイメージングには必須といえます。

    位置合わせで迷わない、簡単フル電動システム

    大型の電動ステージを搭載。ステージビューやナビゲーション機能により、広い範囲の中でターゲットを見失うことなく観察を進めることができます。各種ステージホルダに対応したマップ画像と大型電動ステージが完全連動するので、ワークをセットした直後から、瞬時に見たい場所に視野を合わせることができます。また、ワンクリックで画面が高感度パーシャルスキャンモードに切り換わり、Z方向を高速スキャンできます。明視野・位相差画像はもちろん、光量の弱い蛍光画像でも倍率を問わず瞬時にピントを合わせ、クリアな画像が得られます。
    褪色低減モードでは、視野を変えると瞬間的に励起光を照射し、画像を取得します。その後、再度視野を変えるまで励起光を遮光するため、視野合わせの際の褪色を最小限に抑えることができます。その他、6穴電動レボルバやフローティング構造による防振設計の採用により高精度な位置決めを可能としており、多数の対象物を観察する場合にも素早く視野を合わせることができ、観察を効率的に進められます。

    A:大型電動ステージ B:6穴レボルバ C:フローティング構造
    BZ-X シリーズ - オールインワン蛍光顕微鏡

生産終了品

蛍光観察法(fluorescence microscopy)という方法でサンプルを観察する顕微鏡です。
「蛍光観察法」とは、物質に蛍光体などの励起を引き起こす光である紫外線や可視光線など(励起光)を照射して、物質が特定の波長の光を吸収してそれより長い波長の光を放射する「蛍光」を画像として観察・記録する方法のことです。
従来の顕微鏡では、可視光をサンプルに当てて拡大した画像を観察していました。しかし蛍光顕微鏡は、サンプルが発した蛍光に焦点を合わせて、感度の高い検出器で観察します。これにより、暗い視野の中で蛍光が光るので検出したい部位を特異的に識別することができ、高い解像度と検出能力での観察が実現できます。

蛍光顕微鏡のメリット1:細胞全体から内部の分子まで観察

蛍光顕微鏡は、蛍光色素で染めた細胞に光を当てて観察するため、反射光で観察する顕微鏡と比べて、特徴を明確に把握することができます。また、蛍光は感度が高く、明るさや波長の違いも検出できます。これにより、光学顕微鏡では観察できなかった細部も観察することができます。

光学顕微鏡の解像度は、観察に使う光の波長に比例し、対物レンズの開口数に反比例します。光の波長は約200nmまでなので、光による観察の解像度には限界があります。
一方、蛍光顕微鏡は細胞を蛍光色素で染めて観察するため、細胞の中のさまざまな隣接領域と構造体を、より鮮明に対比させることができ、高い解像度で観察することができます。また、蛍光は感度が高く明るさや波長の違いも検出できるので、蛍光を使うと、細胞はもちろん細胞内部の分子まで観察することができます。さらに、複数の蛍光色素を使い、スペクトルに対応したバンドパスフィルタなどを用いると、複数の蛍光色素の観察画像を取得することができます。

蛍光顕微鏡のメリット2:生きた細胞を観察可能

共焦点レーザー顕微鏡の多くは1度に励起できる波長域が狭く、分解能を上げるためにピンホール径を小さくすると、その分高いレーザー出力が必要になり蛍光色素の褪色や生細胞へのダメージが大きくなってしまいます。一方、蛍光顕微鏡は白色光源と励起フィルタの組み合わせにより幅広く励起でき、高感度撮像素子により低ダメージで蛍光観察が可能なため、より手軽に生きた細胞の観察が可能です。

共焦点レーザー顕微鏡の多くは、単波長レーザーにより高い波長分解能と、ピンホール径を小さくして励起領域を極小化することにより高い分解能を実現しています。反面、励起波長域を狭くし、ピンホール径を小さくすると光量が減少してノイズが増えます。これを解消するためにレーザー出力を上げたり、走査スピードを遅くしたりといった操作が必要となり、生細胞へのダメージが大きくなってしまうという懸念が生じていました。
最新の蛍光顕微鏡では、紫外領域から近赤外領域まで波長を有する白色光源を用いており、蛍光試薬に応じた励起フィルタを用いることでロスなく蛍光を励起、撮影することができます。さらに高感度の撮像素子や、褪色を抑える機能の搭載などにより、標本へのダメージを軽減。生きたままの細胞を高精細に観察するタイムラプスやライブイメージングが手軽に行えます。

