スピーディに広い範囲を観られるBZ-Xシリーズは、iPS細胞や、そこから分化した細胞の観察に最適です

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株式会社ビジョンケア 代表取締役社長
神戸市立神戸アイセンター病院 研究センター 研究センター顧問
公益社団法人NEXT VISION 理事
立命館大学 総合科学技術研究機構 立命館先進研究アカデミー(RARA)フェロー
理化学研究所 生命機能科学研究センター 網膜再生医療研究開発プロジェクト 客員研究員
髙橋 政代 様 -
1986年に京都大学 医学部を卒業し、1992年に同大学 大学院の医学研究科にて博士課程を修了された髙橋先生は、京都大学医学部附属病院の助手、助教授を経た後に、アメリカのソーク研究所への留学を果たし、そこで神経幹細胞の網膜治療への応用を志すようになります。帰国した2006年からは、理化学研究所にて網膜再生医療研究開発プロジェクトのリーダーに就任。そして2017年には、「神戸アイセンター構想」を提唱し、病院・企業・公益法人が連携することで、眼科にまつわる基礎研究・治療・ロービジョンケアを一体化させたエコシステムを作り上げました。
またiPS細胞から作った網膜色素上皮シートの移植手術を世界で初めて成功させ、イギリスの科学雑誌『Nature』から「今年の10人(2014年)」に選出されるなど、その数々の功績は国内外から注目を浴びています。 -
株式会社VC Cell Therapy
地方独立行政法人神戸市民病院機構神戸市立神戸アイセンター病院 研究センター 研究員
本間 耕平 様 -
2001年、慶應義塾大学理工学部物理情報工学科を卒業した本間先生は、慶應先端科学技術研究センターや理化学研究所にてリサーチアソシエイトとして勤務されながら、同大学 大学院にて博士課程を取得。その後、理化学研究所網膜再生医療研究チーム(髙橋政代ラボ)所属の研究員として2011年まで勤められた後に、アメリカの国立眼研究所NIH(NEI)、Swaroop Anand研究室(Neurobiology, Neurodegeneration & Repair Laboratory NNRL)に留学されました。帰国後は日本医科大学の助教、慶應義塾大学の助教を経て、2022年より株式会社VC Cell Therapyの研究開発部研究員に着任、神戸市立神戸アイセンター病院研究センター研究員を兼任し、iPS細胞を用いた網膜移植治療開発及び網膜疾患基礎研究に従事されています。
主な論文
髙橋先生
Competency of iPSC-derived retinas in MHC-mismatched transplantation in non-human primates.
Hirofumi Uyama, Hung-Ya Tu, Sunao Sugita, Suguru Yamasaki, Yasuo Kurimoto, Take Matsuyama, Takashi Shiina, Takehito Watanabe, Masayo Takahashi, Michiko Mandai
Stem cell reports 17(11) 2392-2408 2022年11月8日
Polarization-sensitive optical coherence tomography for estimating relative melanin content of autologous induced stem-cell derived retinal pigment epithelium
Mitsuhiro Matsuzaki, Michiko Mandai, Masahiro Yamanari, Kota Totani, Mitsuhiro Nishida, Sunao Sugita, Tadao Maeda, Naoshi Koide, Seiji Takagi, Yasuhiko Hirami …
Scientific Reports 10(1) 7656-7656 2020年12月
HLA-Matched Allogeneic iPS Cells-Derived RPE Transplantation for Macular Degeneration
Sunao Sugita, Michiko Mandai, Yasuhiko Hirami, Seiji Takagi, Tadao Maeda, Masashi Fujihara, Mitsuhiro Matsuzaki, Midori Yamamoto, Kyoko Iseki, Naoko Hayashi …
Journal of Clinical Medicine 9(7) 2217-2217 2020年7月13日
本間先生
Ozawa Y, Toda E, Homma K, Osada H, Nagai N, Tsubota K, Okano H “Effects of Epigenetic Modification of PGC-1α by a Chemical Chaperon on Mitochondria Biogenesis and Visual Function in Retinitis Pigmentosa” Cells. 2022 Apr 29;11(9):1497. doi: 10.3390/cells11091497.
