第5世代移動通信システム(5G)とそれに対応する製品の普及は、半導体デバイスの微細化・高集積化がより進むきっかけとなりました。こうした背景からIC(集積回路)やLSI(大規模集積回路)、各種電子部品の電気検査や解析に対するニーズが高まり、検査精度の向上も求められるようになりました。
ここでは、半導体デバイスの電気検査に用いられる検査器具「プローブカード」と「コンタクトプローブ」の基礎や、高い検査精度の維持に有効な4K画像での検査器具の観察、非接触3次元寸法測定などの最新事例を紹介します。

プローブカード/コンタクトプローブの観察・測定

プローブカードとは

プローブカードとは、LSI製造の前工程においてシリコンウェハの検査工程に用いられる検査器具で、円形のプリント回路基板上に精密に組み付けられたプローブピン(プローブ針・プローブニードル)のセットを装備しています。
ウェハ上に多数形成されたLSIチップそれぞれに対し、基板に配置した複数のプローブピン先端を同時に接触させて電気検査を行います。オープン(断線)やショート(短絡)を判別できるほか、電流や高周波測定などにも使用されます。一般に、ウェハ検査装置のプローバにプローブカードを搭載し、ステージに置かれたウェハのチップに対して上から接触させて検査します。

プローブカードの主な種類

プローブカードにはプローブの配列やそれらの固定方法など、構造が異なるものがあります。代表的な2種類のプローブカードとそれらの特徴を以下に示します。

垂直(アドバンスト)型プローブカード

プローブを垂直に固定したブロックを基板に取り付けたプローブカードです。格子状や多数個測定用などプローブ配列の自由度が高く、プローブを1本ずつ交換できるためメンテナンスが容易です。打痕が小さくて済むうえ、はんだにダメージを与えません。ただし、比較的コストが高く、ウェハのアルミパッド(アルミ製の電極パッド:Alパッド)にはあまり向きません。

カンチレバー型プローブカード

基板にタングステンなどでできた針を直接固定したプローブカードです。
垂直型と比べて低コストで、より狭いピッチでプローブを配列することができ、アルミパッドにも対応します。ただし、垂直型と比べるとピンレイアウトに制約があり、打痕は大きくなります。また、高さ調整など定期的な修理・調整が必要でメンテナンスに手間や時間を要します。

コンタクトプローブとは

コンタクトプローブとは、各種電子部品の電極に接触させて導通検査を行うための検査器具のことです。さまざまな電子部品の検査用途で幅広く活用されています。検査対象となる電子部品は、半導体・液晶パネル・生基板・実装基板・コネクタ・コンデンサ・センサ・電池など、多岐にわたります。
検査内容としては、導通確認のほか、回路中での部品の振る舞いの検査(インサーキットテスト)用のデータ収集や機能の検査(ファンクションテスト)での動作確認などが挙げられます。具体例として、オープン(断線)やショート(短絡)、高周波測定やインピーダンス(抵抗値)のチェック、回路における部品のパラメータチェックなどを行います。

コンタクトプローブの構造

コンタクトプローブは、筒状のバレルの中に検査対象と接触するプランジャーやスプリング(ばね)で構成されています。バレル内部のばね圧を最適化することで、バレル内部の接続抵抗値を安定させることができます。一般に、コンタクトプローブの部品には、腐食防止や摺動部の接触抵抗の低下を目的に金めっきが施されています。
検査対象物に合わせて設計した樹脂製の治具に必要な本数のコンタクトプローブを圧入し、検査対象にプランジャーの先端を接触させて使用します。摩耗したプローブのみを治具から取り外し、交換するだけで再び検査に使用することができるため、省メンテナンス性に優れています。

A
コンタクトプローブ
B
バレル
C
ばね
D
プランジャー
E
治具
F
検査対象

コンタクトプローブのプランジャー先端形状の種類

検査対象となる電極や端子などの形状によって接触する先端形状が異なります。最適な先端形状のプランジャーを用いることにより、検査時による繊細な対象物へのダメージを回避することも可能です。代表的な形状の種類と用途を以下に示します。

