需要拡大と品種の多様化が進むコネクタには高い品質が求められます。ここでは、コネクタの導通不良・絶縁不良・接触不良をもたらす不具合現象(腐食/酸化・摩耗・異物付着・はんだ不良・ウィスカ・マイグレーション)の発生原因と対策ついて解説します。
また、不良解析・品質検査に欠かせない顕微鏡の課題を解決し、立体形状を持つコネクタの鮮明な観察・3D測定・定量評価を実現した、最新の4Kデジタルマイクロスコープの活用事例を紹介します。

コネクタの導通不良などの不具合原因と観察・測定

コネクタの多様化と品質の重要性

コネクタは昨今のデジタル機器・通信機器の普及により、需要が拡大しました。また、コネクタの種類や用途は多様化しています。
代表的なコネクタとして、コンピュータ周辺機器接続やポータブル機器の充電など幅広く用いられている各種タイプのUSBコネクタなどが挙げられます。また、通信用としてLAN接続などに使用されるRJ-45コネクタや、光ファイバー接続に使用されるLC・SCコネクタ。他に、長年アナログ音声信号に使用されてきたXLR・フォーン・RCAコネクタなどに加え、ディスプレイやテレビモニターへのデジタル映像信号通信で主流となったHDMI・VGAコネクタなどがあります。

コネクタは民生用のみならず、産業用としても汎用・専用コネクタが、幅広い分野で使用されています。そのため、コネクタの欠陥による接触不良や導通不良、絶縁不良は、市場クレームのみならず、プロの現場で業務に支障をきたす可能性があります。
また、重要部品の電子制御化が急増している自動車のワイヤーハーネスなど、専用の電装部品用コネクタに不良や腐食があった場合、事故に繋がる可能性があるため、コネクタ製品には高い品質と信頼性が要求されます。

コネクタの代表的な不具合現象の原因と対策

接触不良や導通不良、絶縁不良などを起こし、コネクタの品質・性能を損ねる代表的なコネクタ不具合と対策を下記に示します。

腐食/酸化
現象:母材に含まれるニッケルや銅などが腐食し、表面に析出
原因:高温・多湿・腐食性ガス
対策:金めっき処理や腐食酸化抑制剤の検討
摩耗
現象:振動や衝撃で、接点部分が摺動し摩耗
原因:振動・衝撃・挿抜の頻度が高い
対策:接触圧を高く、または、接触面積を広くする
異物付着
現象:異物(ガスや粉塵)が付着し、通電を阻害
原因:コネクタ内へのガスや粉塵の侵入
対策:密閉性・気密性の向上
はんだ不良
現象:はんだ不良による絶縁不良・導通不良
原因:はんだ割れ(クラック)・はんだボール・はんだブリッジなどのはんだ不良
対策:はんだの加熱温度・加熱時間の見直し
ウイスカ
現象:めっきに含まれる錫(すず)がひげ状に結晶化・成長。ショートなど絶縁破壊の要因となる
原因:金属内の応力
対策:金めっき処理などの検討
マイグレーション
現象:絶縁体上を金属成分が移動し、絶縁破壊が発生
原因:高温・多湿
対策:フッ素被膜など防湿コーティングの採用

コネクタの観察・評価における課題と4Kデジタルマイクロスコープの活用事例

近年、小型化・高機能化・多様化するコネクタは、製品によって普及・衰退のスピードが速いことも特徴です。たとえば、ヒットした製品が採用または廃止したコネクタの種類によって、需要が急激に変わることがあります。そのため、製品の研究開発はもちろん、安定した製造工程の確立や、品質管理・品質保証における高い精度と対応速度が重要になることが少なくありません。

コネクタの検査や不良解析には、一般的に顕微鏡が使用されます。しかし、従来の顕微鏡は、下記のような課題がありました。

  • コネクタは立体的であるため、一部にしかピントが合わない。
  • 金属部分の反射により、観察が困難な場合がある。
  • 実体顕微鏡では、小さな部位や細かな傷も目視での平面的な観察となるため、不良原因の特定が困難。
  • 実体顕微鏡などでは、不良箇所や小型部品の測定による定量評価ができないため、別途測定機を用いることで、作業工程・時間が増える。

キーエンスでは、デジタルマイクロスコープの分野において、20年以上に渡り現場の声を活かしながら商品の改良・改善を重ねてきました。
そして、従来の課題を解決し「いまの現場が求める」高い性能と新しい機能、操作の簡易性と作業の時短を実現したのが、高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
ここでは、「VHXシリーズ」を活用したコネクタの観察・解析・測定・評価の最新事例を紹介します。

産業用コネクタ端子の高解像度観察

従来の顕微鏡では被写界深度の限界により立体物の一部にしかピントが合いませんでした。同時に、解像度の不足により微細な欠陥の解析ができないことがありました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、4K画質に対応する高分解能と、一般的な顕微鏡に比べ約20倍以上深い被写界深度を実現した「HRレンズ」、高解像度・低ノイズな「4K CMOS」を搭載しました。
立体的かつ複雑な形状を持つコネクタ端子であっても、全体にピントが合った高解像度な4K画像が得られます。これまで観えなかった細部まで鮮明な画像で観察・解析することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのコネクタ端子の高解像度観察
産業用コネクタの端子の観察・評価
産業用コネクタの端子の観察・評価
圧着端子の不具合解析
圧着端子の不具合解析