蛍光顕微鏡のメリット3:蛍光ボケのない高精細画像を撮影

最新の蛍光顕微鏡では、電気的投影素子を用いた構造化照明(Structured Illumination)により、標本を高速にスキャン。レーザーではなく白色光源を用いるため、ダメージを抑えながら幅広い波長で、蛍光ボケのない高精細な光学セクショニング画像を取得できます。

標本に厚みがある場合、通常の蛍光観察ではフォーカスの合った箇所からの鮮明なシグナルにZ方向の非フォーカス面からのボケた光が蛍光ボケとして混ざり込んでしまうため、鮮明な画像を取得できませんでした。
最新の蛍光顕微鏡では、励起光を縞状にパターン化(構造化)して標本に投影します。フォーカスの合っている部分には縞が鮮明に投影されますが、非フォーカス面には投影されないため縞は映りません。このパターンを動かして標本をスキャンすると自動的に複数枚の画像が取得されます。しかしこの際、パターンの位置が変わっても非フォーカス面からの蛍光ボケ成分については輝度が大きく変化しないため、蛍光ボケ成分だけを正確に分離できます。これにより、フォーカス面の信号のみを映し出したクリアな「光学セクショニング画像」が得られます。
励起光の構造化には物理的なグリッドを用いる方式と、電気的投影素子を用いる方式があります。後者は倍率に応じてパターンの幅を自動的に最適化させられるだけでなく、パターンをピンホール状に可変させることもでき、より高解像度な撮影が可能です。

蛍光顕微鏡の業界別導入事例

がん研究、細胞生物学:エクソソームの局在観察

エクソソームの直径は、約30nm~150nm。光学顕微鏡での観察は困難です。電子顕微鏡は、電子ビームで細胞が変質してしまい、物性計測も一般的ではありません。そして装置も大掛かりで、使える施設は限られます。
「BZ-X」シリーズによるエクソソームの観察では、エクソソームを蛍光色素で可視化し、抽出したエクソソームに含まれるRNA(RNAカーゴ)、またはエクソソーム膜を観察します。これにより、時間に依存するエクソソームの局在変化や、エクソソームによる細胞間コミュニケーションのプロセスである細胞への取り込みをモニタすることができます。
「BZ-X」シリーズによる観察は、エクソソームの変化やそのプロセスなど他の方法ではできない観察を実現し、より精度の高い解析を可能にする新しい技術といえます。

臨床医学:CD68(マクロファージ)の糸球体占有率自動解析

CD68(マクロファージ)の腎糸球体への浸潤は、すべての進行性腎疾患に見られる普遍的な現象です。CD68の観察ではHE染色を行い、腎生検の全体像を撮影します。通常の顕微鏡では厚みのあるサンプルはピント合わせが困難です。
「BZ-X」シリーズならZスタック撮影により全体にピントの合った観察が可能です。また、高速画像連結により全体像を高解像度でとらえたり、閾値を揃えて自動定量し客観的な解析を行うことも可能です。毛細血管で形成された微小な固まりである糸球体は1個の腎臓に約100万個存在し、腎臓のろ過機能をつかさどります。この糸球体にCD68が浸潤することで、腎組織が線維化し進行性腎疾患が発生します。「BZ-X」シリーズによる観察は、この疾患の治療に対し大きな進歩をもたらす技術として注目されています。

産業分野、材料化学:複合材料中の繊維(有機物)の分散状態の可視化

無機材と有機材を混ぜ合わせた材料である複合材は、製造工程で均一に混ざっていなければ、狙った特性が出ない場合があります。無機材と有機材の混ざり具合の確認は、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察が一般的です。しかし、無機材と有機材が同一色である場合、有機材のみについてどのような分散になっているかを可視化することは困難でした。一般に、有機材は光り、無機材は光りません。蛍光観察ではその特性を応用し、有機材のみを蛍光し可視化します。
「BZ-X」シリーズは、蛍光、光学(明視野)を瞬時に連続撮影し、簡単に重ね合わせ画像を得ることができます。これにより、全体の形状を見ながら、有機材の分散状態が把握できます。光っている部分は定量解析ソフトで2値化できるため、物質の個数や面積といった、数値パラメータでの定量評価も可能です。さらに、大きなサンプルも、倍率にかかわらず広い視野で撮影できるので、正確な評価・判断が実現します。

