大量の組織サンプルを解析するような作業にBZ-Xシリーズは最適。操作レスポンスの高速化で、軽快に作業を進められる点が魅力です。

昭和医科大学
細胞外マトリックス研究所
教授 薬学博士
金山 朱里 様

金山 朱里先生は、昭和大学薬学部に学ばれたのち、2009年からは同大学医学部生化学講座にて、宮崎章教授のもと講師、准教授として研究を続けられました。2024年、組織の線維化・硬化を標的に、「硬い臓器を柔らかくする」をテーマとした創薬研究の拠点として「細胞外マトリックス研究所」が新設されました。2025年、金山先生は所長・教授に就任し、同研究所を率いることとなりました。同じく2025年には、世界規模で進む高齢化と健康長寿の課題解決を目指す国際的な取り組み「Healthy Longevity Global Grand Challenge」の一環として、全米医学アカデミーの「Catalyst Award」を受賞。複数の海外研究機関との共同プロジェクトも進めるなど、近年はその研究テーマに国際的な注目が寄せられています。

主な論文

Medium-Chain Fatty Acids Ameliorate Liver Fibrosis by Phosphorylating Hepatic Stellate Cell Forkhead Box Protein O1.
Sakaki M, Kim-Kaneyama JR*, Noguchi M, Miyauchi A, Lei XF, Kobayashi-Tanabe M, Homma M, Yamochi T, Miyazaki A, Yoshida H.
Liver International, 45(9):e70270. 2025

Hic-5 antisense oligonucleotide inhibits advanced hepatic fibrosis and steatosis in vivo.
Noguchi M, Miyauchi A, Masaki Y, Sakaki M, Lei XF, Kobayashi-Tanabe M, Miyazaki A, Aoki T, Yoshida H, Seio K, Kim-Kaneyama JR*.
JHEP Reports, 6(11):101195. 2024

Hic-5 deficiency attenuates the activation of hepatic stellate cells and liver fibrosis through upregulation of Smad7 in mice.
Lei XF, Fu W, Kim-Kaneyama JR*, Omoto T, Miyazaki T, Li B, Miyazaki A.
Journal of Hepatology, 64(1):110-7. 2016

「細胞外マトリックス」を制御する司令塔的な分子の研究に邁進されている昭和医科大学の金山先生は、ご自身の研究の多くにキーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡・BZ-Xシリーズを活用。今や、他の顕微鏡を使うことがなくなるくらいご愛用いただけている。そこで金山先生に、ご自身の研究やご経歴と共に、BZ-Xシリーズに対するご評価について詳しく伺いました。

細胞外マトリックスとそれを制御する分子の研究がメインテーマ

2024年4月、昭和医科大学(当時:昭和大学)では、新たなLab「細胞外マトリックス研究所」が設立された。
「細胞外マトリックス」とは、ヒト組織を構成する細胞と細胞の間を埋める「足場」や「クッション」のような生体高分子。主な成分は約25%を占めるコラーゲンだが、その他にもエラスチン、フィブロネクチン、ラミニンなど多くのタンパク質から構成されている点が特徴だ。そしてその細胞外マトリックスを上手く制御できれば、さまざまな病気を制御できる可能性を秘めているのだと、同研究所の所長を務める金山 朱里先生は語る。
「細胞外マトリックスは、細胞と細胞を繋ぎ止める単なる”糊”のようなものではなく、細胞と環境の対話を翻訳する情報プラットフォームのようなものだと考えています。私たちは長年、複数の細胞外マトリックス分子を一気に制御できるアダプター分子の研究を行っています。いわば細胞外マトリックスの司令塔のような分子です。この分子のノックアウトマウスを作ったところ、様々な病気が起きにくくなることが分かりました。大腸がんを誘発させても発症せず、肝臓や肺の線維化も、変形性膝関節症も起きにくくなりました。そこで、この分子を標的にすれば、様々な病気を治せるのではないかと考えたのが、私の創薬研究の始まりです」。

以来、金山先生はこの分子をメインに据えた研究をスタート。肝臓や肺など様々な臓器、そして変形性膝関節症やがんなど多彩な疾患に役立つ薬の開発を目指されている。「実はアレルギーや感染、肥満、慢性的な炎症や損傷など、様々な要因が行き着く最終的な共通ステップとして現れてくのが線維化です。線維化が深く関わる病気は85種類以上にのぼり、先進国における全死亡の実に45%を占めると言われています。そんな多くの病気に共通して関わる線維を溶かす……いわば『硬くなった臓器を柔らかくする』というのが、現在のメインテーマです」。

次世代の人工核酸モダリティで「硬い臓器を柔らかく」

しかしこの分子を標的とした創薬には、これまで大きなハードルが立ちふさがっていた。なぜなら、いわゆるアダプター分子は、薬の標的とするには適さない分子だったからだ。しかし近年、次世代創薬技術が次々と生まれてきたことで、こうしたアダプター分子を狙える薬の実現性は大幅に高まってきている。
「アダプター分子は絶えず形を変える柔らかい構造をしているため、通常の創薬で頼りにする"安定した結合ポケット"を見つけること自体が原理的に難しい標的でした。そこでタンパク質になる前のRNAの段階で壊してしまおうというストラテジーで、人工核酸モダリティを使いました。」と金山先生。
具体的に、今開発を進めているのは肝臓の線維化を治療する薬。「脂肪肝はもちろん、ウイルス感染でも、自己免疫疾患でも、肝臓に線維は出てきてしまいます。その線維を、私たちの薬を用いることで溶かして、もう1回柔らかい肝臓にできないかと考えています」。

