食品の品質に関わる外観(気泡・ブルームなど)の観察・解析
食品の食感や風味にバラつきが生じると、リピーターからの信頼を損ねたり、クレームに発展したりする恐れがあります。そのため、食品の製造においては、常に安定した品質(食感や風味)を消費者に提供する必要があります。食品の付加価値における品質は、気泡や成分の結晶などその外観を観察・解析することにより、評価することができます。
ここでは、食品における拡大観察・解析の重要性を解説。また、4Kデジタルマイクロスコープを使い、これまで難易度が高かったパンの気泡観察・自動解析、ブルームの観察など、簡単な操作で定量的な評価を実現する最新の事例を紹介します。
食品の外観観察・解析による品質評価
食品の大量生産においては、検査員が官能検査で食感や風味などを頻繁に評価することは非常に困難です。生産現場では官能検査のスキルを持つ人材の確保が難しいうえ、検査員または検査日によって結果がバラつくことがあり、定量的な評価による品質保持が難しい場合がほとんどで、現実的とはいえません。
そのため、食品の外観を詳しく顕微鏡で観察したり、解析したりすることにより、食感や風味、品質など食品の状態を定量的に評価することが有効です。食品の品質における微視的な外観やその形状、測定値などによる評価の例を以下に挙げます。
パン・ケーキ類
パンやパン生地、ケーキなどの生地の断面内部の気泡の状態を観察・解析することにより、口どけや滑らかさなどを比較・評価することが可能です。
チョコレート類
チョコレート類を冷やしなが凝固状態の外観を観察します。製造工程において、チョコレートの成分が溶け出して冷え固まるときに生じる白い部分「ブルーム*」が生じないかどうかを確認します。
また、チョコレートの表面粗さは、低ければ低いほど口当たりや口どけが良くなります。市場流通時の温度とも関係するため、シーズンによって粗さをコントロールした季節限定の製品もあります。
- Tipsブルームとは
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ブルーム(bloom)とは、ある温度に達したとき食品の表面に溶け出した成分が冷え固まり、結晶として浮き出て花が咲くように積層する現象です。ブルームには、「ファットブルーム」と「シュガーブルーム」の2つがあります。ファットブルームは、カカオバターの油脂分が溶けて、表面に浮き出て固まったものです。一方、シュガーブルームは、砂糖が溶けて、表面に浮き出て固まったものです。
ブルームが多いとチョコレート全体が白っぽく見えてしまい、食品の外観を損ねてしまうばかりか、風味も通常と比べて劣ってしまうため注意が必要です。
麺類(うどん・焼きそば・パスタなど)
麺表面の凹凸を顕微鏡で観察することによって、のど越しの良さや口当たりの滑らかさを確認・評価することができます。
また、麺の断面を観察することで、芯の状態(水置換)を確認することができるため、適切なゆで時間の検証に有効です。さらに、麺が含む気泡を観察・解析することにより、食感やゆで時間の確認のほか、フリーズドライ処理の条件出しなどにも活用することが可能です。
冷凍食品(肉料理・揚げ物など)
ハンバーグやコロッケ、チキンカツなどの冷凍食品においては、肉のつなぎ目の確認や生地と衣の結着面の確認、冷解凍による経時変化、氷結晶の確認などを顕微鏡での観察で行い、評価します。
また、揚げ物の衣のサクサクした食感は、表面凹凸の3D形状を数値化して評価することも可能です。
常温レトルト食品(肉料理)
煮たり焼いたりした肉の繊維の観察により、やわらかさを評価することができます。また、原材料の含有比率などの違いによって生じる組織の形状や表面の粗さの違いを確認し、食感を評価することも可能です。
ハム・ソーセージ
肉の組織観察で冷凍後/冷凍前の変化を観察したり、原料や含有物の割合を解析して数値化したりすることによって食感の変化を評価する場合があります。
豆腐、豆乳など
断面での気泡の観察・解析(空隙率)によって加工品質を評価します。また、タンパク質を解析することにより、滑らかさの評価が可能です。
アルコール飲料・酒
ビールの泡の形状を測定して数値化することにより、のど越しや口当たりを評価することができます。
日本酒メーカーでは、酒米の芯を可視化・数値化し、大吟醸の製造に適した米の品質とそれを削る量を見極めるといったケースもあります。
このように、食品は外観の観察や解析によってその食感や風味などの品質を評価することができます。
次項では、4Kデジタルマイクロスコープを活用して食品の観察・解析を高度化・効率化する事例を紹介します。
食品の食感・品質の評価における4Kデジタルマイクロスコープでの観察・解析事例
食品の加工では、さまざまな材料が使われているため光の反射率・吸収率が異なったり、その形状も立体的で複雑であったりと多種多様です。そのため、観察における条件出しやピント合わせが難しく、多くの手間と時間を要することが課題でした。また、目視による解析では、人による値のバラつきが定量的な評価において問題となっていました。
