ここでは白色干渉方式の原理や実際の白色干渉3D変位計のメカニズム、インライン3次元検査への活用、メリットなどについて解説します。

白色干渉方式の原理

「光の干渉」は、対象物の表面からある点までの光の距離(光路)に差が生じることで起こる現象です。白色光源から一方は対象物を照射し、もう一方は参照ミラーで反射させ、それらの光の干渉の強弱から対象物表面の凹凸の高さ・深さを測定するのが、大まかな仕組みです。続いて、キーエンスの白色干渉3D変位計「WI-5000シリーズ」で、そのメカニズムを解説します。

白色干渉3D変位計のメカニズム

WI-5000シリーズは白色干渉原理により瞬時に高精度な3次元測定を可能とする白色干渉3D測定器です。変位計のメカニズムと原理について解説します。

測定のメカニズム

  1. LEDと半導体レーザの特性を併せ持つ広帯域な「SLD光源」から照射された光は、ビームスプリッタで2分されます。
  2. 一方の光は対象物で、もう一方の光は参照ミラーで反射します。
  3. これら2つの光は「干渉光」として受光素子に入光します。このとき、すべての光学部品を一体にした光学ユニットを上下に駆動させることで、対象物から反射する光の光路の長さが変化します。
  4. 受光素子に入った干渉光は、互いの光路長が一致したときに、干渉強度が最大となります。このとき得られる複数枚のコントラスト画像から、画素ごとに干渉強度が最大となる上下位置を読み取ることで、対象物までの距離を測定します。

高さデータの抽出

光学ユニットの上下駆動により、高さデータを抽出するメカニズムを以下の図で説明します。

a
光学ユニットの上下駆動
b
光学ユニットの位置
c
干渉強度の最大値
d
干渉強度
  1. 対象物に光を照射。
  2. 光学ユニットの上下駆動により、複数枚のコントラスト画像を取得。
  3. 干渉強度が最大となる位置で対象物までの距離を測定。同時に、8万点の各画素に対し、高さデータを高速で算出。

白色干渉3D変位計によるインライン3次元検査の実現

製造ライン上のワークに対して高度な3次元全数検査を実現するには、正確性やワークの材質や形状に影響されない安定性のほか、タクトタイムに影響しない高速な測定スピードが要求されます。

面で瞬時に正確な高さ情報を取得

WI-5000シリーズは、最大10×10mmのエリアに対し、「8万点の高さデータ」を「最速0.13秒」で高速サンプリングします。つまり、対象物を「面で瞬時に捉える」ことができるため、高速なラインにおいて高度な3次元検査が可能です。

WI-5000シリーズがわずか0.13秒で行う検査フロー
1
面で捉える
2
位置・傾きを補正
3
各種寸法検査
A
平坦度
B
ピーク高さ
C
段差

白色干渉3D変位計を3次元検査に用いるメリット

WI-5000シリーズは、独自開発のシステムにより安定した高速スキャンに求められる高い耐久性と制振性を実現しました。また、対象物の色・材質などを問わないため光沢・鏡面ワークにも対応します。さらに、豊富な測定モードを備えることで、さまざまなインライン3次元検査を実現します。

従来の課題を解決する、独自開発のシステム

安定した高速エリア測定を実現

新開発の「IPO-Engine」で、撮像データの読み出し・干渉ピーク演算・高さ画像の転送を超高速で並列処理。従来の課題だった干渉演算処理の時間を大幅短縮し、8万点の高さデータを瞬時に測定します。

振動を極限まで低減。高い安定性と耐久性を実現

Z軸スキャン時に光学ユニットを上下駆動させることで高さを高精度に測定します。そのとき、独自開発の「CB(Counter Balanced)スキャンシステム」で、光学部分の駆動方向とは逆方向におもりを動かし、ヘッド内部の重心移動をキャンセルします。従来の課題だった、振動による測定誤差や駆動部への負担を極限まで低減し、高い制振性・耐久性、安定性を実現しました。

A
専用撮像素子と「IPO−Engine」
B
「CBスキャンシステム」

対応力と安定性を実現するテクノロジー

死角の影響ゼロ

従来の三角測距方式の変位計では、奥行きのある対象物を測定する場合、反射光が遮られることで死角が発生し、測定が困難なケースがありました。
WI-5000シリーズは、照射光・反射光が同軸であるため、奥行きに対しても死角が発生せず、さまざまな形状の対象物の測定に対応することができます。

従来
WI-5000シリーズ
  • 測定可能領域
  • 測定不可領域

材質・色に影響ゼロ

広い光量ダイナミックレンジを実現したWI-5000シリーズは、金属メッキ(反射光大)〜セラミック(反射光小)までワンショットで同時測定できます。
樹脂のような半透明体を測定した場合でも、内部反射の影響がないため正確な高さを捉えることができます。

A
測定値
B
金属メッキ
C
樹脂
D
セラミック
  • 一般的なレーザ変位計
  • WI-5000シリーズ
Tips

光沢・鏡面のワークも安定して測定可能

WI-5000シリーズは、対象物の材質・色を問わず測定が可能です。たとえば、小型な水晶振動子に微少量塗布した半透明の接着材であっても、材質や光沢の影響受けず、高さ・体積を測定可能です。
ほかにも、半導体ウェハやCMOSカバーガラスなどの光沢・鏡面ワークであっても、安定して測定可能なため、多種多様なワークの検査に対応することができます。

水晶振動子の接着剤高さ・体積測定
エッチング後のウェハ溝深さ測定

豊富な測定モードで多彩な測定を実現

段差/高さ

平均・ピーク点・ボトム点などを選択し、指定したエリアの段差/高さを測定します。基準面を指定するだけで、ワークの傾きにかかわらず正確な測定が可能です。

段差/高さ
A
基準面
B
基準面補正なし
C
基準面補正あり

連続高さ

測定対象を小さなセグメントで区切り、最大値・最小値・平均高さを測定できます。各セグメントのピーク/ボトム波形を検出することで、突発的な凹みや突起を検出するため、欠陥・不良箇所を見逃しません。

a
測定対象をセグメントで区切る
b
セグメント内のピーク波形
c
ピーク波形
d
凹みを検知

体積(凹体積・凸体積)

指定した測定エリアと基準面で囲まれる空間の体積を測定します。また、基準面より低い空間・高い空間の指定も可能です。

A
凹体積
B
基準面
C
凸体積

画像寸法

高さデータにしきい値を設定することでエッジを検出します。それにより、直径や幅、距離などの寸法や位置、角度、ピッチなどの測定が可能です。

A
エッジの幅
B
センターピッチ
C
角度
D
直径
E
距離
F
位置

イメージ領域

高さデータを2値化処理することで、白黒データに変換し、そこから測定エリアを指定することができます。この機能を利用することで、複雑な形状のワークでも、測定エリアの設定が容易になります。

A
測定エリア
B
実際の測定領域
Tips

多点の高さを瞬時に一括測定

WI-5000シリーズは、複数の測定エリアを配置し、エリアごとの高さ・面積・体積を測定することができます。
たとえばBGAの極小なはんだボール(バンプ)高さを瞬時に一括測定し、NG箇所を特定することができます。これにより、従来の1次元変位計では多くの時間がかかった検査が瞬時に完了します。

A
基準面
はんだボール高さ測定の例
従来の1次元変位計
WI-5000シリーズは複数エリアを一括測定
複数の測定エリアから異常値を検出可能