BZ-Xシリーズは、ソフトウェアの多くがオートメーション化されている点が魅力。誰がやっても再現性があるので、研究の精度が高まります

- 国立大学法人 筑波大学
大学執行役員 医学医療系系長
オープンファシリティー推進機構 副機構長
トランスボーダー医学研究センター
生命科学動物資源センター 解剖学・発生学研究室
教授 博士(医学)
高橋 智 様 -
1987年に東北大学の医学部を卒業、1991年に同大学院で博士号を取得された高橋 智先生は、学位取得後すぐに、スイスのジュネーブ大学に留学。そこで遺伝子改変マウスの作製技術を身に付けられた先生は、日本に戻った後も、マウス作製の研究を続けられます。
1994年に東北大学に戻ってからは、同大学の附属病院 病理部医員、医化学第二講座の助手を経た後、1996年には筑波大学に籍を移し、2000年には基礎医学系(現:医学医療系)の教授へと昇進。以来、2009年には生命科学動物資源センター センター長、2017年にはトランスボーダー医学研究センター センター長、そして2024年には医学医療系系長と、責任ある立場を歴任しながら、ご自身の研究、6つの研究グループの取りまとめ、マウスの作製・供給、大学同士の連携など、さまざまな業務に取り組まれています。
主な論文
Inhibition of MAFB and PI3K/AKT Signaling for Hereditary FSGS with Multicentric Carpotarsal Osteolysis.
Usui Toshiaki, Ishibashi Shun, Tanaka Ryojiro, Morito Naoki, Hamada Michito, Gogoleva Natalia, Ning Baoshuo, Kumaga Eugenia, Oki Mayuko, Tsunakawa Yuki, …
J Am Soc Nephrol 2026年3月
0.33G Mitigates Muscle Atrophy while 0.67G Preserves Muscle Function and Myofiber Type Composition in Mice during Spaceflight.
Tsuji Ryosuke, Fujita Ryo, Hayashi Takuto, Sadaki Shunya, Matsumoto Tatsuya, Inoue Yuri, Murakami Yuka, Hamada Michito, Muratani Masafumi, Kobayashi Hiroe, …
Sci Adv 2026年3月
Large Maf Transcription Factor Family Is a Major Regulator of Fast Type IIb Myofiber Determination.
Sadaki Shunya, Fujita Ryo, Hayashi Takuto, Nakamura Ayako, Okamura Yui, Fuseya Sayaka, Hamada Michito, Warabi Eiji, Kuno Akihiro, Ishii Akiko, …
Cell Rep. 2023年3月
筑波大学の医学医療系系長を務め、遺伝子改変マウスの作製技術でオーソリティとしても知られる高橋先生は、ご自身のLabで進めている6つのグループの研究のほぼすべてに、キーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡・BZ-Xシリーズを活用。その手軽さ、性能、再現性を高く評価されています。そこで高橋先生に、BZ-Xシリーズに対するご評価や現在取り組んでいる研究内容、ご経歴などについて詳しく伺いました。
- ご自身のLabの他、医学医療系系長、共通機器管理部門などを兼任
- 研究者を目指したきっかけ……そしてマウス作成に至った経緯
- 筑波大学は国内最大規模の遺伝子改変マウスの作製拠点に
- オートメーション化されているからこそ再現性高い撮影が可能に