Osada H, Toda E, Homma K, Guzman NA, Nagai N, Ogawa M, Negishi K, Arita M, Tsubota K, Ozawa Y. “ADIPOR1 deficiency-induced suppression of retinal ELOVL2 and docosahexaenoic acid levels during photoreceptor degeneration and visual loss.” Cell Death Dis. 2021 May 7;12(5):458. doi: 10.1038/s41419-021-03741-5
Homma K, Toda E, Osada H, Nagai N, Era T, Tsubota K, Okano H, Ozawa Y. “Taurine rescues mitochondria-related metabolic impairments in the patient-derived induced pluripotent stem cells and epithelial-mesenchymal transition in the retinal pigment epithelium.” Redox Biol. 2021 Feb 28;41:101921.doi: 10.1016/j.redox.2021.101921
網膜の再生手術を世界で初めて成功させ、その「標準化」を目指して日夜、研究や認可申請、資金調達に取り組まれている髙橋先生と本間先生。その研究には「素早く広い範囲」を撮影できるキーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡・BZ-Xシリーズが、非常に役立っていると言う。そこでおふたりに、BZ-Xシリーズの活用状況と共に、現在取り組まれている研究内容や、今まさに申請中の「先進医療」の認可の状況、また今後の展望について詳しく伺いました。
- 基礎研究・臨床・治療・支援のエコシステムを実現する「神戸アイセンター構想」
- 網膜再生治療の「標準化」を目指して
- 前例の少ない再生医療を、社会に届けるための制度上の課題
- BZ-Xシリーズの特性はiPS細胞、再生医療の研究とマッチ
- 目指すは「多くの人が最新かつ良質の治療を受けられる未来」と「医療業界の発展」
基礎研究・臨床・治療・支援のエコシステムを実現する「神戸アイセンター構想」
眼科にまつわる「基礎研究」と「臨床および治療」、そして「ロービジョンケア(生活の支援)」を一体化させたエコシステムの実現を目指して、髙橋 政代先生が提唱し立ち上げた「神戸アイセンター構想」は、3つの組織から構成されている。
ひとつ目が、神戸の眼科領域の中核病院であり、iPSを活用した臨床研究の実施を担っている「神戸市立神戸アイセンター病院」。ふたつ目が、目に障害のある人への支援と共に、技術開発支援や調査研究などを行う「公益社団法人NEXT VISION」。そして3つ目が、網膜外層疾患の治療・開発に取り組んでいる「株式会社ビジョンケア」だ。
今回インタビューさせていただく髙橋 政代先生は、そんな「神戸アイセンター構想」の発起人として、すべての組織に所属している。「ただ、その軸足は時代と共に変わってきました。最初は、理化学研究所も参画してくれていたので、そこのLabでの研究がメインでした。その後、神戸アイセンター病院の研究センター、NEXT VISIONがメインだった時を経て、今、最も軸足を置いているのがビジョンケアになります」。現在は、迅速な意思決定速度、資金調達力など会社組織ならではのメリットを活かしながら、「iPS細胞による網膜再生手術」を、いち早く「標準治療」にするために尽力されている。
一方、本間 耕平先生は、そんな髙橋先生の元で基礎研究に打ち込まれている研究者。曰く、「株式会社ビジョンケアのグループ会社である「株式会社VC Cell Therapy」と、「神戸アイセンター病院」に所属しており、主に網膜の細胞治療の研究開発に従事しています」とのこと。
