自動車部品の材料などに付着した異物や残渣(微細なパーティクル)であるコンタミ(コンタミネーション)は、製品の強度と安全性の低下を招きます。特に自動車・航空宇宙関連においては、エンジン構成部品などの故障原因となり、人命に関わるリスクがあるため、コンタミの測定・解析、清浄度の確保が重要視されています。
ここでは、ISOやVDAといった工業規格に基づいたコンタミの測定方法と、4Kデジタルマイクロスコープを用いた最新の課題解決事例を紹介します。

工業規格と自動車部品のコンタミ測定・解析

自動車業界におけるコンタミ測定・解析

製造業のあらゆる現場で「コンタミ」「異物」「残渣」と呼ばれる微細粒子の測定・解析が注目を浴びています。特に「自動車業界」「半導体業界」「医薬・食品業界」では、製品の「清浄度」が重要視されています。それは、コンタミと呼ばれる微細なパーティクルが製品に悪影響を与えるためです。
特に、少しのコンタミが重要部品の故障・事故の原因となり人命に大きく関わる自動車業界においては、コンタミの測定・解析は不可欠な品質マネジメントの1項目になりつつあります。

コンタミによる自動車部品への影響

自動車の重要部品として、エンジンの構成部品が挙げられます。たとえば、エンジンブロックのシリンダーライナー内において、わずか数μmの隙間(クリアランス)で往復運動を繰り返すピストンは、エンジンオイルにより気密性が保たれています。万一、ピストンリング側面に微少な金属コンタミが付着していた場合、往復運動を繰り返すことでシリンダーライナー内壁に傷が生じ、エンジントラブルの原因となります。
また、EV(電気自動車)やHEV(ハイブリッドカー)、PHEV(プラグインハイブリッドカー)など大容量バッテリーを搭載した自動車の増加に伴い、リチウムイオンバッテリーの発熱・発火の原因となる部品・部材の金属コンタミへの注意も重要度が増しています。
こうした部品製造後の洗浄徹底はもちろん、構成部品ごとにコンタミが残留していないか、国際工業規格に適った測定・解析による清浄度管理が求められます。

清浄度検査の国際工業規格ISO16232/VDA19とは

自動車部品の清浄度測定に関する規格として、2002年にドイツ自動車工業会規格「VDA19」が発行され、2007年には国際規格として「ISO16232」が発行されました。これにより、品質要求に準拠した異物粒子の計測・組成分析が必須となりました。
自動車のエンジン・ターボチャージャ・トランスミッションなどの重要部品であるタンク・ポンプ・バルブ・パイプ・導管・ケーシングなどオイルや水に関係する流体部品をはじめ、リチウムイオン電池や電子・電装部品などの清浄度の管理が規定されています。これらの自動車部品の製造プロセスで発生した粒子状汚染物質(コンタミ)を洗浄工程で可能な限り取り除きます。そこで、ISO16232/VDA19で定められた清浄度の要求に適っているかを測定・解析する必要があります。
なお、自動車に多く使われるオイルにも液体中のコンタミ測定に関する国際工業規格があり、試料1mlあたりの粒子をカウント(累積)し、流体中の汚染物質分布状況を要約する汚染度コードがISO4406で定められています。

コンタミの測定・解析方法

コンタミの測定・解析にはさまざまな方法がありますが、自動車業界においては、コンタミの標準分析として下記の2種類がISO16232/VDA19によって規定されています。

重量法(重量測定)
重さで測定するため、比較的手軽な測定方法とされていますが、重量の差異に関する情報のみで解析します。
粒子状汚染物質1つ1つの大きさや粒度分布、金属や繊維といった微細粒子の性質までは調べることができないため、コンタミの原因究明や再発防止に役立つ情報を得ることができません。
光散乱法(光散乱式分析)
光学顕微鏡で測定・解析します。コンタミの有無や量だけでなく、個々の粒子大きさ、粒度分布、粒子の性質(金属・繊維など)の判断が可能です。
微細粒子の混入が重要保安部品の品質・性能・安全性に大きく影響する場合がある自動車製造の分野では、この光散乱法による顕微鏡を用いたコンタミ測定が主流となっています。

光散乱法によるコンタミ抽出・測定・解析の流れ

自動車部品におけるコンタミ解析では、エンジンのように複雑かつ重要な部品で機構されている場合、組立後の検査は不可能です。そのため、構成パーツそれぞれに対し、下記の方法で解析を進めていきます。

  1. 部品(製品)を「圧力リンス」などの方法で洗浄し、異物(粒子)を抽出
  2. リンスした液体をメンブレンフィルタにかけ、異物をろ過
  3. ろ過後のメンブレンフィルタを試料として顕微鏡で解析
部品(製品)を「圧力リンス」などの方法で洗浄し、異物(粒子)を抽出
リンスした液体をメンブレンフィルタにかけ、異物をろ過

顕微鏡を用いた測定・解析では、粒子の数(コンタミカウント)・サイズ・異物の分類(金属・繊維など)を測定値にバラツキのないよう、同一の設定で測定・解析・比較検証し、それが自動車部品の危険因子であるかなど詳細を調査していきます。
ISO16232/VDA19では、異物抽出方法から解析が必要な粒子の最小サイズや、自動測定の場合はその画素数や異物の抽出方法までさまざまな基準が定められているほか、レポートも規格に沿ったフォーマットで作成する必要があります。