アール

フレキシブル基板(FPC・フレキ基板)など、傷つきやすい電極へのダメージを回避して検査したい場合に使います。

ニードル

主にプリント基板表面のランド(パッド)などの検査に使います。

フラット/逆円錐

先端が平らな「フラット」は電極を傷つけたくないときや、検査対象に面で接触する必要がある場合に使います。
先端に凹んだ部分を持つ「逆円錐」は端子の凸形状を受ける場合などに使います。

三角錐

プリント基板のスルーホールなど、凹んだ形状を持つ箇所の検査に使います。

クラウン

実装部品のリード部分を受けるときや、凸形状の箇所に対して多点で接触して検査する場合などに使います。

プローブカード/コンタクトプローブの寿命と観察・測定の重要性

プローブカードの寿命

プローブカードは検査時、その鋭く微細な形状を持つ多数のプローブピンが、ウェハ上に形成されたチップの端子にそれぞれ接触します。また、数cm2の小さなプローブカードに数千本のプローブピンが装備される場合もあり、プローブピンどうしは20〜30μm程度の狭いピッチで配列されます。接触式の検査器具としては非常に精緻であるプローブカードの寿命は、使用年数ではなくプローブピンがウェハ上のチップと接触する「タッチダウン」の回数で決まります。一般的に、数十万~数百万回のタッチダウンでプローブカードは寿命に達するといわれます。

日々大量のウェハを使って膨大な数量のチップを生産するうえで、プローブピンの状態を把握することは製品の品質維持において大変重要といえます。プローブピンに摩耗や異常がある場合、誤った検査データの取得により、本来良品であるチップを誤判定し、歩留まり率が低下してしまう可能性もあります。

コンタクトプローブの寿命

複数の部品と微細かつ高精度な先端形状から成るコンタクトプローブの電気的な寿命は、検査において許容される抵抗値や検査環境・条件によって異なり、リード線材に加わる熱にも注意が必用です。機械的な耐久回数は多くの場合、標準的なコンタクトプローブで100万回程度といわれています。

しかし、耐久回数は検査の条件によって異なります。コンタクトプローブの寿命を判断するうえで重要な項目の1つとなるのが、検査対象に接触するプランジャー先端の形状の把握です。先端が摩耗すると検査で抵抗値のバラつきや誤判定が生じるため、品質管理や歩留まり率に影響する可能性があります。

プローブカード/コンタクトプローブの観察・測定の重要性と課題

プローブカードやコンタクトプローブの共通点として微細形状の接触子を持つことが挙げられます。摩耗などによる器具の寿命を判断して、検査エラーでの不良品流出や歩留まり率低下を未然に防ぐには、定期的な拡大観察や測定が重要となります。

しかし、これらの検査器具の接触部は立体的かつ微細な形状を持つため、一般的な顕微鏡での拡大観察では、対象物の一部にしかピントが合わず、全体像を鮮明に観察することが困難でした。
また、接触式の測定器の場合、検査対象に対して測定器側のプローブが大きいため、狭いピッチで配列されているプローブピンでは同時に複数の針に触れてしまったり、測定圧によってピンの形状やコンタクトプローブの高さなど、微細な3次元形状や寸法を正確に測定することができないなどの問題があります。さらに、従来の画像処理を使う場合も、このような微細形状を持つ対象物全体にピントを合わすことができず、寸法測定は困難でした。

次項では、これらの課題・問題を解決する4Kデジタルマイクロスコープを使った観察や測定の最新事例を紹介します。

プローブカード/コンタクトプローブの摩耗観察や寸法・形状測定の最新事例

プローブカードのプローブピンやコンタクトプローブのプランジャー先端の微細な形状は、電気検査の精度に大きく影響するため摩耗などのダメージを観察・測定して状態を把握することが重要です。しかし、観察や測定には多くの課題がありました。

キーエンスの高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと4K CMOSを搭載し、高解像度4K画像で検査器具の微細な形状を高精細に捉えることができます。また、観察画像を使ってそのまま2次元・3次元測定を高精度に行うことが可能です。検査器具の観察・測定の課題解決と高度化、効率向上を同時に実現する「VHXシリーズ」の活用事例を紹介します。

