使い勝手・性能に加えて、頑健性の高さも評価。BZ-Xシリーズは、海外の研究員が多いLabやBSL施設にも安心して設置できます

- 長崎大学
熱帯医学研究所
ウイルス学分野
教授
髙松 由基 様 -
2008年に山口大学の医学部を卒業した髙松 由基先生は、初期臨床研修を長崎大学で受けるも、医師の道へは進まず、同大学で研究者としての道を歩み始めます。そこからドイツのフィリップ大学、京都大学、国立感染研究所での経験を経ながら、多彩な功績を残されていくことに。そして2021年、退官される恩師・森田公一先生が主催していた熱帯医学研究所 ウイルス学分野のLabを引き継ぐ形で、准教授として戻ってきた髙松先生は、2025年には同Labの教授に昇進。海外からの留学生も含めた多くのLabメンバーと共に、マクロとミクロ、両方のアプローチから高病原性ウイルスの治療や予防に繋がる研究に邁進されています。
主な論文
Emerging Multi-Source Transmission of SFTS Virus on a Remote Japanese Island: A One-Health Perspective.
Ryosaku Oshiro, Motoki Ihara, Catarina Harumi Oda Ibrahim, Kosuke Matsui, Xayavong Dalouny, Nhung Hong Pham Vu, Tomomi Kurashige, Qiang Xu, Shangfan Hu, Mya Myat Ngwe Tun …
International journal of molecular sciences 27(4) 2026年2月10日
Molecular insights into nucleocapsid assembly and transport in Marburg and Ebola viruses.
Yuki Takamatsu, Olga Dolnik, Ai Hirabayashi, Kenta Okamoto, Tomomi Kurashige, Hu Shangfan, Catarina Oda Harumi, Takeshi Noda
mBio 16(11) e0155725 2025年9月22日
Ebola virus proteins NP, VP35, and VP24 are essential and sufficient to mediate nucleocapsid transport
Takamatsu Y, Kolesnikova L, Becker S
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 115(5) 1075-1080 2018年
ウイルスの分子構造解析や自然界でのウイルスの伝播状態の解明などの分野で、多くの功績を残されている髙松先生は、主にタイムラプス機能を用いた研究に、キーエンスのオールインワン蛍光顕微鏡・BZ-Xシリーズを活用。ウイルスの細胞内動態の把握に役立てています。そこで髙松先生に、ご自身の研究内容やご経歴、またその中でBZ-Xシリーズをどう活用しているかについて詳しく伺いました。
- 顧みられない感染症を専門的に研究する「熱帯医学研究所」とは
- ミクロからマクロまで……高原病性ウイルスの治療および予防の研究に邁進
- 国内外の数々の一流研究機関を渡り歩いてきた経歴とそのコツとは
- BZ-Xシリーズの評価ポイントと他機種との使い分けについて
- 「頑健性」はBSL施設や海外研究拠点にも適性が高い
顧みられない感染症を専門的に研究する「熱帯医学研究所」とは

髙松 由基先生が籍を置く「熱帯医学研究所」は、長崎大学の附置研究所。1942年、旧制長崎医科大学時代に、東亜風土病研究所として設立された、約85年の歴史を誇る研究施設だ。その名の通り、研究対象となるのは熱帯地方の感染症。「Neglected Tropical Diseases(NTDs)……いわゆる顧みられない熱帯感染症と呼ばれるものを専門的に研究している、国内屈指の研究機関です」と髙松先生。
