3Dプリンタの誕生誕生から現在までの歩み

3Dプリンタ元年突然脚光を浴びた2013年

2013年は3Dプリンタにとって大きな節目の年でした。そのきっかけとなったのが、オバマ大統領の一般教書演説です。
“ The 3D Printing that has the potential to revolutionize the way we make almost everything.”
(3Dプリンタはものづくりに急激な変化をもたらす可能性がある)
議会で発表される施政方針で取り上げられたことから、3Dプリンタへの注目度は一気に高まり、その後のメディアへの爆発的な露出にもつながりました。3Dプリンタは、もはや産業界でものづくりに携わる人だけでなく、一般にまで広く知られる言葉となったのです。

一般層にも浸透した関心の高さ

展示会ブースで3Dプリンタの説明に聞き入る来場者

展示会ブースで3Dプリンタの説明に聞き入る来場者

3Dプリンタ元年と呼ばれるようになった2013年、3Dプリンタを展示したキーエンスの展示会ブースには、予想の3倍を超える人が訪れ、1万人近い人がカタログを希望されました。キーエンスの3Dプリンタがテレビや雑誌など、さまざまな媒体で取り上げられ、それまで集客に苦労していたセミナーでも、3Dプリンタなら満員という状態が続きました。

ブームになるきっかけ3Dプリンタの未来を語る著作

オバマ大統領の演説と並んで、3Dプリンタのブームを語るうえで欠かせないのが2012年に出版されたクリス・アンダーソン著『MAKERS ~ 21世紀の産業革命が始まる~』(NHK出版)です。一般教書演説とこの著作に共通しているのは、3Dプリンタを、ものづくりを根本から変える革新的技術として捉えていることです。

ものづくりの新しい形を示した『MAKERS』

米『タイム』誌で世界に影響力のある100人に選ばれたクリス・アンダーソンは、『MAKERS』の中で「3Dプリンタの登場と技術を歓迎する。21世紀の製造業はアイデアとラップトップさえあれば、誰でも自宅で始められる」と記述。それまでにはなかった新しいものづくりの概念「パーソナルファブリケーション(個人製造)」を示しました。

パソコンや技術の普及も追い風に

大統領が一般教書演説で「積層造形に焦点を当てる」と宣言した通り、前年の2012年にはアメリカ国防省がNAMII(全米積層造形イノベーション機構)の創立に3000万ドルを投入し、3D造形技術の開発に積極的に関わりました。また、3D CADの普及、パソコンやグラフィックス環境の向上、3次元積層造形技術の進化なども、3Dプリンタのブームを支える大きな要因としてあげられます。
2013年は、まさに官民あげての施策や投資、関心が重なった一年となりました。3Dプリンタはこうして新しい時代の技術として登場したのです。

3Dプリンタの歩み試作の研究から始まった造形技術

近年にわかに脚光を浴びた感がある3Dプリンタですが、もとは40年以上も前に「迅速な( rapid )試作( prototyping)」の研究から始まった技術です。1980年、名古屋市工業研究所の日本人研究者が発明した光造形機が、後に3Dプリンタと呼ばれる技術革新の原型です。

開発年表

1970年代 日本やアメリカなどの先進国が「rapid prototyping」の研究を開始。
1980年 名古屋市工業試験所の研究者が光硬化性樹脂を使った光造形法の特許1)を出願(後に審査請求権を失効)。これが現在の3Dプリンタの元祖です。
1)特開昭56-144478:立体図形作成装置
1984年 アメリカの企業が光造形に関する特許をアメリカと日本で出願願2)3)
2)米国特許4,575,330:“ Apparatus for production ofthree-dimensional objects by stereolithography”
3)日本特許1827066/特開昭62-35966
1986年 アメリカで世界初の3Dプリンタメーカーが誕生。
1986年 アメリカで「粉末焼結造形法( SLS )」に関する特許出願4)
4)米国特許4,863,538“ Method and apparatus for producing parts by selective sintering”
1987年 アメリカの企業が光造形機の実用化に世界で初めて成功。この当時の3Dプリンタは、光硬化性樹脂を紫外線で硬化させるタイプが主流でした。
1989年 アメリカで「熱溶解積層法( FDM法)」に関する特許出願5)
5)米国特許5, 121,329 "Apparatus and method for creating three-dimensional objects"
(日本特許2088100 /特開平03-158228「三次元物体を創作する装置及び方法」)
2006年 イギリスの研究者が中心になって、オープンソースの3Dプリンタ開発プロジェクト「RepRap」を起ち上げ。現在の3Dプリンタの多くは、この「RepRap」から派生しています。
2009年 「熱溶解積層法( FDM法)」に関する権利期間が満了となり、特許権が失効。いくつものメーカーやベンチャー企業が格安で3Dプリンタをリリース。アメリカでは10万円台の製品も発売されました。
2012年 クリス・アンダーソン著『MAKERS ~ 21世紀の産業革命が始まる~』出版。3Dプリンタの名前が一気に浸透しました。
2013年 オバマ大統領が一般教書演説で3Dプリンタの可能性に言及。世界的に大きな注目を集めました。
2014年 「粉末焼結造形法( SLS )」に関する権利期間が満了となり、特許権が失効。各社がSLS方式の3Dプリンタを商品化しました。

特許満了がターニングポイントに

専門家の間だけで知られていた3Dプリンタが、爆発的に浸透するきっかけが特許の期間満了です。
2009年の熱溶解積層法(FDM法)の特許満了を見越して、事前にオープンソースの開発プロジェクト「RepRap」が起ち上がりました。特許権が失効したタイミングで、多くの企業がRepRapを使って3Dプリンタを開発し、一気に低価格化が進みました。2014年には、粉末焼結造形法(SLS)の基礎的な特許権が失効。材料の選択肢が広がり、造形の精度が格段に上がりました。

いまだに語られる夢本当に産業革命は起きるのか?

『一般教書演説』、『MAKERS』、急速に進むパソコンや周辺技術の普及、何年にもわたる技術革新の歩み。――いくつかの要因が重なってブームになった3Dプリンタですが、本当に、3Dプリンタさえあれば、設計から製造までダイレクトに製品が生まれるのでしょうか?クリス・アンダーソンが語った「自宅で何でも作れるデスクトップ製造」の時代は到来するのでしょうか?

夢を語るメディアやメーカーにも責任が

ブームから何年かが経ちましたが、いまだに「革新的な夢の新技術」「第2の産業革命を起こす」といった言葉を耳にします。ものづくりの意味をしっかりと捉えずにイメージばかりが先行するのは、メディアだけでなく、私達のようなメーカー側にも責任があると感じています。

技術革新がもたらすもの

光造形機は日本で発明されましたが、残念ながら国内で実用化する企業は現れませんでした。しかし説明をしてきましたように、アメリカで世界初の実用機が1986年に発売されてからは、材質や造形方法などを改良した技術が次々と開発されました。ただ基本概念は、1980年の発明当初から大きく変わっていません。技術革新が続き、今までにない造形方式が登場すれば、3Dプリンタの利用法は一変するでしょう。量産まで含め、ものづくりのカタチが変わる可能性も十分にあります。しかし、未知の造形方式に期待して「夢の技術」と呼び続けるのはどこかに無理があります。『MAKERS』で示された考え方も、必ずしも量産をめざしたものではありません。
そこには、革新的な技術を「何のために、どう使いこなすか」という、私たち使い手の意識の改革も求められているようです。

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