蛍光顕微鏡の業界別導入事例

ウェルプレートで定量解析する

さまざまなワークに対応する大型の電動ステージを搭載。見たい部分がすぐに探し出せるステージビューやナビゲーション機能により、広い範囲の中でターゲットを見失うことなく、スピーディーに観察を進めることができます。また、任意の1点で設定した撮影条件を、瞬時にウェル内の全視野に適用。さらにプレート内の全ウェルに展開し、同一条件で全ウェルをスキャンします。任意の視野、ウェルだけをスキャンすることも、撮影位置をランダムに決定することも可能です。
条件がバラつかないため再現性の高い撮影ができるだけでなく、簡単な操作ですべての設定が完了するため、これまでのように最初から最後まで顕微鏡に張り付いている必要はありません。解析も撮影時と同じように、任意の1枚の画像に対して条件を設定するだけで、膨大な数の画像を自動で行います。
測定時間の短縮や、条件にバラつきのない正確な解析を可能にすることはもちろん、オールインワン蛍光顕微鏡の高精細な画像を用いた高密度な測定データが、これまでにない明瞭な観察結果を提供します。

生きている細胞や組織の変化を撮影する

あらかじめ定めた時間間隔で、明視野、蛍光、位相差像を時系列で長時間タイムラプス撮影します。経時変化を数値化できる時系列輝度計測機能を搭載しているので、タイムラプス撮影した画像のRGBの輝度変化を時系列で計測でき、遺伝子の発現の変化などを時間軸に沿って定量的に評価することができます。
また、タイムラプス撮影の途中でも撮影位置(X・Y・Z)を調整できるので、細胞が視野外に移動して見失うなどの失敗を防ぐことができます。撮影済みの画像を使って位置を調整するため、励起光の照射による褪色や、活性の低下などの心配もありません。さらに、タイムラプスモジュール(BZ-H4XT)とマルチスタックモジュール(BZ-H4XD)を使うと、多点登録した座標ごとにフォーカス位置・露光時間・レンズ倍率・使用するフィルタ・Zスタックの幅/ピッチなどの各種条件を個別に設定できたり(座標別撮影条件設定機能)、Zスタックデータから最もピントが合っている画像を自動選択し、常にピントの合った画像の撮影を可能にする機能(フォーカス追従機能)も搭載しています。

広視野を高精細に撮影する

モノクロ冷却CCDカメラにより、⾼感度ながらノイズの少ないクリアな共焦点並みの撮影が可能です。
低い励起光量でも鮮明な蛍光観察ができるため、褪⾊を最⼩限に抑えられるだけでなく、光毒性による細胞へのダメージも軽減できます。Cy7などの近⾚外波⻑にも感度を持っているので、深層発現する細胞の観察にも適しています。また、蛍光光源には紫外から近⾚外まで幅広い波⻑域で強い光を持つメタルハライドランプを採⽤。光源を追加することなく、フィルタ交換だけで各種蛍光⾊素に対応できます。そして、電気的投影素子による構造化照明(Structured Illumination)を用いた「BZ-X」シリーズ独自の光学セクショニング技術は、これまでにないクリアな画像を実現。ワンクリックで「蛍光ボケ」のない高精細な撮影が可能です。
厚みのある標本でも、合焦点位置の情報を正確に検出しクリアな画像を得ることができるので、動物細胞・植物細胞・培養組織などあらゆるものをありのままに映し出します。さらに、非焦点面からの蛍光の影響を受けずに高精細な断層画像が得られ、Zスタックデータを基に三次元画像を構築できるため、三次元局在をあらゆる方向から確認できます。