- 柔軟かつスピーディなキーエンスのサポート体制を評価
- 現在は宇宙実験に注力! 筋肉のデザインが自由にできる可能性も
ご自身のLabの他、医学医療系系長、共通機器管理部門などを兼任

筑波大学の高橋 智先生は、医学医療系系長のほか、オープンファシリティー推進機構 副機構長、解剖学・発生学研究室 教授など、複数の肩書を有し日々さまざまな業務に勤しまれている。そこでまずは、それぞれの肩書がどのような内容なのかを伺った。
「医学医療系系長は、他の大学で言うところの医学部長ですね。医学部全体の研究の取りまとめや運営を行っています。オープンファシリティー推進機構というのは、大学にある共通機器を管理する部門です。機構長は副学長なので、実質的に私が管理している形になっています。また解剖学・発生学研究室 教授としては、Lab内にある6つのグループの取りまとめと共に、一部はまだ私が中心となって研究活動も進めています」。
高橋先生が取りまとめる解剖学・発生学研究室の各グループの研究内容は以下の通り。
- MafA、c-Mafグループ
- MAFBグループ(茨城県立医療大学との共同研究)
- 糖鎖グループ
- 経胎盤移植グループ(茨城県立医療大学との共同研究)
- きぼうグループ(再生医学(TMRC)研究室、東レとの共同研究)
- p62・酸化ストレスグループ(分子環境生理学研究室との共同研究)
- Notchグループ
この中で、「MafA、c-Mafグループ」と「きぼうグループ」については、現在も高橋先生が主軸となって活動を続けている。
ちなみに高橋先生は、2026年現在で65歳。今年度で退官を控えてはいるものの、まだ「CREST(戦略的創造研究推進事業)」や「学術変革領域研究」、そして東レとの「特別共同研究事業」の予算が3年分残っているということで、少なくともそれらが終わるまでは筑波大学でご自身の研究に邁進される予定とのことだ。
さらに高橋先生は、筑波大学、群馬大学、千葉大学の3大学が連携しながら、多忙な医師の研究をサポートすることを目的に生まれた「関東三大学医学研究次世代育成プロジェクト」のプロジェクト代表も担当。「これは、選ばれたPI(研究責任者)がより研究に専念できる環境を作っていこうというプロジェクトです。例えば、千葉大学は免疫やAI研究が強いですし、群馬大学は臨床データベースが強く、また重粒子線のセンターの設備がある。筑波大学は睡眠研究、血液研究が強い、そうした各大学の強みを活かし合うことで、相乗効果を出せればと考えています。そのひとつの試みとして、3つの大学のどこかに属していれば、どの大学の共通機器も「学内料金」で使えるようにしました」とのこと。ご自身や、ご自身が抱えるグループだけでなく、医学研究全体の底上げに関しても高橋先生は積極的に取り組まれている。
研究者を目指したきっかけ……そしてマウス作成に至った経緯
高橋先生が研究者になることを夢見始めたのは、小学校時代。「お小遣いで、顕微鏡を買ったんです。玩具みたいなやつでしたけど、使ってみると水の中で小さな生き物がうようよ動いている。それ以来、顕微鏡を覗くのが好きになって、いつしか生物の研究をしてみたいと思うようになりました」。
その想いは中学、高校でも変わることなく、大学受験では東北大学を受験。兄からの「生物系の研究なら医学部に行った方が良い」という言葉を受けて、医学部に進学し、医師の勉強をしながら、病理学教室に通い、学会への発表も行っていたという。「医師の国家試験は受かりましたが、臨床はやらずに研究職の道に進みました。昔から、人が病気になる原因に興味があって、大学の頃から自己免疫疾患の研究をやっていました」。
1991年、スイスのジュネーブ大学に留学した高橋先生は、そこでモデルマウスを使った研究にも携わり始める。「留学中、遺伝子改変マウスの作製を日本で始めた先駆けとなった山村研一先生の教室から隣の研究室に来ていた、現在は熊本大学にいらっしゃる荒木喜美先生と出会ったんです。荒木先生は、卵に直接遺伝子を打ち込むことで、遺伝子を導入したマウスを作る技術を持っていらっしゃる方で、私はその技術に以前から大変興味がありました。そこで荒木先生にお願いして、その技術「マイクロインジェクション」を教えていただいたのです。やってみると、これがまた面白くて。遺伝子を入れてあげると、一気に病気がばっと出たりして、すごく分かりやすい。それで、30年経った今も、やり続けることになりました」。
