電線は、電力や電気信号を伝達する金属線の総称です。使用される目的の違いで、電力用電線、通信用電線に分類することができます。ここでは、電線の概要や、電線のデジタルマイクロスコープでの観察・測定事例を紹介します。

電線とケーブルの違い

電線は、電気を通す金属線の総称ですが、構造の違いによって電線とケーブルに分類されます。

電線(絶縁電線)
電気を通す導体の回りを電気を通さない絶縁体で覆ったものです。
ケーブル
複数の電線を束ねて、シース(外皮)で覆ったものです。
  1. A:導体
  2. B:絶縁体
  3. C:シース
  4. D:介材
  5. E:抑え巻きテープ

導体の材質と特徴

電線・ケーブルに使用される導体は、ほぼ銅とアルミニウムが占めています。
導電性だけで考えると、銀や金も優れているものの、価格が高価であるためほとんど利用されていません。

導体の材質とそれぞれの導電率・抵抗率
材料 導電率(%IACS) 抵抗率(10-6Ωm)
Ag(銀) 106.4 0.0162
Cu(銅) 100 0.0172
Au(金) 71.8 0.024
Al(アルミニウム) 61.7 0.0275

銅とアルミニウムの特徴

電線・ケーブルに使用される主な導体である銅とアルミニウムについて、それぞれの特徴は以下のとおりです。

  • 電気伝導率が非常に高く電気を通しやすい
  • 銅は常温、乾燥空気中でほとんど酸化しない
  • 一般的なケーブルに導体として使用されている
アルミニウム
  • 銅よりも密度が低く重量が銅の3分の1と軽いので送電線など、長い距離を施設するのに向いている
  • 酸化によって表面がアルミナ層で覆われ腐食に強い
  • 銅の1/3~1/2程度と価格が安い

日本とアメリカの電線の断面積規定の違い

日本では電線(撚り線)の断面積はJISで規定されています。単位は、SQ(スケア)で断面積(平方ミリメートル)の英語のsquare millimeterが語源です。アメリカのUL規格では、AWG(American Wire Gauge)が使用されています。以下に、AWG(UL)とSQ(JIS)の換算表を紹介します。

AWG(UL)とSQ(JIS)の換算表
ワイヤーゲージ (UL規格) 外径(mm) 断面積 (mm2 SQ対応サイズ (JIS規格)
AWG 4/0 11.68 mm 107.2 mm2 100 SQ
AWG 3/0 10.40 mm 85.03 mm2 80 SQ
AWG 2/0 9.266 mm 67.42 mm2 60 SQ
AWG 1/0 8.254 mm 53.49 mm2 60 SQ
AWG1 7.348 mm 42.41 mm2 38 SQ
AWG2 6.543 mm 33.63 mm2 38 SQ
AWG4 5.189 mm 21.15 mm2 22 SQ
AWG6 4.115 mm 13.30 mm2 14 SQ
AWG8 3.264 mm 8.37 mm2 8 SQ
AWG10 2.588 mm 5.26 mm2 5.5 SQ
AWG12 2.052 mm 3.31 mm2 3.5 SQ
AWG14 1.628 mm 2.08 mm2 2 SQ
AWG16 1.290 mm 1.31 mm2 1.25 SQ
AWG18 1.024 mm 0.823 mm2 0.75 SQ
AWG20 0.8128 mm 0.519 mm2 0.5 SQ
AWG22 0.6426 mm 0.324 mm2 0.3 SQ
AWG24 0.5105 mm 0.205 mm2 0.2 SQ
AWG26 0.4039 mm 0.128 mm2 0.12 SQ
AWG28 0.3200 mm 0.0804 mm2 0.08 SQ
AWG30 0.2540 mm 0.0507 mm2 0.05 SQ

電線の断面積と許容電流

電線の断面積が大きければ大きいほど許容電流は大きくなります。
以下に代表的な銅線の許容電流を紹介します。

単線の許容電流
直径 (mm) 許容電流(A)
1mm 16
1.2mm 19
1.6mm 27
2mm 35
2.6mm 48
3.2mm 62
4mm 81
5mm 107
撚り線の許容電流
断面積 (mm2 許容電流(A)
0.9 17
1.25 19
2 27
3.5 37
5.5 49
8 61
14 88
30 139
50 190
100 298
200 469
400 745
600 930
800 1080
1000 1260

デジタルマイクロスコープによる電線の観察・測定事例

キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いた電線の観察・測定の最新事例を紹介します。

電線の表面観察
VH-Z20 100x リング照明+拡散アタッチメント
拡散アタッチメントでハレーションの無い観察が可能になりました。
ケーブル断面の深度合成
VH-Z20 30x リング照明+HDR
下:通常画像 上:深度合成+ HDR画像
HDR機能でケーブル断面の詳細な観察が可能になりました。
金属電線の表面クラック観察
VHX-E100 100x リング照明
通常画像
VHX-E100 100x リング照明
Optical Shadow Effect Mode画像
Optical Shadow Effect Modeで、表面の微細なクラックが可視化できました。
鋼線の剥がれ観察
VHX-E500 2000x 同軸落射照明
電線の傷観察
VH-Z500 3000x 同軸落射照明
3D深度合成機能で、傷の形状が正確に観察できます。
電線の溶接部の形状測定
ZS-20 100x リング照明
3D計測機能で、溶接の盛り上がりが定量化でき、良否判断が正確にできます。
銅電線の被覆膜厚測定
VHX-E500 500x 同軸落射照明
電線被覆の気泡の定量化
VH-Z500 500x 同軸落射照明 測定前
VH-Z500 500x 同軸落射照明
自動面積計測画像
自動面積計測機能で、各気泡の面積が正確に測定できました。
電線被膜の表面観察
VHX-E500 1000x リング照明
3D深度合成機能で、素材や製造条件の違いによる表面状態の違いが可視化できます。