コンタミ測定・解析の課題解決

一般的な顕微鏡によるコンタミの測定・解析では、国際規格の要求を満たすにあたり、人の習熟度や測定結果の定量化などさまざまな課題が伴います。また、顕微鏡による自動測定の場合も、レンズ・カメラ(倍率・解像度)・照明の種類(明視野・暗視野・透過照明)・画像処理ソフトでの2値化条件(しきい値)の設定などにおいて、工業規格で定められた条件に対応する必要があります。
こうした従来の課題は、最新の4Kデジタルマイクロスコープを用いることで解決することができます。
コンタミ測定・解析においては、従来の顕微鏡では得られなかった微細粒子・パーティクルの詳細情報を素早く取得可能です。また、ISO16232/VDA19に対応した測定・解析からレポート作成までの時間も短縮・効率化できます。さらに、規格への適合や品質保証のための清浄度検査のみならず、データを保存・共有することで異物混入の原因究明・傾向把握・製造工程の改善による再発防止にも役立てることができます。

ISO16232/VDA対応のコンタミ測定・解析を高精度かつ簡単に

従来の課題:顕微鏡の場合

一般的な顕微鏡の場合、工業規格で定められた通りのコンタミ測定や詳細観察を実施するには、煩雑な設定により時間がかかることに加え、正確な解析結果を得るには習熟度が要求されました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら

自動車業界向けの清浄度規格ISO16232/VDA19に対応したコンタミ測定が可能となりました。4Kデジタルマイクロスコープで撮影した高解像度かつ被写深度の深い画像を解析することで、凹凸のあるワークにおいても高精度な測定が可能です。

また、「詳細解析モード」では、メンブレンフィルタ全体の画像から、任意のコンタミを選択するだけで、自動でステージ移動し、そのまま高倍率での詳細観察が可能です。これにより従来の顕微鏡に比べ、異物同定が簡単かつ短時間で実現します。さらに、深度合成や3D高さ測定を併用することで、凹凸形状であっても詳細観察・数値化が可能です。

ISO16232/VDA19に対応したコンタミ測定(メンブレンフィルタ×50)
ISO16232/VDA19に対応したコンタミ測定(メンブレンフィルタ×50)
詳細撮影モードで任意の箇所の詳細観察が可能
詳細撮影モードで任意の箇所の詳細観察が可能

条件の自動再現・自動キャリブレーションによる時短化・定量化

従来の課題:顕微鏡の場合

一般的な顕微鏡の場合、測定のたびに照明条件やシャッタースピード(露光時間)、ホワイトバランスなど撮影条件の完全再現が不可能でした。また、コンタミサイズによって正しいレンズの選択と取り換えが必要であるため、作業の煩雑化やレンズの選択ミスによる間違った値の取得が課題となっていました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」なら

過去の撮影条件を保存・再現します。撮影画像のアルバムから選択するだけでその撮影設定(レンズ倍率・シャッタースピード・ゲイン・ライトシフト・エッジ強調・ホワイトバランス・調光条件など)を呼び出し、自動で再現します。作業工数を大幅に削減すると同時に、人が変わってもワークをまったく同じ条件で観察できるため、安定した解析結果を得ることができます。

アルバムから画像を選ぶだけで、過去の撮影条件を自動で再現可能。
アルバムから画像を選ぶだけで、過去の撮影条件を自動で再現可能。
再現前
再現前
再現後
再現後

高分解能HRレンズと電動レボルバによりレンズを取り換えることなく20~6000倍の「シームレスズーム」が可能なため、素早くコンタミサイズに合った倍率にズームできます。また、接続されているレンズを自動認識し、撮影画像とともに倍率データも管理することができます。
さらに、「1PUSHキャリブレーション」により、ワンクリックするだけで自動的に必要な補正値が読み込まれます。コンタミ抽出(2値化)時の条件を再現可能なため、測定数値のズレを防止することができます。

高分解能HRレンズ 電動レボルバ
  1. A.高分解能HRレンズ
  2. B.電動レボルバ
ワンクリックで自動キャリブレーションが可能
ワンクリックで自動キャリブレーションが可能

コンタミ測定・解析の新常識

高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いることで、従来の顕微鏡に比べ圧倒的な効率化や、人による誤差の解消と正確なコンタミ測定・解析が実現します。

また、最先端の光学・画像処理・自動化技術で実現した高精細4K画像により、簡単な操作で微細粒子・パーティクルの詳細を鮮明に観察することができるため、より高度な解析結果を素早く得ることができます。
撮影・測定したデータは、「レポート機能」により設定した定型フォームで簡単にレポート化できるほか、社内サーバなどでデータ共有することで、工業規格への適合や品質保証のみならず、コンタミ発生の原因究明や工程改善などにも活用することができます。

他にも最先端の機能を数多く搭載した 「VHXシリーズ」は、製品の清浄度による品質への信頼性を獲得する強力なパートナーとなります。詳細に関しては、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。