組織全体の撮影ができて、画質は良好。解析ソフトを使えば、撮影したその場で定量化できる機能性の高さも魅力です

- 群馬大学 大学院医学系研究科 腫瘍放射線学講座
群馬大学医学部附属病院 放射線治療科
講師
佐藤 浩央 様 -
2008年、群馬大学にて医師免許を取得された佐藤 浩央先生は、その後、伊勢崎市民病院で初期研修を終えると、2010年から群馬県立がんセンターで、2012年からは関東脳神経外科病院で医師として働きながら、休日や夜間を使って群馬大学大学院に通い始めます。
博士号を取得した2014年以降は、群馬大学大学院の放射線科、群馬大学 重粒子線医学研究センターと籍を移しながら、臨床医と研究者というふたつの立場で「放射線治療と免疫反応」の解明に邁進されています。
2021年からの約3年間は、ワイル・コーネル医科大学に留学して、サンドラ・デマリア先生に師事。そして2024年に帰国した後は、2026年に群馬大学 腫瘍放射線学教室 講師に着任。医師、研究者、さらには次世代のPI、後進の指導者として、忙しい日々を送られています。
主な論文
Characterization of the signal transduction cascade for inflammatory gene expression in fibroblasts with ATM-ATR deficiencies after Ionizing radiation
Shunji Haruna, Ken Okuda, Akiko Shibata, Mayu Isono, Kohei Tateno, Hiro Sato, Takahiro Oike, Yuki Uchihara, Yu Kato, Atsushi Shibata
Radiotherapy and Oncology 194 110198-110198 2024年5月
Carbon Ion Radiation Therapy for Nonmetastatic Castration-Resistant Prostate Cancer: A Retrospective Analysis
Yuhei Miyasaka, Hidemasa Kawamura, Hiro Sato, Nobuteru Kubo, Hiroyuki Katoh, Hitoshi Ishikawa, Hiroshi Matsui, Yoshiyuki Miyazawa, Kazuto Ito, Kazuhiro Suzuki …
Advances in Radiation Oncology 9(4) 101432-101432 2024年4月
Calreticulin Upregulation in Cervical Cancer Tissues From Patients After 10 Gy Radiation Therapy
Kohei Okada, Hiro Sato, Takuya Kumazawa, Yasumasa Mori, Tiara Bunga Mayang Permata, Yuki Uchihara, Shin-Ei Noda, Keiji Suzuki, Hayato Ikota, Hideaki Yokoo, Soehartati Gondhowiardjo, Takashi Nakano, Tatsuya Ohno, Atsushi Shibata
Advances in radiation oncology 2022 Dec 27;8(3):101159. doi: 10.1016/j.adro.2022.101159. eCollection 2023年5月-6月
重粒子線治療と免疫療法を併用することで、より効果的ながんの克服を目指されている佐藤先生は、日々の研究に用いる培養細胞やマウスの切片などの撮影・解析にBZ-Xシリーズを役立てられています。そこで佐藤先生に、BZ-Xシリーズに対する評価や、先生ご自身のご経歴、現在力を入れて取り組んでいる研究などについて詳しく伺いました。
