医療機器の多くは人体に直接使用されるため、高レベルな安全性・機能性が要求されます。
ここでは、マイクロスコープで撮影事例の多い、デンタルインプラントの観察事例を紹介します。

デンタルインプラントの観察

インプラントとは

体内に埋め込む機器や材料の総称です。心臓ペースメーカー、人工関節、顎骨に埋め込む人工歯根などもインプラントです。人工歯根は、歯科インプラント(デンタルインプラント)と呼ばれています。

デンタルインプラントの各部名称

  1. A:人工の歯
  2. B:歯肉 
  1. C:あごの骨
  2. D:インプラント
インプラントの構造
  1. A:上部構造(人工歯)
  2. B:アバットメント(連結部分)
  3. C:フィクスチャー(人工歯根)

デンタルインプラントの機能

上部構造(人工歯)
人工の偽歯で、アバットメントにセメントやスクリューで固定されます。
アバットメント(連結部分)
インプラントと義歯の間の部品をアバットメントと呼びます。一般的にアバットメントはスクリューでインプラントに固定されます。
フィクスチャー(人工歯根)
フィクスチャーとは、骨の中に埋める人工の歯根部分のことです。インプラント体とも呼ばれます。

デンタルインプラントの材質と特徴

上部構造(人工歯)、アバットメント(連結部分)、フィクスチャー(人工歯根)でそれぞれ使用される材質とその特徴を下記に示します。

上部構造(人工歯)

ジルコニアセラミック
見た目の美しさや強度などのメリットが最も大きいのが「ジルコニアセラミック」の人工歯です。白色の非金属素材である人工ダイヤモンドのジルコニアに、セラミックを焼きつけた素材となっています。天然歯と並んでも見分けがつかないほどの自然な白さとつやがあり、かつ硬くて強度も高いのが特徴です。
オールセラミック
すべてセラミックのみで作られているのが「オールセラミック」の人工歯です。セラミックの特徴である美しい透明感やつやを持つうえ、経年劣化・変色もないので、天然歯と遜色ない自然な仕上がりが長く続きます。ただし、先程のジルコニアセラミックや、後にあげるメタルボンドといった、フレームで補強されているものと比べると強度が弱いため、調整不足があったり、かみ合わせの力が強い方の場合は、割れたり欠けたりしてしまうこともあります。
メタルボンド
見た目の美しさと耐久性を兼ね備えたのが、金属にセラミックを焼きつけた「メタルボンド」の人工歯です。
経年劣化はジルコニアやオールセラミックと同様にほとんどありませんが、金属フレームを含んでいるので透明感といった見た目の美しさではこの2つに劣ります。また、使用する金属によっては金属アレルギーの反応が出てしまうこともあるので注意が必要です。
フルジルコニアセラミック
耐久性に非常に優れたジルコニアのみで作られた人工歯が「フルジルコニアセラミック」です。人工ダイヤモンドであるジルコニアならではの硬さが特徴で、変色も傷がつくこともなく、長く使うことができます。ただし、耐久性を重視した素材なので、セラミックと比べると透明感や色の仕上がりの自然さに劣ります。

アバットメント(連結部分)

チタン、ジルコニア
上部と下部をつなぐ部分です。
チタンは、強度が強く、錆びにくいため耐久性にも優れた素材です。デメリットとして、歯茎が下がったり、透明性のある上部構造を使用したりする場合、金属部が見えて審美性に欠けます。
ジルコニアは、強度も強く、金属を使用しないため金属アレルギーの心配がありません。また歯に近い白色なため、連結部分も目立たず、現在のインプラントのアバットメント素材の中では、抜群の審美性を誇ります。

フィクスチャー(人工歯根)

チタン
顎の骨に埋め込みます。材質はチタンで、骨と結合する性質を持っています。

デジタルマイクロスコープによるデンタルインプラントの観察事例

キーエンスの4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」を用いたデンタルインプラントの観察画像の最新事例を紹介します。

人口歯の観察
深い被写界深度で歯の全体にピントを合わせることが可能です。
20x リング照明
インプラントのネジ山ピッチ・深さ測定
100x リング照明
人口歯の割れ・欠け観察
HDR機能を使用することで、ハレーションをなくし、表面状態を観察できます。
300x 同軸落射照明 + HDR