BZ-Xシリーズの導入で研究スピードが向上! Labメンバーのモチベーションの向上にも繋がっています

- 公益財団法人 かずさDNA研究所
オミックス医科学研究室
室長
医学博士
遠藤 裕介 様 -
2005年、慶應義塾大学の理工学部に在籍中、「免疫」研究に興味を持った遠藤 裕介先生は、大学卒業後、千葉大学大学院の医学部へと進学。中山俊憲先生と山下政克先生の指導のもと、免疫発生学教室で修士課程、博士課程を経た後に、研究者として、免疫学や代謝学の分野で数々の功績を残しながら、2018年まで過ごされました。同年、かずさDNA研究所で、オミックス医科学研究室の室長として独立を果たした先生は、2023年に兼任という形でトランスレーショナル臨床オミックス研究チームのチーム長にも就任。現在は約20名のLabメンバーを率い、千葉大学を始め、岡山大学や慶応義塾大学などの各分野の専門家の先生たちとも共同研究しながら、脂質と免疫にまつわる研究を進められています。
主な論文
The RORγt ligand-binding domain controls the pathogenicity of IL-17A+ T cells differently in autoimmune diseases of the skin and CNS.
Keisuke Miyako, Toshio Kanno, Takeru Endo, Souta Yoshida, Yukie Iwao, Keiko Nakano, Arisa Ito, Satoru Yokoyama, Hikari K Asou, Kazuko Yamada …
Cell reports 44(12) 116700-116700 2025年12月15日
1-Oleoyl-lysophosphatidylethanolamine stimulates RORgt activity in Th17 cells.
Endo Y*., Kanno T., Nakajima T., Ikeda K., Taketomi Y., Yokoyama S., Sasamoto S., Asou K. H., Miyako K., Hasegawa Y., Kawashima Y., Ohara O., Murakami M., and Nakayama T.
Sci. Immunol. 8 (86):eadd4346. 2023年8月4日
ACC1-expressing pathogenic T helper 2 cell populations facilitate lung and skin inflammation in mice.
Takahiro Nakajima, Toshio Kanno, Satoru Yokoyama, Shigemi Sasamoto, Hikari K Asou, Damon J Tumes, Osamu Ohara, Toshinori Nakayama, Yusuke Endo
The Journal of experimental medicine 218(12) 2021年12月6日
「オミックス解析」を軸に、さまざまな先生や組織と共同研究しながら脂質や免疫の研究に励まれている遠藤先生は、ご自身の研究にキーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡・BZ-Xシリーズを活用。その使いやすさと共に、Labメンバーのモチベーション向上にも繋がっている点を高く評価されていました。そこで遠藤先生に、研究の内容やご経歴と共に、BZ-Xシリーズがどう役立っているかについて詳しく伺いました。
- 千葉県が支援する世界初のDNA専門研究施設
- 「脂質」と「免疫」およびその関連性をオミックス解析で解き明かす
- 約15の研究テーマをさまざまな先生、組織と共同で進めていく
- 「T細胞とエピジェネティクス」の研究に惹かれて千葉大学へ
- BZ-Xシリーズの導入は研究を進めるため、そしてメンバーの鼓舞のため
- 論文を出し負けた経験を糧に、研究スピードの向上にも注力
- 直近の目標達成と、そのための加速を実現するために
千葉県が支援する世界初のDNA専門研究施設

1991年、千葉県が開発研究を支援する形で産声を上げた、世界発となるDNA専門施設「公益財団法人 かずさDNA研究所」。元々は植物ゲノムの専門家たちが中心となって設立されたという経緯もあって、植物に関する研究者が数多く集っている点が特徴で、2000年には世界ではじめて植物(シロイヌナズナ)の全ゲノム構造解析に成功するなど、数多く世界的研究成果を残している。
近年ではその高度な解析技術を活かし、植物だけでなく、ヒト、微生物などに応用範囲を拡大。さらにはDNAという枠も超え、代謝物、タンパク質、RNAなども含めた包括的解析……いわゆるオミックス解析の領域でもさまざまな成果を出してきた。