- 世界でも稀な重粒子線治療装置を備えた、がん治療のフラッグシップ施設
- 放射線はがんを殺すだけではなく、PD-L1を誘導するというメカニズムを発見
- 次世代PIの育成やサポートを目的に生まれた「ToRA-SEED」
- 臨床医と大学院生、臨床医と研究者……常に二足の草鞋を履く多忙な日々
- 組織全体を撮影でき、その場で定量化できるBZ-Xシリーズの機能性を高く評価
- 根治が難しいとされるステージ4のがんを治すことが目指すゴール
世界でも稀な重粒子線治療装置を備えた、がん治療のフラッグシップ施設

佐藤 浩央先生が所属する、群馬大学 大学院医学系研究科 臨床医学領域の「腫瘍放射線学講座」は、1959年に開講された、日本の放射線治療・がん治療をリードしてきた伝統ある医局・研究教室。教室主催者である大野 達也先生を始め、さまざまながん領域の専門家が集い、質の高い集学的治療を実践している。
講座について佐藤先生は、当時の教授・中野 隆史先生の方針として、「放射線治療」を軸に臨床研究と基礎研究の両方に取り組む教室であったと振り返る。現在もその方針は継続しており、それは「日本の放射線治療をリードし、世界へ!」という現在の教室のスローガンにも表れている。
また群馬大学は、日本に7箇所、世界でも14箇所しか存在しない「重粒子線治療」の施設を備えている点、さらにその重粒子線治療装置が、治療のみならず実験にも活用できる点も特徴で、世界中から研究者や視察の依頼が後を絶たないことでも知られている。
ちなみに「重粒子線」とは、数ある放射線のひとつ。佐藤先生にどのようなものかを伺うと「日本でがん治療に使われる放射線は、X線が最も広く使われていて、その他に、電子線や陽子線、重粒子線などが存在しています。重粒子線の特徴は大きくふたつあって、ひとつが周りの組織への影響を最小限にしながら、がんには十分なダメージを与える「物理学的特徴」と、もうひとつがDNAダメージをより強度かつ複雑に起こす「生物学的特徴」です。そのため正常な組織を守りながら、短期間でがんの根治を目指せる治療法として、注目を集めています」とのご回答をいただけた。
放射線はがんを殺すだけではなく、PD-L1を誘導するというメカニズムを発見
佐藤先生は、「腫瘍放射線学講座」で講師を務める研究者 兼 臨床医。2008年に医師免許を取得、2010年に初期研修を終えて以来、二足の草鞋状態を続けておられる。そして今も、業務時間の半分以上は「放射線治療科」の医師としての業務に費やしながら、同時に研究にも打ち込まれているとのこと。
研究のテーマは「放射線と免疫を組み合わせた治療の最適化」。放射線治療によって誘導される免疫反応を、「免疫チェックポイント阻害剤」を代表とする免疫治療を用いることで最大化し、より大きな効果を狙うという治療法を模索されている。
その中でも際立つのが、2017年に佐藤先生ご自身が、柴田 淳史先生(現・慶應義塾大学 教授)と共に、学術誌『Nature Communications』に発表した論文。ここで佐藤先生たちは、「もし放射線治療でPD-L1が上がるなら、その動きを阻害することで、非常に治療が効きやすい状態になるのではないか」と仮説を立て、研究をおこなった。そして放射線をがん細胞に照射すると、DNA損傷シグナルを契機にがん細胞の表面にPD-L1が誘導される……つまり、ある意味でがんが生き残ろうとするメカニズムがあることを証明し、世界に大きな衝撃を与えた。
「私が放射線治療科に入った当時も、放射線はDNAを傷つけることでがん細胞を殺すと教わってきました。しかし、がんの制御には実は免疫反応も重要なウエイトを占めていることが分かってきたのです。ただ今の放射線治療は、あくまで従来の考えがベースとなり、免疫反応を最適化するという視点で考えたとき、それがベストかはまだ十分にわかっていないのです」と佐藤先生は語る。
「そこで現在は、放射線の線量や、重粒子線治療を含めた放射線治療の種類といったさまざまな条件の中から、免疫賦活の最適化を目指した放射線治療の確立を目指して、主にDNAダメージをきっかけとした免疫反応がどれだけ誘導されるのかを調査しています。それを定量化するために、BZ-Xシリーズを導入しました」。