Q.
蛍光顕微鏡と共焦点顕微鏡の違いは?
A.
照射した光(励起光)の波長に応じて蛍光たんぱく質または標本そのものが発する蛍光(後者は自家蛍光)により像を観察する点では同様ですが、光源が蛍光顕微鏡は白色光源であるのに対し、共焦点顕微鏡はレーザー光であるという点が異なります。この2種類の顕微鏡の主な相違点を以下に挙げます。
蛍光顕微鏡:
・光源には水銀ランプ(超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなど)やLEDを用いる。
・一般には面で光を照射し、励起された蛍光を撮像素子で観察、撮影する。
・焦点面以外からの光(ボケ像)も撮像してしまう。最新の蛍光顕微鏡では、構造化照明を用いることでボケ像を排除することが可能。
・紫外から近赤外波長まで広い波長をもつ白色光源のため、一つの光源でさまざまな波長の蛍光が撮影可能。(適切なフィルタが必要)
共焦点顕微鏡:
・光源にレーザー光を用いる。
・点状に照射したレーザーを走査させ、励起された蛍光を光電子増倍管でデータ化し、像を作ることで観察、撮影する。
・対物レンズの焦点面と共役の位置にピンホールを配置することで、焦点面以外からのボケ像を除去し、焦点面のみを撮影できる。
・通常は一つのレーザー管につき単波長の励起光が発せられ、複数の蛍光を検出する場合はその分のレーザー管を増設する。
Q.
他社製のレンズは使用できますか?
A.
同焦点距離60mmであり、かつM25のネジ径のレンズの多くは、そのまま使用できます。その他のレンズについても、アダプタを用いることで使用できるものがあります。お手元のレンズが利用できるかどうか、またアダプタの詳細についてご希望の場合は担当営業までお問い合わせください。
Q.
過去に撮影した画像の撮影条件は確認できますか?
A.
オールインワン蛍光顕微鏡で撮影した画像には、レンズ倍率やフィルタ、座標位置、露光時間などの撮影条件が埋め込まれているため、撮影画像を保存しておけば画像解析用アプリケーションを用いて撮影条件の詳細を簡単に確認することができます。また、撮影条件再現機能を用いれば、対象の画像ファイルをクリックするだけですべての撮影条件が瞬時に設定に反映されるため、過去の撮影画像と同じ条件で素早く正確に撮影できます。
Q.
オールインワン蛍光顕微鏡のメリットは?
A.
まず、オールインワン蛍光顕微鏡である「BZ-X」シリーズには、暗室が不要です。明るい部屋でも高コントラストの蛍光観察ができます。設置面積はA3用紙サイズなので、設置場所を選びません。
コンパクトながら、ウェルプレート対応の大型電動ステージを搭載しており、複数のサンプルも効率よく観察できます。対物レンズが最大6本装着でき、CCDカメラもカラー/モノクロの2モードを切り換え可能。対物レンズやフィルタの切り換え、フォーカス調節などほぼすべての操作がPC上で可能。褪色軽減モードや高速オートフォーカス機能も備え、習熟度によらず誰でも鮮明な画像が撮影できます。
さらに、光学切片像を撮影するためのセクショニング機能や、自動で撮影画像を繋ぎ合わせるイメージジョイント機能、定量解析を自動化するハイブリッドセルカウント/イメージサイトメーター機能など、さまざまな標本に対応する豊富な拡張機能を備えています。これらの高性能と設置性・操作性は、オールインワン蛍光顕微鏡である「BZ-X」シリーズならではの特長といえます。

蛍光顕微鏡の仕組み

蛍光顕微鏡は、おおまかに検出器であるCCDカメラ、光源、フィルタ、ビームスプリッターで構成されています。このうち、フィルタは励起フィルタと蛍光フィルタで構成されています。従来、蛍光顕微鏡はサンプルを照射する励起光を観察光路から完全にカットするため、暗視野コンデンサを使った透過方式でした。しかし、近年になり短波長を反射し長波長を透過するダイクロイックミラーや自家蛍光の少ないガラス材料で構成された対物レンズなどの開発により、操作性の高い落射方式が主流になっています。ここでは、落射蛍光顕微鏡を例に説明します。

CCDカメラ(検出器)

放射された光を検出するカメラです。蛍光観察では、通常CCDカメラが使用されています。カメラはコンピュータ画面にも接続されており、撮影画像がコンピュータ画面上に表示されます。

光源

水銀(Hg)ランプまたはキセノン(Xe)ランプ、またはLEDが使用されています。

励起フィルタ

励起光源から蛍光物質の励起に必要な波長の光だけを取り出します。特定の波長の光のみを通し、それ以外の光を通さないフィルタです。

ビームスプリッター(ダイクロイックミラー)

励起光と蛍光を分離します。一般的な鏡と違い、特定の波長の光だけを反射し、それ以外の光は透過します。励起光をサンプルに反射させると同時に、サンプルが放射した蛍光だけをCCDカメラに伝送します。

蛍光フィルタ

励起フィルタを透過した光はすべて遮断し、サンプルが放射した光の波長だけを伝送します。これにより、サンプルが放射した蛍光と、その他の散乱光などの不要な光を分離します。