「熱帯地方の感染症」と言っても、実はその研究分野は幅広い。熱帯医学研究所には、髙松先生が教室主催者である「ウイルス学分野」を始めとする病原体の解明に特化した「病原体解析部門」に加え、「宿主病態解析部門」、「環境医学部門」、「臨床研究部門」など、多角的なアプローチで感染症の脅威に挑む強固な研究体制が敷かれている。
ちなみに髙松先生が主催する「ウイルス学分野」は、世界保健機関(WHO)から「WHOコラボレーションセンター(WHOCC)」としての指定を受けており、国際的な公衆衛生に関わる研究、サポートにも携わっている。「特に今は、デング熱とかジカ熱などのアルボウイルス感染症が、WHOCCにとって重要な公衆衛生課題になっています。それらの感染症に困っている人たちが、Labに留学や研修に来ます。たとえば、東南アジアとかアフリカで現地で重要なウイルス感染症に対する診断系を作りたいと思っている人、病原体の解析手技を習いたい人がいたら、私たちはそうした学生たちを受け入れて教育訓練をする立場にあります」とのこと。そのため、髙松先生のLabには海外からの学生・スタッフも数多く在籍している。
また長崎大学には、国際的にも貴重なBSL-4(バイオセーフティレベル4)研究施設が設置されている点も特徴だ。現時点では本格稼働前ながら、高度な封じ込め環境が必要となる研究で、大きな成果を残すことが期待されている。
BSL-4施設は熱帯医学研究と管轄は異なるが、髙松先生は、かつてドイツのフィリップ大学マールブルク校に留学時代に、BSL-4施設を使った研究に従事されていた。そうした経験もあることから「直接的にBSL-4の研究部門には属していないのですが、フィリップ大学時代に進めていたエボラウイルスの研究を続けています」と語られるように、髙松先生は国内におけるBSL-4病原体解析のさらなる進展にも寄与されている。
ミクロからマクロまで……高原病性ウイルスの治療および予防の研究に邁進
そんな髙松先生が「ウイルス学分野」の中で研究されているテーマは、大きく分けて「ミクロの研究」と「マクロの研究」のふたつ。「ミクロの研究は、高病原性ウイルス……エボラ出血熱、マールブルグ病などの研究です。ただ病原体そのものは当然扱えないので、タンパク質や遺伝子レベルの解析、感染性のない状態での解析……各種顕微鏡を用いて、微細構造解析、細胞内の動態解析など、いわゆる分子機構解析を行っています」と、髙松先生。その研究が進んでいけば、細胞内でウイルスがどういう振る舞いをしているか、そして、どこを叩けば増殖を抑えられるかが解明できる。つまり、これまで「顧みられない感染症」と呼ばれていた、さまざまな高病原性ウイルスの治療薬、診断薬の開発に繋がることが期待されている。
一方「マクロの研究」については、ウイルスがどのようにヒトに重要な感染症を起こすのか、自然界で維持・伝播されていくのかも含めて追求。髙松先生曰く、「蚊(ベクター)、野生動物、人、病原体のデータを統合解析して、特定の介入(たとえば蚊の増殖抑制)を行った場合、感染者や死亡者がどれだけ減るかを予測するモデルを構築できます。現在はそのためのデータセットを収集している段階であり、得られた知見を公衆衛生施策や行政政策に反映して感染予防につなげることが最終目標です。デング熱は一応ワクチンはありますが、あまり効果が高くありません。ジカ熱などは有効なワクチンもないため、『発症させない=予防』が重要です」と語られた。
ちなみに髙松先生の「マクロの研究」の規模は、日本で言えば市や県レベル。「たとえばベトナムのある都市にウイルスがどのように侵入し、どのように広がり、どのように進化・適応して、宿主や環境と相互作用した結果として、地域社会にどのような影響を与えたかを解明することを目指しています。」と髙松先生。
これを実現するには、対象となる要素を精選して調査計画を立て、収集したデータを統合解析して因果関係を考察することが重要である。しかし都市内の流動性や多様な要因が複雑に絡み合うため、要素整理だけでも高度な知見を要する。そのため髙松先生は、さまざまな部門、組織と連携しながら研究を進めている。