コネクタピンの形状評価

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、複数のコネクタピンによる立体的な対象物であっても、ピント位置が異なる画像を合成し、全体にフルフォーカスした画像を瞬時に得ることができます。
また、「3D表示」にすることで、立体的なコネクタピンの形状をさまざまな角度から自由に観察することができます。さらに、高精度に測定した高さ情報を色分け表示することで3D形状の可視化や、指定した箇所のプロファイル測定が簡単に実現します。

「VHXシリーズ」であれば、拡大観察から3D測定によるピン形状の定量評価、テンプレートと画像・測定値を用いたレポートの自動作成まで、一連の作業がマイクロスコープ1台で素早く完結します。これにより、従来の検査工程を合理化し、作業時間を大幅に短縮します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのコネクタピンの3D表示・測定
コネクタピンの3D表示
コネクタピンの3D表示
コネクタピンのプロファイル測定
コネクタピンのプロファイル測定

奥行きのあるコネクタや端子の観察

産業用コネクタでは、奥行きのあるハウジングやシールドなどの形状により、コネクタピンや端子が奥まっている場合があります。しかし、従来の顕微鏡では、対象物の一部にしかピントが合わないため、全体像で観察することができませんでした。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、深い被写界深度のレンズに加え、「ライブ深度合成」により奥行きのある立体物であっても全体にフルフォーカスした画像を簡単に得ることができます。観察の作業効率を向上すると同時に、従来の顕微鏡を使った部位ごとの観察における見逃しを防止することができます。
また、「フリーアングル観察システム」を使用することで、ステージ上の対象物はそのままに、自由な角度からの傾斜観察が可能になりました。深い奥行きのあるコネクタであっても、最適なアングルから素早く観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での深度合成によるコネクタ・端子観察
通常(傾斜観察)
通常(傾斜観察)
深度合成(傾斜観察)
深度合成(傾斜観察)
通常
通常
深度合成
深度合成

めっき処理された圧着端子・コネクタピンの観察

コネクタピンや端子は、腐食や酸化、ウィスカの発生による導通不良や絶縁不良を防止するため、金めっきが施される場合があります。しかし、観察・評価においては、めっき部分の光沢は反射によるハレーションが起こりやすく、表面状態を正確に観察・評価できないことがありました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「ハレーション除去」「リング除去」機能を搭載。反射率の高い多少物であっても、めっき処理されたコネクタピンの表面状態や、圧着端子の芯線かしめの状態を鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのめっき部分観察
上:通常 / 下:ハレーション除去・リング除去
上:通常 / 下:ハレーション除去・リング除去
左:通常 / 右:ハレーション除去・リング除去(×200)
左:通常 / 右:ハレーション除去・リング除去(×200)

コネクタピンの樹脂埋め断面サンプルの評価

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「超高速画像連結」により、最大50000×50000ピクセルの高解像度・広範囲撮影が可能です。画像連結ボタンを押すだけの簡単操作で、高倍率画像を自動的にズレなく高速で繋ぎ合わせていきます。

樹脂埋め後の研磨が不十分なことで表面に凹凸のある断面サンプルであっても、深度合成により全体にフルフォーカスした鳥瞰図が得られます。これにより、全体像を把握しながら観察箇所を見失うことなく、細部を高解像度・高倍率の画像で観察・評価することが可能です。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのコネクタピン断面観察
コネクタピンはんだ接合部断面の連結画像
コネクタピンはんだ接合部断面の連結画像

めっき部の打痕観察

コネクタは、金属や樹脂などさまざまな材料で構成されています。観察箇所にめっき処理した部分や銅箔テープなど反射率の高い部位を含む場合、照明条件出しが難しく、ハレーションにより光沢部分の打痕などの欠陥を観察することができませんでした。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ボタンを押すだけで全方位の照明による複数の撮影データを自動取得する「マルチライティング」を搭載しています。マルチライティングの画像の中から、観察に最適な画像を選択することで、作業効率と観察の精度を大幅に向上します。これまで照明条件が合いにくく観えにくかった打痕も簡単に観察することができます。
また、観察画像の選択後であっても、照明条件の異なる画像は自動保存されているため、すぐに必要な照明条件の画像を呼び出すことができます。それにより、異なる観点での観察が必要になった場合も、再びサンプルをステージに置いて各種設定を再現する必要がありません。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのめっき部の打痕観察
左:マルチライティング画像 / 右:通常
左:マルチライティング画像 / 右:通常

コネクタ電極のはんだ不良の測定・定量評価

コネクタ電極のはんだ不良(ピットやクラックなど)は導通不良の原因となるほか、欠陥部分の抵抗値が上がることでジュール熱による発熱・発火の原因にもなります。従来の顕微鏡は、はんだの光沢により不良箇所の評価が定量化できないといった課題がありました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、「ハレーション除去」「リング除去」機能によりハレーションを抑えた鮮明な画像で不良箇所を観察することができます。また、観察画像から高精度な3D形状測定や、任意の箇所のプロファイル測定が可能です。これにより、不良箇所の測定・評価を定量化できると同時に、作業効率の向上が実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での電極はんだ不良のプロファイル測定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での電極はんだ不良のプロファイル測定

コネクタの立体形状の観察・測定・評価に適したマイクロスコープ

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」と、従来の光学式顕微鏡の大きな違いは、コネクタやその構成部品、内部構造といった「立体形状の鮮明な観察・高精度な測定」を簡単かつスピーディに実施できるところにあります。
現場の声を活かしたインターフェースの操作性と作業効率の高さも大きな特徴で、凹凸形状の観察・解析をするにあたり、走査電子顕微鏡(SEM)のように前準備に時間と手間を取られることもありません。

ここで紹介した以外にも多くの機能を搭載した「VHXシリーズ」。商品に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。