プローブカードのピンの接触観察・傾斜観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、一般的な光学顕微鏡の20倍以上の被写界深度と高解像度の両立を実現しました。高精細な4K画像を自由なアングルから取得することができます。
「フリーアングル観察システム」と「高精度X・Y・Z 電動ステージ」を活用することで、視野・回転軸・傾斜軸の3つの軸を簡単に合わせながら、自由な角度からの傾斜観察が可能です。
また、手持ち観察でも高解像度画像が取得可能なため、ステージ上では状況再現が難しい場合でも鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプローブピンの接触観察
リング照明(×20)
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプローブピンの傾斜観察
リング照明(×50)

プローブカードのピンの外径・高さ測定

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、鮮明な観察画像からそのまま非接触での高精度な2次元・3次元寸法測定が可能です。

プローブピン先端の摩耗を把握するうえで必要となる外径測定も、モニタを見ながらマウス操作するだけの簡単な操作で測定値をリアルタイムで得ることができます。2点間距離や角度、平行線、面積なども同様の方法で測定可能です。
また、ピンの高さ情報を取得して3次元寸法測定も実行することができます。さらに、マウス操作で任意の箇所を指定するだけでプロファイル測定を実行でき、狙った箇所の断面における高さの値を簡単に取得することができます。
高倍率観察から非接触寸法測定までシームレスに実施することができ、業務を効率化することができます。測定値や画像を保存して蓄積することで、履歴から摩耗または変形がどのように進行するかなどの傾向も把握しやすくなります。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプローブピンの2次元・3次元寸法測定
リング照明(×300)+2次元寸法測定
リング照明(×500)+3次元寸法測定・プロファイル測定

コンタクトプローブ先端の高倍率観察

コンタクトプローブのプランジャー先端は微細な立体形状を持ちますが、検査対象と接触する箇所であるため、摩耗しやすい部位であるといえます。このような対象物の高倍率観察では、全体にピントが合わなかったり、解像度が低下してしまったりなど要求と条件がトレードオフとなってしまうケースが多くあります。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、深い被写界深度と高解像度の両立を実現。プランジャー先端の高倍率観察においても、全体にフルフォーカスした画像で微細な摩耗や欠けなども鮮明に観察することが可能です。

また、検査器具は金属製であるため、従来は光の乱反射の影響により、照明の条件出しに多くの手間と時間を要しました。一方、「VHXシリーズ」は、ボタンを押すだけで全方位照明での撮像データを自動で取得する「マルチライティング」機能を搭載しています。目的に合った画像を選択するだけで、すぐに観察を始めることができるため、これまで照明の条件出しにかかっていた時間を大幅に短縮することができます。
さらに、過去の画像を選ぶだけでそのときの照明条件を完全再現できるため、複数のプランジャー先端の摩耗を同一条件で観察する際も、スピーディに対応可能です。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプランジャー先端の観察
同軸落射照明(×2000)

コンタクトプローブ先端の3D表示・プロファイル測定

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ピント位置が異なる複数の画像を取得し、それらを瞬時に合成して高精度な3D表示・3次元寸法測定が可能です。表面形状や粗さまでを捉えた3D表示では、対象物をさまざまな角度から自由に観察することができます。
また、マウス操作で任意の箇所を指定するだけの簡単な操作によりプロファイル測定が実行可能です。これにより、任意の箇所の断面形状とその寸法を非破壊・非接触で取得することができます。
これらの機能により、プランジャー先端が微細かつ複雑な形状であっても、凹凸をサブミクロンオーダーで測定し、摩耗の度合いを正確な値で把握することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのプランジャー先端の3D表示・プロファイル測定
同軸落射照明(×500)+3D表示・プロファイル測定

電気検査の精度維持をはじめ、あらゆる業務を効率化する4Kデジタルマイクロスコープ

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」の高い性能と多彩な機能は、微細形状を持つ検査器具の観察・測定はもちろん、プリント基板やクリームはんだ塗布、電子デバイス製造やその実装など、エレクトロニクス分野のあらゆるシーンにおいて研究開発や品質保証の業務を強力にサポートします。

4K高解像度画像での観察から、高精度な2次元・3次元寸法測定、そしてレポートの自動作成までを1台で完結することができ、業務効率を大幅に向上する「VHXシリーズ」。詳細に関しましては、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。