ちなみにBZ-Xシリーズは、このVC Cell Therapyの保有機器。主に本間先生を中心に、iPS細胞や、そこから分化した細胞の観察に活用されている。
網膜再生治療の「標準化」を目指して

そんな髙橋先生と本間先生が、現在、注力して取り組んでいるテーマは網膜再生手術の「標準化」。それも当然、髙橋先生は、世界初となる2種類の網膜再生手術を成功させた実績をお持ちだ。本間先生によると「ひとつめは2014年。iPS細胞から、網膜色素上皮細胞(RPE細胞)を作り、その移植に世界で初めて成功しました。そしてふたつめが、2020年。シート状にした網膜オルガノイド(網膜神経組織)を移植する手術も成功させました。こちらも世界初のことです」とのこと。
再生医療を広く患者さんに届けるには、治療の有効性や安全性を確認するだけでなく、細胞の製造、患者さんの選択、手術手技、術後管理までを含めた治療全体の標準化が欠かせない。「医薬品でも承認後の適正使用や品質管理は重要ですが、細胞を用いる再生医療では、製造から手術、経過観察まで多くの要素が治療成績に影響します。私たちはこの10年、各段階の課題を一つずつ検証し、より安全で再現性の高い治療として実施できるよう、治療デザインを整えてきました」と髙橋先生は説明する。
網膜再生医療には国内外の多くの研究機関や企業が取り組んでおり、それぞれ異なる細胞、投与方法、対象疾患で開発が進められている。その中で髙橋先生たちは、細胞そのものだけではなく、手術方法や患者選択、免疫反応への対応までを一つの治療システムとして整えることを重視している。
「治験は、新しい治療の安全性と有効性を客観的に評価し、社会に届けるために不可欠なプロセスです。一方で、特に手術を伴う再生医療では、細胞の品質だけでなく、投与方法や合併症への対策、どの患者さんに適しているかまで、治験に入る前からできる限り詰めておく必要があります。私たちは先行する国内外の研究成果からも学びながら、剤形や手術法を改良し、免疫反応への対応を含めて、患者さんの負担とリスクを少しでも減らす準備を重ねてきました。現在は、これまでに蓄積した知見を適切な臨床試験で検証するため、治験の準備を進めています」と、髙橋先生は語る。
前例の少ない再生医療を、社会に届けるための制度上の課題
髙橋先生や本間先生たちは、技術面での改良と標準化を進める一方、治療を社会に届けるための制度面の検討にも取り組んでいる。現在の課題の一つが、患者さんの費用負担を抑えながら、一定の条件のもとで先進的な医療を提供する「先進医療」の枠組みを、どのように位置づけるかという点である。
髙橋先生によると、「先進医療として実施するためには、複数段階の審査を受け、安全性、有効性、実施体制、費用などを総合的に確認していただく必要があります。iPS細胞を用いた手術型の再生医療は前例が少なく、既存の評価方法だけでは判断しにくい部分もあるため、審査する側は慎重に議論を積み重ねているところです」とのこと。
髙橋先生たちは、関係省庁や専門家とも意見交換を続けながら、必要なデータや実施体制を整理し、再審査に臨んでいる。「第一の目標は、患者さんの安全を確保しながら、透明性の高い制度の中で治療を届けることです。先進医療を含むさまざまな制度上の選択肢を検討していますが、どの方法を選ぶ場合も、十分な説明、適切な審査、長期的な経過観察が大切であることは前提です。」と話す。
また、髙橋先生たちの治療開発には、国内の大学や医療機関、海外の医師・研究者からも関心が寄せられているという。「20を超える大学や医療機関の先生方と研究会を続け、治療を安全に実施するための手技や評価方法を共有してきました。将来、限られた施設だけでなく、必要な患者さんが適切な医療機関で治療を受けられるようにするには、教育、認定、データ登録、長期フォローの仕組みも必要です。社会の皆様にも、再生医療が期待だけでなく慎重な検証の積み重ねによって進むこと、そしてその準備は整ってきていることを知っていただければ嬉しいです」と髙橋先生は語った。