「熱帯医学研究所内には蚊などベクターを専門とする病害動物学分野があり、大学院には公衆衛生・疫学・モデリングの専門家が複数在籍します。多くの先生方にご指導頂きながら、また現地の研究機関・行政と協力しながら、フィールドスタディを進めています。」「ミクロの研究のほうでも、エボラ出血熱やマールブルグ病については京都大学 医生物学研究所の野田岳志先生と、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)というダニ媒介感染症については国立感染症研究所の先生たちと……といった形で、多くの先生と協力し合っています」。
さらに髙松先生のLab内は、専門性の違うスペシャリストが所属している点も特徴。「うちのLabはちょっと特殊で、私の専門性、准教授の専門性、助教の専門性、全部別なんですよ。たとえば准教授の肥田野さんは数理モデル、疫学のスペシャリストですので、マクロの研究をリードしていただいています。また助教の胡(フー)さんは、電子顕微鏡解析ができるので、ミクロの研究をリードしていただいています」と、それぞれの専門性を活かしながらLabの研究を前に進めている。
国内外の数々の一流研究機関を渡り歩いてきた経歴とそのコツとは
エボラウイルスの増殖メカニズムを分子レベルで解明するなど、研究者としてさまざまな功績を残している髙松先生。だが元々は研究者ではなく、医師を志して山口大学の医学部に進学されたという。その意識が変化したのは、学生時代のレポートがきっかけ。「医学部のレポートでは、患者様の経過を診て自分なりの考察を書くのですが、あまり納得いくものが書けなかったんですよ。臨床経過をまとめて文献を参照し自説を述べても、内容が浅く感じられ、自分で課題を掘り下げたいという思いが強くなりました。ちゃんと自分で研究して、もっと深い議論ができるようになりたい……と考えるようになったのです」。
そこで髙松先生は、興味のあった「出血熱」の研究が盛んだった長崎大学を、医学部の初期研修のマッチング先として選定。長崎原爆病院、長崎大学病院にて臨床に携わりながら、いろんな先達の研究者から話を聞き、2010年には長崎大学の博士課程へ。世界的な熱帯感染症・ウイルス学の権威である森田 公一先生の元で、ウイルス学の道へと進む。「臨床研修で、医師の仕事は患者様や家族の方から感謝される、とても充実感がある素晴らしい仕事だと感じました。でも、どうしても1回は研究に携わってみたいという想いがありました。無事に保険医の資格も取れ、研究に向いていなかったら医師に戻れるという保険もあったので、思いきって研究の道……熱帯医学研究所の門を叩くことにしたのです」。
以降、髙松先生はご自身の力を持って、研究者としてステップアップを果たしていく。2015年のドイツ・フィリップ大学マールブルク校への研究留学は、面識のなかった同研究所長ステファン・ベッカー氏へ直接連絡を取り、研究滞在資金が確保できれば受け入れると了承を得て渡独した。京都大学との縁は、ベッカー先生主催の学会でウイルス構造解析の第一人者・野田岳志先生と出会ったことに始まる。野田先生の助言で、日本学術振興会(学振)特別研究員の資格を得て、ドイツでの研究を継続しつつ、京都大学に籍を置き構造解析を学ぶ機会を得た。2019年に国立感染症研究所へ移った経緯も自発的な働きかけが契機で、以前講演した際の印象を覚えていた当時のウイルス第一部長・西條政幸先生の声掛けが採用につながった。髙松先生自身は、研究業績に加えて、積極的なリクルート活動と人脈構築が、国内外の研究機関での経験と現在の地位獲得に大きく寄与したと語っている。
2021年、博士課程時代の恩師・森田公一教授の退官に伴い、長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学分野の教室主催者に就任した髙松先生。研究者として就職先を見つけるコツを尋ねると、次のように語った。「私は元々メジャーなものに惹かれない性格で、誰もやっていない課題に挑むのが好きです。あえてマイナーな領域を選べば競争相手が少なく、有利になることがあります。それから、熱意の伝わる連絡をすること。私はメールだけでなく手紙も必ず添えました。宛先の書き方も重要で、名前すら入れない『Dear Professor』のような無記名のメールは読まずに棄ててしまいます。忙しい相手に時間を割いてもらうので、礼を尽くした連絡が大切です。」