A:励起フィルタ B:CCDカメラ(検出器) C:蛍光フィルタ D:ビームスプリッター(ダイクロイックミラー) E:対物レンズ F:試料 G:光源

蛍光顕微鏡のフィルタ

フィルタの役割り

蛍光顕微鏡の励起フィルタ、ビームスプリッター、および蛍光フィルタは、1つの「ミラーユニット」または「キューブ」に収められ、特定の蛍光物質が持つスペクトル(※)に適合するよう設計されています。また、ミラーユニット内にフィルタを収めないタイプもあり、この場合フィルタは「ターレット」といわれる円板に配置されます。そして、ターレットにより最適な状態に励起波長と蛍光波長を組み合わせます。
フィルタの目的は、結合した蛍光物質が発する目的の光をターゲットに集め、他の部分からの光(周辺光、励起光源など)は集光しないことです。このとき、検出器に到達する不要な光を「バックグランド蛍光」といいます。

※スペクトル:分光器で光を波長に分解(分光)するとき、波長における光の強度分布を配列したもの。

フィルタの選び方

フィルタの選び方は、観察したい蛍光色素が1種類の場合と2種類以上の場合で異なります。たとえば、観察したい蛍光色素が1種類の場合、励起フィルタと蛍光フィルタは蛍光色素に適したタイプを選びますが、2種類以上の蛍光を重ねて観察したい場合は使用する蛍光色素によって組み合わせが異なるため注意が必要です。これは、蛍光色素によって光のスペクトルが変わるためであり、フィルタの選択には蛍光色素のスペクトルを知ることは欠かせません。

スペクトルを調べる

フィルタを選ぶには、まず各蛍光色素の励起スペクトルと蛍光スペクトルを調べます。たとえば、2種類の蛍光色素を使う場合、どちらか一方の蛍光色素を観察するフィルタには他方を励起しないように透過域が狭い「色素分離用」のものを選びます。これは、一方のフィルタで長波長領域まで透過域をとってしまうと、他方の蛍光も一緒に観察してしまうことになるからです。
同様にして他方の蛍光色素もスペクトルに合ったフィルタに入れ替えて観察します。このように、それぞれの蛍光色素に合った透過域が狭いフィルタを採用することで目的のシグナルだけを観察することが可能になります。

励起フィルタの選び方

光の波長域の広さに応じて、広帯域、狭帯域のフィルタがありますが、可能な限り蛍光物質の励起波長を満たすフィルタを選びます。特に、光源に水銀ランプを用いて効率良く励起するには、水銀ランプの輝線を励起波長に取り入れます。原則として、観察する蛍光物質の励起波長以外の波長帯域に強い光を与えると、背景光が上がり明るい画像が得られます。しかし、サンプルに不必要なダメージを与えることになりますので、狭帯域のフィルタを用いる場合が一般的です。

蛍光フィルタの選び方

蛍光フィルタは光源によって異なったものを選びます。たとえば、白色光源を使用する場合は、光の帯域が広いため励起に必要な波長のみを取り出す必要があり、光学フィルタを用いることが一般的です。
光学フィルタには、簡易な色付きガラスから、特定の波長の光を通過させ他の波長の光を遮断するように設計された干渉フィルタまで多くの種類があります。 そして、ある特定の波長の光のみを取り出す場合は、「バンドパスフィルタ」といわれる狭い範囲の波長を通過させるフィルタを用いることが一般的です。また、単一の蛍光色素を観察する場合は「ロングパスフィルタ」や「ショートパスフィルタ」が用いられます。

ロングパスフィルタとショートパスフィルタは、単一色素を観察する場合に使用します。ロングパスフィルタは、励起光を遮断しバックグラウンドノイズを低減させ、他の光はすべて通過させるフィルタです。
一方、ショートパスフィルタは一定の波長よりも短い波長だけを通します。これらはシグナルを最大限に検出することができるため、単一色素の観察には多く用いられます。

バンドパスフィルタは、サンプルに複数の蛍光色素を用いる場合に使用します。各色素からの光を分離するため、検出器はサンプルから放出された蛍光のみを感知することができます。そして、このようなフィルタを「バンドパス蛍光フィルタ」といいます。

まとめ

このように、ミラーユニットは光源に合わせて好みのフィルタやビームスプリッターを個別に購入し、自分で組み立てることも可能です。この場合は、使用する蛍光色素に合わせて、ベストな組み合わせのミラーユニットを作成することができます。
一方で、ミラーユニットや光源、レンズが一体化されたオールインワンタイプの蛍光顕微鏡は、設置が容易で扱いやすく、顕微鏡の操作に不慣れな方でも確実に観察できるといったメリットがあります。以上から、説得力のある蛍光イメージングを得るためには、それぞれの特徴を上手く利用した観察が重要であるといえます。

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