そして遺伝子改変マウスの開発を覚えたことで、1996年、高橋先生は筑波大学に誘われることとなる。「山本雅之先生という大御所の先生が筑波大学の教授になられる際に、「マウスを作ってるなら一緒に来ない?」とお声掛けをいただいたのです。そこから山本雅之先生のもとで、一緒にマウスを作る研究も行うことになりました」。
ただ、山本雅之先生と同じことをやっていても仕方がないと、高橋先生は新たなアプローチでのマウス開発を行うことに。「山本雅之先生は、Nrf2(ナーフツー)という転写因子を欠損させたノックアウトマウスを主に研究されていました。そこで私は、山本雅之先生がまだ手をつけていないLarge Muff(ラージマフ)を欠損、過剰発現させたマウスを作製していくことにしたのです。これならオリジナリティがありますし、しばらくは食べて行けるだろうと思いました」とのこと。
そして、この選択が功を奏する。高橋先生がマウスを作り始めた当初、Large Muffはあまり人の病気と関係のない遺伝子だと思われていた。しかし研究が進むにつれ、実はいろんな病気と密接な関係があると立証されていった。「例えば、MafA(マフエ―)は、膵臓のベータ細胞で働いていて、インシュリンを出すのにすごく重要だということが分かりましたし、MafB(マフビー)が動脈硬化の病変形成に関与することが判明しました。その他、白内障になったり、骨の形成を阻害したり、精神発達が悪くなったり、筋肉に変化をもたらしたり、いろんな病気に関係してくることが、私たちがLarge Mafの研究を始めたことで分かってきたのです」。
筑波大学は国内最大規模の遺伝子改変マウスの作製拠点に
Large Mafの重要性が高まるにつれ、高橋先生が作るマウスの需要も上昇。今では、ご自身の研究に活用するだけでなく、多くの研究者、Labに向けて、遺伝子改変マウスの受託作製も行っているとのこと。「売っていると言っても、実費に近い料金ですけどね。ちなみに今のマウス作製の責任者は水野聖哉先生になるんですけど、いろんな研究にマウスを提供していることで、私と水野先生は多くの論文に名前を入れていただけています。お金を取っているので、別に名前は載せなくて大丈夫ですよと言っているのですが、大抵の場合は「先生方がいなかったらできなかったんで」と載せてくれるんですよね。たぶん、私だけでも450本くらいの論文に載っているんじゃないでしょうか」と、多くの研究者にとって、高橋先生たちが作るマウスは、研究の大きな助けになっているようだ。
また数多くのバリエーション豊かなマウスを作ってきたことで、筑波大学には遺伝子改変マウスの開発ノウハウが溜っていると、高橋先生は語る。「筑波大学の遺伝子改変マウスの作成規模は日本で一番大きく、およそ国内の3分の1を賄っていると思います。これまで2500系統以上のマウスを作ってきて、今は失敗することもほとんどなくなりました。ちなみに近年では、ゲノム編集技術でマウス受精卵で直接遺伝子を改変できるようになり、作製までの時間が大幅に短縮したんですよ。かつてはES細胞を培養するところから始めるため、2年近く掛かっていたたものが、場合によっては1ヶ月以内で作れるようになりました」。遺伝子改変マウスの開発技術は、ここ20年で大きく向上したようだ。
オートメーション化されているからこそ再現性高い撮影が可能に

現在、高橋先生のLabにはBZ-X800とBZ-9000。また先生が管理する共通機器室にはBZ-X800とBZ-X700がそれぞれ導入され、多くの研究者が活用している。「Labに複数台あるんですけど、それでも結構混んでいるんですよ」と高橋先生。