BZ-Xシリーズの評価ポイントと他機種との使い分けについて
髙松先生がはじめてキーエンスのBZ‑Xシリーズに触れたのは国立感染症研究所時代のことである。当時研究所にあったBZ‑X700は古い機種ながら問題なく稼働しており、印象に残っているという。コロナ禍を契機に、当時の上司であった西條先生の承認を得て最新機種の検討を開始。複数機種を比較検討した結果、画質、直感的な操作性、そして高品質なタイムラプス撮影を長時間維持できる点を評価してBZ‑X800を導入した。

特に髙松先生の研究ではタイムラプス撮影が不可欠であり、共焦点顕微鏡では高分解能が得られる反面、蛍光褪色により長時間連続撮影が難しいという課題があった。BZ‑X800は短時間はもちろん、蛍光が持続する限り48時間などの長時間でも安定して高品質なタイムラプスを撮影できる点が大きな導入理由だと語っている。
近年はMIP(最大輝度投影)や動画を用いて「動き」を示せる論文が増えているが、髙松研究室でもBZ-Xシリーズのタイムラプス機能で撮影した静止画・動画が多数論文に掲載されている。現在、長崎大学熱帯医学研究所ウイルス学分野には、2021年に導入したBZ-X800と、2025年に追加導入した最新機種BZ-X1000の2台が稼働しており、いずれも頻繁に活用されている。BZ-X800は固定細胞の一般的なIFA撮影やイメージサイトメーターを用いたスクリーニングに、BZ-X1000はタイムラプスを活用したライブセルイメージング観察に主に用いられている。
髙松研究室ではBZ‑Xシリーズに加え、共同研究室の共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡を併用している。各装置を使い分ける理由は明確である。電子顕微鏡でウイルス粒子そのものを可視化し、共焦点でウイルスと細胞内オルガネラの共局在を確認し、BZ‑Xで感染細胞のダイナミックな挙動を長時間観察することで、ウイルスのライフサイクルを時空間的に可視化できる。さらに、蛍光標識したウイルスや感染細胞をクライオ電子顕微鏡で解析する手法を組み合わせることで、時空間解析の解像度は飛躍的に向上する。
「頑健性」はBSL施設や海外研究拠点にも適性が高い
髙松先生は、BZ‑Xシリーズの評価ポイントとして操作性・画質・高性能なタイムラプス機能をあげるが、長崎大学に導入してからは「頑健性」も大きな利点であると指摘する。特に高度封じ込め実験施設(BSL-3, BSL-4)では入退室や保守が制約されるため、故障しにくいことは重要だという。「前職の感染症研究所のBSL‑3施設にもBZ‑Xが導入されています。現場では容易に修理や交換ができないため、堅牢な装置が重宝されます。BSL-3内で生きた病原体を観察できる点も設備としての大きな強みです」と語る。共焦点顕微鏡は高分解能だが暗室要件や操作の難しさから高度封じ込め実験施設への常設には向きにくく、コンパクトでユーザーフレンドリーなBZ‑Xシリーズはそういった環境と非常に相性が良い。
「ミクロの研究とマクロの研究は一見まったく異なる領域だが、両者は『可視化』という共通の方向を向いています。各メンバーがそれぞれの興味ある対象を可視化の観点から深掘りし、その成果を相互に生かし合える研究室にしていきたい。」と髙松先生は語った。
髙松先生は、これまでの研究をさらに深める一方で、各メンバーがそれぞれの研究に専念できる環境づくりにも意欲を示している。また、BZ‑Xシリーズの活用については海外研究拠点への導入を検討しているという。たとえばブラジルでは検体や生物資源の持ち出しが原則禁止されるため現地での解析が必須であり、将来的に検体が増加すれば効率的な観察手段が必要になる。コンパクトで堅牢なBZ‑Xシリーズは現地導入の有力候補であり、将来ブラジル拠点で活躍することが期待されている。