遠藤 裕介先生は、そんなオミックス解析の専門家。「私はもともと千葉大学の免疫発生学出身。バックグラウンドは免疫です。その免疫の基礎研究をさらに進めていく、これがオミックス医科学研究室のテーマです。具体的には、脂質代謝や自己免疫疾患、アレルギーなどのメカニズムの解明です。最終的にその研究を通し、免疫に関わる数々の疾患予防や治療、再発防止にまで繋げられればと考えています」とのこと。
なお遠藤先生は、オミックス医科学研究室に加え、トランスレーショナル臨床オミックス研究チームのチーム長も兼任。こちらは「その名の通り、より臨床に近い形で、千葉大学附属病院の小児科と一緒に、長期的なプランで小児アレルギーコホートの研究を進めています」と遠藤先生が仰るように、実際の医療現場により繋がっていく研究にコミットするチームとなっている。
「脂質」と「免疫」およびその関連性をオミックス解析で解き明かす
遠藤先生が専門とされる「オミックス解析」は、遺伝子、RNA、タンパク質、代謝物などの生体分子を「まとめて」解析する手法。解析対象は数多く、さまざまな要因が入り乱れるため、疾患のメカニズムの解析に至る道は、長く困難と考えられている。しかしながら遠藤先生曰く、「幸いなことに、研究所には高速な計算機があるので、昔に比べて解析のスピードはかなり上がってきているんです」とのこと。BZ-Xシリーズなどの顕微鏡を使ったマウスやヒトの細胞の観察・解析に加え、高速計算機を使ったドライな解析も進めることで、先生の研究は素早く、かつ確実に進んでいるようだ。
そんな遠藤先生が今、特に力を入れて取り組んでいる研究は、「脂質」と「免疫」、およびその関連性。「例をあげると肥満が分かりやすいかもしれません。肥満の方は、動脈硬化や2型糖尿病といった代謝性の疾患の罹患率が上がると言われていますが、実はそれだけではなく、意外と多発性硬化症や乾癬(かんせん)といった、免疫に関わる疾患の罹患率も大幅に上昇することが分かっているのです。ではそれって、なぜなんだろう? ……という思いから、脂質と免疫にフォーカスを当てた研究を進めています」。
約15の研究テーマをさまざまな先生、組織と共同で進めていく
またオミックス解析は、解析対象が多岐に亘るがゆえに、専門性の高い先生や組織との共同研究も重要となってくるという。「現在約15の研究テーマが同時進行していて、そのほぼすべてのテーマを共同研究で進めています。先ほどの千葉大学との小児アレルギーコホートの研究を始め、岡山大学や慶応義塾大学とはAMED-CREST(革新的先端研究開発支援事業)を一緒に推進したり、山口大学や製薬会社と治療薬、再発防止薬の研究も推進しています」。
共同研究の大きな利点は、お互いの知見や技術を共有しあえること。「例えば脂質研究の先生は、インビボのフェノタイプを出すことの難しさをご存知ですが、私たちにとって、その観察はさほど難しくはありません。以前、ある酵素をノックアウトマウスの病態改善データを報告した際、脂質研究の先生から高い評価をいただき、共同研究をより深めるきっかけにもなりました。また、免疫研究の先生に「こんな代謝物が見つかった」と報告すると驚かれたこともありました」。遠藤先生はより深い専門知識を得られ、専門分野の先生は専門外の情報を取得できる……「オミックス解析」を軸に、そんな研究の好循環が醸成されているようだ。
「T細胞とエピジェネティクス」の研究に惹かれて千葉大学へ
元々、遠藤先生は慶應義塾大学の理工学部出身。3年生の時に進路のことを考えて、図書館でさまざまな書籍を読んでいた時、「免疫」の機能に興味を覚えたことが研究者となる大きな転機だったとのこと。「ある書籍に当時、免疫分野で流行っていた「T細胞とエピジェネティクス」に関する記載がありました。そこで、免疫細胞自身が身体の中の抗原やウイルスを覚えて、次に遭遇した時に防御をするという仕組みがあることを知ったのです。この「細胞が記憶する」という概念が、とても私の中で響いて、ぜひ研究をやってみたいと思うようになりました」。
かくして遠藤先生は、「T細胞とエピジェネティクス」研究を先導していた中山俊憲先生と山下政克先生がいらっしゃる、千葉大学医学研究院 医学部の免疫発生学教室へと進む。ただ理工学部から医学部への転身ということで、修士課程に進んだ当初は大変だったとのこと。「知識も技術もいろいろ足りませんでした。特に実験が苦手でしたね。遺伝子改変マウスの検査のために、ゲルに細胞をアプライしていく電気泳動という実験をよくやっていたのですが、よくゲルを破ったり、伸ばしてしまったりしていました。でもやりたかった研究だったので、失敗の日々もまた楽しかったです」。