高橋先生のLabには、もともと他社製の高機能顕微鏡がメインで設置されていた。しかし「高機能顕微鏡は使いこなせるようになるまで大変ですし、BZ-Xシリーズのように自動計測もできません。もちろん高機能顕微鏡のほうが綺麗な写真は撮れるのですが、論文には結局圧縮して載せるので、BZ-Xシリーズでも必要十分な写真は撮影できます。そのため学生さんたちは、今やほとんどBZ-Xシリーズしか使わないようになりました」とのことで、その性能、利便性からLabでの活用頻度はかなり高くなっているようだ。
その利便性について、さらに深く尋ねたところ、次のような言葉をいただけた。
「BZ-Xシリーズは、パソコン上で全部完結するところが良いですよね。顕微鏡というイメージがない。動作が早く、直感的に使えることもあって、気軽にモニター上で画像を作っているような感覚になります。またいろんなソフトがあって、オートメーション化されているので、最適なソフトを使えば細かな設定をする必要なく、十分に綺麗な写真が撮れるところも魅力です。筋肉の線維とか、以前は1本1本数えていたのですが、そういう計測も自動でやってくれるので、大きな時間短縮にも繋がっています」。
さらに高橋先生は続けて、研究における再現性を高めてくれる存在ということも語られた。
「オートメーション化されたBZ-Xシリーズのソフトを使えば、誰がやっても同じ写真が撮れます。つまり「研究者によるブレ」や「バイアスが掛かった数値」がない。その結果、研究の精度も高まると考えています。再現性を担保する上でも、BZ-Xシリーズで撮影するというのは、とても良いことだと考えています」。
柔軟かつスピーディなキーエンスのサポート体制を評価
また高橋先生は、キーエンスのサポート体制についても高い評価をくださっている。「調子が悪いですと連絡すると、すぐに来てくれます。時には、朝電話したらその日の午前中に来てくれることもありました。しかもその場で直らなければ、無料で代替機を置いていってくれるのは、とても助かりました。また、購入できていないソフトがあっても、研究に使いたいと相談すると、デモ的に撮影/解析のサポートをして頂けるのも助かっています。そのソフトが実際に役立つことも確認できますし、予算が取れたら購入するという形にできるので、研究を停滞させずに進められます」。
また共通機器室の管理者の立場からも、キーエンスの対応に言及いただけた。「筑波大学では年2回、オープンファシリティーウィークというものを開催しています。これは学内にある500台を超える共同利用機器を有効活用するために、職員やメーカー様による見学会、相談会、セミナーなどを実施するというものです。これにキーエンスさんは毎回、快くご参加いただいているんですよ。さらに希望すれば、随時講習などを行ってもくださります。こういうお願いに柔軟に対応してもらえるのは、共通機器の管理側としてもすごくありがたいですね」。
現在は宇宙実験に注力! 筋肉のデザインが自由にできる可能性も
高橋先生に、力を入れている研究について伺ったところ「今は宇宙実験が一番面白いですね」とのお言葉をいただいた。「実は私、日本で一番最初にマウスの宇宙実験を国際宇宙ステーションで行っているんですよ。JAXAやNASAとの共同低重力ミッションで、コードネームは「MHU」というんですけど、そのミッションで計4回の実験を行い、低重力下、無重力化での筋肉や骨の萎縮、また筋線維の速筋化について調査しました。その結果、骨格筋の速筋線維を制御している転写因子っていうのを世界で初めて見つけることにも成功しました。しかもその転写因子が、たまたま私が専門としているLarge Mafだったんですよ。そしてこの成果を上手く活用すれば、自由に筋肉をデザインできる可能性が出てきました。介護や医療に大きく貢献できるのではないかと期待しています」。
またこの宇宙実験は、今後もう1回実施できる予定だという。「次の宇宙実験の予定は2032年くらいなので、私が元気でいられるか怪しいですが(笑)。ただ実験の場は、これまで使っていた国際宇宙ステーションがそろそろ寿命ということで、民間の宇宙ステーションになるかもしれません」。
その実現のために、キーエンスにできることはないか尋ねると「キーエンスはもう充分やってくれています。この宇宙実験も含め、ほとんどすべての研究にBZ-Xシリーズは活躍してくれていますから」と力強いお言葉をいただけました。


