食品や医薬品やそれらの包装における異物混入は、市場において大きな問題となります。品質保証の観点から、スピーディな分析・解析による異物の同定や原因究明、再発防止が要求されます。
ここでは、異物分析の手法や従来の顕微鏡的観察における課題、そして従来課題を解決し、より高度で素早い異物解析を実現する、最新の4Kデジタルマイクロスコープの活用事例を紹介します。

異物分析の手法と検査における観察・解析

異物混入トラブルと加速する対応スピード

消費者によってSNSで瞬時に情報が拡散する昨今において、食品や医薬品などへの異物混入は、重要な問題として浮き彫りになりました。それに伴い、食品・医薬品の安全性に対する消費者の意識や関心は、より高まりをみせるようになりました。

また、食品では、学校や病院などで多くの人に支給される給食において、特にシビアな安全性と品質保証が要求されます。トラブル発生時には、責任の所在の明確化と分析による発生原因の究明、再発防止策を速やかに実施する必要があります。

数多く存在する分析受託会社に分析依頼するケースは少なくありませんが、異物混入のトラブルの場合、特に分析のスピードが問われるため、食品・医薬品業界では、自社で解析の設備・体制を持つ企業も増加傾向にあります。

異物分析の手法と従来の課題

混入した異物は、製品そのものと成分が異なる場合が多いため、異物分析では「成分分析」が行われることが一般的です。しかし、たとえば、たんぱく質を含む製品に、虫が混入してしまった場合、成分分析のみでは異物として特定・同定できないことがあります。
そのため、成分分析と同様に重要となるのが、顕微鏡を使った「外観検査」による異物の観察・解析です。つまり、異物分析の精度を確保するには、成分分析装置のほか、高精度に顕微鏡的な外観を観察可能な光学式顕微鏡の併用が求められます。

しかし、従来の光学式顕微鏡による異物の観察・解析では、たとえば下記のような課題による見落としのリスクがありました。

  • 異物や製品が立体的であるため一部にしかピントが合わない。
  • 光沢のある金属やプラスチック製の包装フィルムなどに混入した異物は、光の反射により観察が困難。

異物分析の正確さとスピードを実現するマイクロスコープの活用事例

キーエンスでは、20年以上に渡り、常に現場の声を活かしながらデジタルマイクロスコープの改善・改良を重ねてきました。そして、ついに実現したのが、高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」です。高分解能HRレンズや4K CMOS、独自の観察システムと高度な画像処理により、簡単な操作で高精細4K画像による微細形状の観察はもちろん、高精度な2D・3D測定なども可能としました。従来の光学式顕微鏡のさまざまな課題を解決するだけでなく、より高度な解析・評価を簡単かつスピーディに実現します。
ここでは、「VHXシリーズ」を使った異物分析の活用事例を紹介します。

立体的な異物の観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、従来の一般的な顕微鏡に比べ約20倍以上深い被写界深度を実現しました。また、「ライブ深度合成」機能により、立体的な対象物であっても全体にフルフォーカスした高精細な4K画像を素早く得ることができます。これにより、異物の形状を問わず観察の正確性と作業の効率化を実現します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での深度合成による異物観察
通常
通常
深度合成
深度合成

多層フィルム内に混入した異物の観察

食品・医薬品の包装に用いられる多層フィルムに混入した異物を観察します。従来は、異物により膨らんだ箇所がリング状に反射することで、異物の形状を把握することができませんでした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、ボタンを押すだけでリング照明の照射方向が異なる複数の画像を瞬時に取得する「リング除去」機能により、リング状の反射を除去することができます。これにより、フィルム表面の反射の影響を受けず、異物の形状をクリアに観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での多層フィルム内の異物観察
従来
従来
リング除去
リング除去

虫の観察

異物の中でも虫は特に立体的で、色のコントラストが低い場合が多くあります。
従来の顕微鏡では、照明条件の調整に時間がかかり、調整しても最適な条件が見つけにくく観察が難しいといった問題がありました。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、ボタンを押すだけで全方向からの異なる照明による複数の画像を素早く取得し、その中から観察に適した画像を選択するだけの「マルチライティング」機能を搭載。これまで照明の条件出しにかかっていた手間と時間を省き、虫の立体的な形状を高精細な画像で素早く観察・同定することができます。
また、観察画像の選択・保存後であっても、異なる照明による画像データが自動的に保存されているため、異なる観点での観察が必要になった場合も、すぐに画像を呼び出すことができます。これまで、再び試料をステージにセットし、照明やピントなどを再現していた手間と時間も省くことができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での異物(虫)の観察
通常
通常
マルチライティング
マルチライティング