修士課程、博士課程を経た後も、遠藤先生は免疫発生学教室で経験を重ね、特任研究員、特任助教、特任講師とその立場を進めていく。独立後も落ち着いてLab運営できるようになるまで、約3年ほどかかったとのこと。その間に、遠藤先生は千葉大学のオミクス治療学の特任准教授、北里大学の分子科学専攻の特任教授にも就任し、とにかく多忙な毎日を過ごされていたようだ。
ちなみに現在のメンバーは、約20名。多彩な先生、組織と共に、いくつもの研究テーマを推進できるLabへと成長を遂げた。
BZ-Xシリーズの導入は研究を進めるため、そしてメンバーの鼓舞のため

そんな遠藤先生の研究者人生のそばには、常にBZ-Xシリーズが便利なツールとして存在していた。「BZ-Xシリーズは、千葉大学にいた頃からずっと便利に使っていました。切片を見るのも、細胞をそのまま見るのも楽ですし、とにかく使いやすいという印象でしたね。かずさDNA研究所にやって来た時も、小原 收先生(当時:部長)が導入されたBZ-X700を使って細胞の観察を行っていました」と、遠藤先生は語る。
現在でも性能的にはまだまだ十分、現役で使えるBZ-X700。だが遠藤先生は、2025年にLab専用機器として最新型のBZ-X1000を導入された。その理由は、Labメンバーのモチベーションをより向上させたいという思惑もあったそうだ。
「私は、研究がしっかりと推進できるなら、投資する事は惜しくないという考えです。もちろん、本当に必要かどうかの判断や、ちゃんと活用できるか、その時の経済状況などがあってのことですが。それらを踏まえて、あらゆる性能が向上しているBZ-X1000の導入に迷いはありませんでした」。
その言葉からも分かる通り、遠藤先生はLabメンバーのモチベーション維持に大きな比重を置かれている。「結局、人だと思っています。やりたい研究内容、かつ楽しく取り組める研究環境が整っているからこそ、研究者は日々頑張れるのだと思います。ただし、楽しいだけでは世界に対抗していくことは難しい。一流の雑誌に載るということは、そんなに簡単なことではありません。やはり本気でやらないと、本当の意味での「楽しさ」には繋がらないと思いますから」。
論文を出し負けた経験を糧に、研究スピードの向上にも注力
導入した最新型・BZ-X1000の、Lab内での評判は上々。実際に観察作業を行っている大学院生の中野恵子さんからも「解像度が高い」、「使いやすい」というお言葉をいただけた。遠藤先生に、その具体的な評価ポイントについて尋ねたところ「画質が大幅に良くなったのはもちろん、自動化の精度やスピードが向上した点が良いですね。例えば複数のスライドを観察する際も、目的位置への指定や移動、フォーカスがスムーズでストレスがありません。撮影スピードも早いので、Labメンバーにも「BZ-X1000があるから、何日までには観られるよね」と催促できるようになりました(笑)」とのこと。
遠藤先生はご自身の研究について、精度や深さはもちろんスピードも重要だと語る。その理由は、一度、論文発表が遅れた経験があるそうだ。「独立する前の話ですが、半年ほど先に同じ研究の論文を発表されてしまった。しかも、先に発表できた可能性もあった。それだけに、当時は中山先生と一緒に反省しました」と遠藤先生。
「遅れると、掲載雑誌のジャーナルランクは2つほど下がります。『Nature』に掲載できていたら、また違った結果になっていたのではと、とても残念に思っています。それ以来、「絶対に同じことをやっている研究者は他にいる」という考えを常に持ち、AIなども積極的に活用するなど、内容と共にスピードを上げるための工夫も行うになりました」。
直近の目標達成と、そのための加速を実現するために
直近で遠藤先生が目指している先を伺ったところ、次のような言葉をいただけた。「私たちは、脂質と免疫の研究をライフワークにしています。そして治療法を探すだけでなく、予防、再発防止まで達成したいと考えています。しかし再発防止を標的とした治療学は、恐らくまだ存在しません。共同研究している製薬会社の方に聞くと、評価の判別が難しいので実現は大変だということですが、できればそういう分野を作っていけると良いですね。ちなみに、再発を防げる創発薬の開発は既に進んでいます。現時点で、再発の原因となるパソジェニック・プレカーサーを同定することができていて、これからインビボで、人にも同じような細胞がいるか、細胞を潰す方法があるかを検証しているところです」。
最後に、その実現のためにキーエンスにできることはないか伺ったところ「研究の精度とスピードを上げていくために、これからもどんどん良い製品を作って欲しいですね。例えば、空間解析に繋げられるような商品があると嬉しいです」との答えが返ってきた。。研究を一層加速させ、より良い成果を発表するために、遠藤先生はこれからも、必要な設備に惜しみなく投資しながら、Labメンバーのモチベーション向上に尽力していくことは間違いないようだ。