次世代PIの育成やサポートを目的に生まれた「ToRA-SEED」
佐藤先生が、BZ-Xシリーズを導入できたのは「ToRA-SEED(トラシード)」に選定されたことがきっかけ。
「ToRA-SEED」とは、千葉大学、筑波大学、群馬大学の3大学がアライアンスを組み、メンター、ファンド、システムなど多角的な支援をおこなうことで、次の時代を牽引する新たなPIを作ることを目的とした組織。2025年……そんな「ToRA-SEED」によって、佐藤先生を含む24名の「次世代PI」が、第1期の選抜メンバーとして選ばれた。
「ToRA-SEED」による支援は当然、金銭面だけではない。佐藤先生によると「ドクターズアシスタントを付けて臨床に割く時間を軽減したり、科にポストを用意してPIの研究時間を増やしたり、他の大学の共通機器を学内料金で活用できたりと、いろんなサポートをいただけています」と、その支援内容は多岐に亘る。
また共同研究につながるようなイベントも、積極的に開催しているようだ。「2026年3月に1回目のイベントが開催されました。24人のPIが全員、短い時間ながら研究のプレゼンをおこない、その後にフロアでお互い声を掛け合って、交流や打診をおこなうというものです。私もここに参加したことで、良い出会いを得ることができました」と、佐藤先生はその成果を語る。
実際、「ToRA-SEED」に参加したことで佐藤先生は、千葉大学で代謝に関わる研究を進められている池田 英樹先生、同じく千葉大学でバイオインフォマティクスに携わられている大瀧 夏子先生と共同研究を進めることが決まったとのこと。
「24人のPIの中で、放射線科は私ひとりでした。そのため放射線を使うことによる細胞の反応や、そこで得られるデータについて伝えると、新たな研究の発想が先生方の中に生まれたようですね。「ぜひ一緒にやりたい」と良い反応をいただけました。逆に私のほうでも、各先生が有する基礎研究における深い解析技術に触れることで、お互いの強みを活かせそうだという可能性が見えました」と、共同研究についての意欲を語られた。
臨床医と大学院生、臨床医と研究者……常に二足の草鞋を履く多忙な日々
今でこそ、日本の重粒子線研究を支える新進気鋭の次世代研究者として知られる佐藤先生だが、実は元々、研究職を志していたわけではなかったと言う。
「父が医者をしていたこと、また私自身が、子どもの頃によく病院にかかっていたこともあって、医者という職業はとても身近な存在でしたし、良い仕事だと思っていました。激務なことも分かっていましたが、どうせ激務なら自分が納得できる仕事が良いと思い、医学部に進学することを決めました」。
そんな佐藤先生が研究者の道にも進んだのは、学生時代に「腫瘍放射線学講座」へ入局したことがきっかけ。「先ほどもお話に出てきた、前任の中野 隆史先生が「入局した人は全員大学院に行きなさい」というルールを定めていたのです」と、佐藤先生。
そのため初期研修を終えた2010年から約4年半、佐藤先生は、昼間には病院で臨床医としてフルタイムで働き、夜間や休日は群馬大学 大学院で勉強や実験に励む、多忙な日々を送ることとなる。
そしてそこで、中野先生や当時の指導教官だった鈴木 義行先生(現・福島県立医科大学 教授)に導かれ「抗腫瘍免疫」「重粒子線」にまつわる研究に携わるようになるのだった。
博士号を取得した2014年からは、群馬大学病院 放射線科の医員に、また2017年からは群馬大学 重粒子線医学研究センター 助教に着任。ここでも佐藤先生は臨床医として、そして研究者として、二足の草鞋を履く多忙な日々を送っていたという。
さらに2021年からは、放射線治療による免疫反応の研究の世界的な第一人者であるワイル・コーネル医科大学のサンドラ・デマリア先生の元で、約3年間の留学を経験。この留学に関しては、共同研究もおこなった柴田先生が背中を押してくれたとのこと。