繊維の低倍率・高倍率観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと電動レボルバにより、倍率に応じて自動的にレンズを切り換える「シームレスズーム」を実現しました。 レンズ交換の手間と時間を省き、20~6000倍まで直感的な操作での拡大観察を可能としました。
最先端の光学系と4K CMOSにより、高倍率であっても高解像度な4K画像で、繊維の構造や異物を鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での繊維の低倍率・高倍率観察
繊維の低倍率観察(×100)
繊維の低倍率観察(×100)
繊維の高倍率観察(×500)
繊維の高倍率観察(×500)

毛髪のキューティクル観察

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高分解能HRレンズと電動レボルバにより、20~6000倍まで倍率に応じて自動的にレンズを切り換える「シームレスズーム」により、直感的な操作でスムーズな高倍率観察が可能です。
高倍率であっても高解像度4K画像が得られるため、たとえば、毛のサンプルであればキューティクルの形状まで鮮明に観察することができます。それにより、混入した毛が人の毛髪なのか、または、動物の毛や衣類の糸くずなのかを素早く同定することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での毛髪のキューティクル観察・同定
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での毛髪のキューティクル観察・同定

綿棒の異物解析

綿棒のような立体的な構造を持つ対象物であっても、4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、異物を鮮明に観察・解析することができます。
従来の顕微鏡では被写界深度の限界により、立体的な対象物の一部にしかピントが合わず、解像度の不足により微細な異物の観察が難しいことがありました。
「VHXシリーズ」は、立体的な綿棒の構造と異物の全体にフルフォーカスした高精細画像を得ることができます。これにより、見落としなくスムーズな異物解析を可能とします。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での綿棒の異物解析
綿棒の異物(×200)
綿棒の異物(×200)
綿棒の異物(×200)
綿棒の異物(×200)

金属片の高精細観察

金属片は、表面の凹凸形状によりピントが合いにくいため、従来の顕微鏡では、異物の観察・同定が難しいケースがありました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、高解像度・低ノイズな4K CMOSと、深い被写界深度と4K画質への対応を実現したHRレンズを採用。金属片表面全体の凹凸形状にピントが合った高精細画像が得られるため、金属片の表面形状まで鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での金属片の観察
金属片(×150)
金属片(×150)

食品表面に付着した小さな虫の観察

異物が付着した食品の市場流出は、安全性と信頼性を大きく損ねる重大な問題となります。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、たとえば、高野豆腐のような凹凸形状をもった食品に付着した小さな虫であっても、全体にフルフォーカスした高精細4K画像により、素早く鮮明に観察することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での高野豆腐の異物観察
高野豆腐に付着した虫の観察(×200)
高野豆腐に付着した虫の観察(×200)

透明フィルム内に混入した異物の観察

従来の顕微鏡では、透明度の高いプラスチック製フィルムの異物観察は光の反射などにより困難でした。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」であれば、透明フィルム内に混入した異物も高精細に観察・解析することができます。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での透明フィルムの異物観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」での透明フィルムの異物観察

食品の曲面のカビ観察

従来の顕微鏡では、曲面など奥行きのある形状の対象物では、一部にしかピントが合わず、異物の見逃しが発生する場合がありました。
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、深い被写界深度により、たとえばドーナツの曲面に発生した微細なカビの観察において、全体にフルフォーカスした高精細画像を得ることができます。ピント調整の手間と時間を省くと同時に、全体にピントが合うことで、異物の見逃しを防止します。

4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのドーナツのカビ観察
4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」でのドーナツのカビ観察

異物分析の高度化と効率化を実現する多機能マイクロスコープ

高精細4Kデジタルマイクロスコープ「VHXシリーズ」は、ここで紹介した以外にも「フリーアングル観察システム」を使った自由な傾斜観察や、簡単な操作で実現する高精度な2D・3D測定、異物(コンタミ)サンプルの自動面積計算・カウントなどさまざまな機能を搭載しています。また、ユーザーの任意のテンプレートにより、観察画像と測定値を用いた自動レポート出力まで、マイクロスコープ1台で一連の作業をシームレスかつスピーディに完結させることができます。

「VHXシリーズ」に関する詳細は、以下のボタンよりカタログをダウンロード、または、お気軽にご相談・お問い合わせください。