Labメンバーが真っ先にBZ-Xシリーズを導入して欲しいと要求

金山先生とBZ-Xシリーズとの関係は、2013年に遡る。当時の旧型機種は、まだ性能面で共焦点顕微鏡に及ばない部分があったことから、金山先生は複数の顕微鏡を使い分けて研究を行われていた。「当時、ある他社製の共焦点顕微鏡はレンズがクリア、かつ視野が広いので、分子の細胞内局在を観察する実験の時に好んで使っていました。逆にBZ-Xシリーズは、弱拡大の撮影が簡便にできたので、組織を低倍率で広く見たい時によく活用していました」。

しかしそんなBZ-Xシリーズに対するイメージは、年を追うごとに変わっていったという。「折に触れ、キーエンスの営業担当の方がデモ機を持ってLabに来てくださっていたのですが、年々、性能が良くなっていくのを感じていました。時にはデモ機をお借りしたこともありましたが、弱拡大での見やすさはそのまま、1細胞レベルでも標的の細胞内局在を綺麗に見られるようになってきたので、とても好印象でした」とのこと。

そして2025年、金山先生は最新型のBZ-X1000を導入された。「新しい機器の導入を考えていて、Labメンバーになにが欲しいか聞いてみたところ、真っ先に候補として挙げてきたのがBZ-Xシリーズでした。実際に導入してみたら、性能面はもちろんのこと、圧倒的に操作環境が良いようで、メンバーはこればかり使うようになりました。一応、他社製の落射蛍光顕微鏡もあって、そちらにもz軸をオートにするオプションを付けるなど、それなりに投資はしてあるのですが(笑)」と、金山先生。今では、BZ-Xシリーズ、および同時期に購入した自動RNA抽出機が、Lab内ではツートップで高い稼働率を誇っているとのことだ。

BZ-Xの導入で大量の動物実験の解析を素早く実現

改めて、金山先生にBZ-Xシリーズが研究にどのように役立っているのか伺ったところ、次のような言葉をいただいた。「私達は動物実験で、大量の組織サンプルを解析するような作業を数多く行っています。そうした場面では、BZ-Xシリーズを使うことで同一条件下でのサンプル撮影を迅速かつ再現性高く行えるので非常に重宝しています。解析スピードも速く、例えばLabメンバーが他社製の顕微鏡を使った場合は、データを確認できるまでに1週間ほど掛かることもありました。ところがBZ-Xシリーズなら、翌日には確認できるようになっています。以前、Labのプログレスセミナーの際には、前日に出たばかりのサンプルを、翌日のセミナーで綺麗な画像と定量データとしてまとめて見せてもらうことができました。日々の研究のスピードが大きく向上していると実感しています」。

また、ほかに感じている魅力としては「撮影したデータが、その場でオーバーレイや明るさ調整まで済んだ綺麗な画像として、すぐにモニターで見られる点が嬉しいです」ともご評価。オンラインにも対応しており、リモートで操作も可能という点にも言及され、「今年の8月には、渡英してUKチームと一緒に実験を行う予定なので、その時にもぜひ使っていきたいです」と期待感を露わにされていた。

迅速かつ柔軟なキーエンスの対応力によって論文のリバイスが無事終了

また金山先生は続けて、キーエンスのサポート体制に対する評価も語られた。「解析で分からないことがあったり、レンズを試させてほしいなど、なにか連絡した時は、いつもものすごいスピードで対応してくださいます。まだ導入できていないソフトやモジュールをデモでテストさせていただけたり、その返却予定日を相談に乗ってくださったり、対応の柔軟性も高くて、本当に助かっています」。

実際、論文のリバイス作業に、キーエンスのタイムラプスのデモ機貸出が役立ったとのこと。「あの時は結構長くお借りしてしまったうえ、結局、返却日までに実験を終わらせることが難しくなって、もう2~3日期間を延ばせないか相談させていただいたことを覚えています。そうしたら、いろいろ調整してくださった上、融通を聞かせて1週間延ばしてくださったのです。Labメンバーみんなで飛び上がって喜びました。お陰で余裕を持って実験を進め、無事にリバイスを終わらせることができました」。

臓器の線維化からがんまで……創薬標的に対する薬を作ることがゴール

金山先生が目指す先は、「創薬が難しい標的に対する薬を作る」こと。現在は肝臓に向けた治療薬の開発を進めている金山先生に、言える範囲で次に狙う臓器を伺ったところ、肺の線維化を狙っていきたいとのこと。加えて「将来的には、がんへの適用にも繋がればと思っています。なぜならがんも組織が硬くなっている状態なので」と、先を見据えた目標まで語っていただけた。

金山先生の研究対象は幅広い。肝臓、肺、血管、関節など……先生の標的分子によって影響を受ける臓器は多彩で、しかもそれぞれに高い知見が求められる。しかも「今日お話したものだけでなく、まだ表に出してない疾患との関わりも見出されています」と金山先生が仰るように、今後もその研究の幅は広がっていくことが予想されている。
そこで金山先生に、幅広い知見を得るご苦労について伺ってみた。「もちろん苦労する面もあるのですが、今は様々な疾患に関するシングルセル解析データを中心に、公共データベースから膨大な情報が簡単に入手できるようになりました。そうしたデータを取得してシングルセル解析を行ったり、論文へ活用したりする手法が着実に一般化し、扱いやすい時代になってきています。また、過去の論文を検索する際にも、以前と比べて格段に情報を収集しやすくなったと感じています。そうした意味において、私の研究テーマは、まさにこの時代だからこそ実現できているのかもしれません。様々な臓器の疾患解析にも着手しやすくなっており、臓器や疾患領域の垣根を越えやすくなっていると感じています。」とのこと。時代と共に、研究手法や技術が進むことで、金山先生の求めるゴールまでの道のりは、より短縮化、高精度化していくことは間違いなさそうだ。