「コロナ直前、サンドラ先生が来日して、学会に参加したりQST病院で特別講演を行われた時がありました。以前から、この先生の元で勉強がしてみたいと思っていた私は、柴田先生からサンドラ先生を紹介いただいた際に、ぜひ留学させて欲しいと直訴したのです。事前に、柴田先生が私の留学意思を頭出ししてくださっていたこともあって、自分だけの力では思いもよらないほどスムーズに留学の話は進みました。この件に限りませんが、今振り返ると、本当に、私は人とのつながりに恵まれているなと思います」。
2024年に帰国され、重粒子線医学研究センターに戻った佐藤先生は、2026年に腫瘍放射線学講座の講師へと昇進。現在は、PI的な立場として、臨床の現場に立ちながら、自身の研究を進める傍ら、予算取りや大学院生への指導など、さらに幅広い業務をこなされるようになった。
組織全体を撮影でき、その場で定量化できるBZ-Xシリーズの機能性を高く評価

佐藤先生が、BZ-Xシリーズを導入したのは2025年と直近。それまでは、一般的な明視野の顕微鏡を主に活用されていた。
「留学するまでは、主にヒトの検体を観ていたので、そこまで倍率や解像度の高い顕微鏡は必要ありませんでした。また留学先では、細胞株やマウスの切片を観る実験にも携わることになりましたが、その時は共焦点顕微鏡を使っていました。困ったのは、帰国してからです。私の研究の中で、免染の組織の観察をおこなう必要が出てきたのですが、それを解析する良い方法が見つからなかったのです。「ImageJ」や「QuPath」なども試してみたのですが、どうも思うような解析結果が得られません。そんなときに、BZ-Xシリーズに解析ソフトを入れれば、その場で定量化できることを知り、渡りに船とばかりに導入を決定しました」。
導入されたBZ-Xシリーズは現在、佐藤先生ご自身の研究はもちろん、先生が指導する大学院生の研究にも大いに役立っているとのこと。
「私が指導している大学院生の中に、マウスの切片を使う研究をやっている者がいるのですが、彼の研究はまさにBZ-Xシリーズがあったから進められたと思っています。BZ-Xシリーズを使えば、切片上の組織全体をタイリングで観て、その中から一部をピンポイントで解析する……といったことができるので、組織全体の評価を、綺麗な画像で速やかに実施できます。お陰で誰が見ても納得できる絵を出せるようになりました」と、その信頼性、機能性を高く評価されている。
また、BZ-Xシリーズの魅力は画質の高さにもあると言う。佐藤先生曰く「BZ-Xシリーズで撮影した写真は、学会でも「綺麗だ」と好評をいただきました。現在執筆中の論文にも、そんなBZ-Xシリーズの写真を掲載しています。こちらは、来月には投稿を予定しています(2026年7月現在)」と、今後の研究成果の発表に期待を滲ませた。
根治が難しいとされるステージ4のがんを治すことが目指すゴール
そんな佐藤先生が、今後力を入れるべく進めている研究テーマは「臨床データの活用」。「臨床医として現場に立っている強みを活かして、マウスや培養細胞だけではなく、当然ヒトの検体を使った研究を進めていきたいですね。その研究ではもちろん、BZ-Xシリーズも活用していきたいと考えています」とのこと。
その先に見据えているのは「重粒子線治療で起きる免疫反応をすべて解明すること」、そして「根治が難しいステージ4のがんを治せるがんにすること」だ。
「アブスコバル効果(abscopal effect)と呼ばれる現象をご存じですか?これは、転移のあるがんに対して、1箇所だけ放射線治療をおこなうと、他の箇所のがんまで消えるというものです。この現象がなぜ起きるのか、これまでずっと不明だったのですが、ここ20年くらいで、放射線を当てたことによる免疫反応がバックグラウンドにあることが分かりました。つまり、放射線と免疫のメカニズムを把握し、この現象を誘導できる方法が分かれば、ステージ4のがんも治せる可能性があるのです。私はそこを研究のゴールにしています」とその大きな可能性について力強い言葉で締めくくられた。臨床と研究の架け橋となり、ステージ4のがん治療に挑む佐藤先生の挑戦からは、今後も目を離せない。