キーエンスは、顕微鏡を使った拡大観察や解析における諸課題を解決し、高度化と効率化を実現する次世代のマイクロスコープを開発しました。それが、超高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。
ここでは、パン生地の気泡やチョコレートのブルームを例に食品における観察・解析の事例を紹介します。
パン生地の気泡の観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、光学顕微鏡と比べて20倍以上深い被写界深度と高解像度の両立を実現。4K CMOSと多彩な機能を簡単な操作で使える独自の観察システムにより、高度な観察をスピーディに実行することができます。
「VHXシリーズ」が実現した深い被写界深度により、パン生地の気泡のように立体的な対象物であっても、全体にピントがあった鮮明な4K画像での観察が可能です。
また、ボタンを押すだけで全方向からの照明で撮像した複数の画像データを自動的に取得する「マルチライティング」機能では、目的に合った画像を選択するだけで、すぐに観察することが可能です。これまで条件出しにかかっていた手間と時間を大幅にカットすることができます。
さらに、過去に撮像した画像を選択するだけで、そのときの条件を完全再現することができるため、対象物の個体・観察日・観察者が異なっていても同一条件での観察による比較・評価が可能です。
パン生地の気泡の自動解析
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、取得した高解像度な4K画像での観察から、範囲を選択するだけで、高精度な自動解析をシームレスに実行することができます。
「自動面積計測・カウント」機能を活用することにより、任意のしきい値で画像を2値化。気泡の正確なカウントや気泡の面積・周囲長・最大径・最小径のほか、選択範囲内の気泡の面積の平均・標準偏差・最大値・最小値・面積率など、詳細な数値を自動的に計測・算出して一覧表示することができます。これにより、解析結果を定量化し、評価のバラつきが解消します。
また、PCを使用しなくても「VHXシリーズ」にExcelを直接インストールして利用することが可能です。あらかじめテンプレートを用意することで、画像と必要な数値を任意のレイアウトに出力し、レポートを自動作成することができます。
「VHXシリーズ」であればこれらの多彩な機能により、観察における照明の条件出しからピント合わせ、解析、レポート作成まで一連の業務を1台で簡単かつスピーディに完結することができます。
ブルーム(チョコレート)の観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ブルームの高倍率観察においても鮮明な4K画像を取得することができます。
食品表面の正常な部分(背景)とブルーム(観察対象)のコントラストが低い場合、観察が難しいことがあります。「VHXシリーズ」であれば、シャッタースピードを変えた複数の画像から高階調画像を取得する「HDR(High
Dynamic
Range)」機能により、高いコントラストでの観察が可能です。
また、従来は立体的な形状を持つチョコレートに生じたブルームを高倍率で観察する際、対象物の一部にしかピントが合わず全体像で観察することが困難でした。「VHXシリーズ」では、ピント位置が異なる複数の画像を合成する「深度合成」機能を搭載。これにより、対象物の高低差が大きい場合でも視野全域にフルフォーカスした画像を取得し、全体像を鮮明に観察することができます。
こうした撮像・画像処理機能の充実により、従来は難易度が高かったブルームの高倍率観察も簡単かつスピーディに鮮明な4K画像を取得して実行可能です。
食品の食感・風味などの外観による評価を効率化する4Kデジタルマイクロスコープ
食品の観察・解析は難易度が高いことが多く、従来はその難易度に比例して、多くの手間と時間がかかっていました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、その高い性能と機能を簡単な操作で活用できるため、従来は難しかった鮮明な画像での観察や正確な自動解析を1台でスピーディに行うことができます。
また、観察の条件出しからピント合わせ、解析、レポートの作成まで一連の業務に自動化の技術を活用することが可能なため、工数を大幅に削減することが可能です。
「VHXシリーズ」は、ここで紹介した以外にも多彩な機能を持ち、食品業界においては、エマルションや結晶、微生物の観察・解析など、幅広く活用することができます。
「VHXシリーズ」の詳細に関しては、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。