BZ-Xシリーズの特性はiPS細胞、再生医療の研究とマッチ

髙橋先生、本間先生が、BZ-Xシリーズに触れるようになったのは、髙橋先生が2006年からチームリーダーとして、また本間先生も2007年からその一員として所属していた、理化学研究所の網膜再生医療研究チーム時代。「素早く、広く撮れる」というBZ-Xシリーズの特性が、iPS細胞、再生医療の研究とマッチしているとのことで、長年に亘って先生方の研究に役立っているとのこと。
現場でBZ-Xシリーズを活用している本間先生からは、「iPS細胞や、そこから分化した細胞を観察するにあたって、BZ-Xシリーズは非常に使い勝手が良いです。その理由はふたつ。ひとつ目は、広範囲で精細に撮れること。iPS細胞や分化した細胞は広い範囲で観る必要があるため、等倍レンズを使います。しかし通常の光学顕微鏡だと、細かな部分が分かりません。その点、BZ-Xシリーズは、中距離で精細に撮影した複数の画像を、タイリングで1枚にして観察することができます。ここまで広く、細かく確認できる機器は他にないのではないでしょうか。そしてふたつ目は、スピーディに撮影できる点です。生きた細胞は、なるべく外に置いておく時間は短くしたいものです。その点、BZ-Xシリーズがあれば、インキュベーターから出して、パッとチェックしてすぐ戻すという作業がやりやすいのです。コンパクトで、インキュベーターのすぐ近くに設置できるため、ホットプレートを用いて温度を保つ必要がない点も良いですね」との言葉をいただけた。
目指すは「多くの人が最新かつ良質の治療を受けられる未来」と「医療業界の発展」
最後に本間先生と髙橋先生に、それぞれ今後の展望を伺った。すると本間先生からは、現場に則した研究について、また髙橋先生からは、業界全体の改善について、注力していきたいとのこと。
まず本間先生の展望については、「私は元々、物理系の出身ということもあり、「工学」という観点でも研究を進めていきたいですね。例えば視機能の改善方法としては、今進めている細胞移植治療はひとつの手段として、その他、いろんな工学的なツールも使いながら他により良い手段がないかを模索していこうと考えています。また「物性」という観点では、オルガノイドの長期保存の研究にも興味があります。上手く研究が進めば網膜はもちろん、他の臓器移植にも繋がると思いますから」とのこと。
続いて髙橋先生からいただいた展望は、大きくふたつ。「先進医療」を前に進めるための支援に期待している点と、基金の創設を検討している点だ。
支援については、「私たちは、短期間での事業拡大よりも、患者さんにとって本当に必要な治療を着実に育てることを優先しています。その考えに共感してくださる事業会社や個人投資家、社会的インパクトを重視するファンドの皆様に支えていただいています。前例の少ない医療を制度の中で形にするには時間と資金が必要です。研究開発の趣旨をご理解いただき、長期的な視点で協力してくださる方々との連携を広げていきたいと思っています」と話す。
また、治療を開発するだけでなく、経済的な理由で治療機会が左右されにくい仕組みづくりにも取り組みたいという。「新しい網膜治療には、開発初期にはどうしても大きな費用がかかります。重い疾患や希少疾患の患者さんに対する人道的な治療提供の考え方も参考にしながら、将来は、治療を必要とする方や、眼科領域で社会的価値の高い活動を支援するアメリカの患者会(Patient Advocacy Group)のような基金を作って、治療を受けたい人を支援したり、目にまつわる研究や治療開発の企業を助けたりできると良いですね」と髙橋先生は語る。
新しい治療の安全性を確かめ、制度と事業の両面を整えながら、「多くの人が最新かつ良質な治療を受けられる未来」を目指す髙橋先生。研究者、医療者、患者、企業、行政が立場を越えて協力することで、その実現に向けた輪がさらに広がることが期待される。


