焼結部品は、粉末状の金属やセラミックの粉を金型で成形し、融点より低い温度で焼き固めたものです。金属を溶かす必要がないため、省エネで材料ロスも少なく、二次加工の手間もかからないメリットがあります。ここでは、焼結加工の概要と、焼結部品のデジタルマイクロスコープでの観察・測定事例を紹介します。

焼結部品のデジタルマイクロスコープでの観察・測定

焼結加工のメリット・デメリット

焼結加工は材料を溶かす必要がないため、さまざまな部品の製造に活用されています。

焼結加工のメリット
  • 粉末にできれば、ほとんどの材料が利用可能
  • 二次加工の必要性が低い
  • 材料のロスが少ない
  • 複雑な形状に成形可能
  • 材料の配合が自由
  • 気孔を含むため、軽量化が可能
  • 高融点の材料も加工可能
焼結加工のデメリット
  • 粉末に加工するため、材料費が高い
  • 焼結の際に収縮が発生する
  • 鋳造やプレスに比較し、強度などの機械的性質が劣る

焼結加工の原理

固体粉末の表面は、原子・分子・イオンが結合していないため不安定な状態です。固体粉末を加熱すると、ネックと呼ばれる結合部が形成されます。粉末粒子の表面から原子・分子・イオンがネックへ移動拡散してネックが大きくなり、表面積が減少します。焼結の初期、中期、終期とネックが大きくなり、密度が上昇し焼結品が完成します。

粉末成形体
初期
中期
終期
  1. A:ネック
  2. B:開気孔
  3. C:閉気孔

外気と接続している気孔を開気孔、物体内部に孤立している気孔を閉気孔と呼びます。

焼結加工の流れ

  1. 原料粉の配合を決め、混合機で均一になるよう混ぜ合わせます。
  2. 混合した原料粉を金型に入れ、プレス機で成形します。
  3. 成形品を焼結炉で数時間加熱します。
    融点より低い温度で焼き固めるため、原料粉が溶けることはありません。長時間加熱することで、原料粉が強く結合し、焼結品が完成します。

焼結炉はガスで満たされているため、焼結品の酸化が防止できます。
焼結品は、必要に応じて、精度を高めるための研削・研磨、硬度を高めるための熱処理を行う場合もあります。

原料を粉末にする
原料粉を混合する
成形を行う
焼結を行う
完成品
  1. A:混合機
  2. B:プレス機
  3. C:焼結炉

デジタルマイクロスコープによる焼結部品の観察・測定事例

キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いた焼結部品の観察・測定の最新事例を紹介します。

焼結品(フェライトコア)の粒界の観察
VH-Z100 700x ミックス照明 + 可変照明アタッチメント
粒界密度小(強度が弱い)
VH-Z100 700x ミックス照明 + 可変照明アタッチメント
粒界密度大(強度が強い)
可変照明アタッチメントを使用することで、粒界のサイズ・密度が明確に確認できます。
焼結セラミックのクラック観察
1000x 同軸落射照明 HDR無し
1000x 同軸落射照明+HDR
HDR機能を使用することで、クラックがどこまで伸びているかが確認できます。
焼結品の表面観察
VH-Z20 100x リング照明+可変照明アタッチメント
左:アタッチメント有リ 右:アタッチメント無し
可変照明アタッチメントを使用することで、気孔が明瞭に観察できます。
焼結セラミックの自動面積計測
VHX-E500 1000x 同軸落射照明
従来は、SEMで結晶粒度を目視カウントしていましたが、自動面積計測機能を使用することで、自動カウントが実現できました。
焼結セラミックの気孔の自動面積計測
ZS-200 1000x 同軸落射照明
計測前
ZS-200 1000x 同軸落射照明
自動面積計測画像
同じ設定で自動面積計測できますので、効率化が図れます。
焼結金属焼き入れ後の粒度解析
ZS-200 1500x 同軸落射照明
計測前
ZS-200 1500x 同軸落射照明
自動面積計測(結晶粒度解析)画像
従来は限度見本との比較を行っていたため、評価にバラツキがありました。
自動面積計測機能で粒度解析することで、解析が正確になり大幅な工数削減が実現します。