世界の産業用ロボットのシェアとロボットビジョン

日本では、2035年に10兆円規模になると予想されているロボット市場ですが、この傾向は国内のみならず世界でも同様です。その中でも注目されているのが産業用ロボットです。日本をはじめ欧州では労働人口減少、中国や東南アジアなどの新興国では人件費の高騰や品質向上を背景に製造工程の自動化が急務になり、産業用ロボットのシェアが拡大しています。

世界の産業用ロボットのシェアとロボットビジョン

そこで今回のコラムでは、世界の産業用ロボットのシェアとロボットビジョンと題して、産業用ロボットの市場動向や今後成長が見込まれる業界・工程、ロボットビジョンの活用による未来予測などを解説します。ものづくりの現場は、自動化という変化が求められていますが、産業用ロボットとロボットビジョンの活用がカギを握っています。

世界から見る、産業用ロボットの市場動向

上述したとおり、日本国内では2035年に10兆円規模までロボット市場が拡大すると予想されています。この予測には、産業用ロボットのほか、医療や介護・福祉、清掃、ホビーといった分野も含まれていますが、その大部分を占めるのが製造業の産業用ロボットです。その背景には、少子高齢化による働き手の減少という課題があります。また、日本ロボット工業会の発表を見ても産業用ロボットの受注・生産・出荷が増加傾向にあることがわかります。

出荷状況・今後の見込み|産業用ロボットとは>>

2035年までの産業用ロボット国内市場予測

国内ロボット市場は2035年までに5倍に拡大

出典:平成22年ロボット産業将来市場調査(経産省・NEDO)

国内における産業用ロボットの受注・生産・出荷状況

国内における産業用ロボットの受注・生産・出荷状況

出典:日本ロボット工学会 2018年1~3月期の産業ロボット出荷実績(四半期、会員ベース)

国内の出荷状況・今後の見込みを踏まえたうえで世界に目を移すと、世界的にも産業用ロボットの市場規模は拡大しています。特に2014年以降は年々2桁増という勢いで増えており、今後も市場の拡大は続くと予想されます。

世界の市場規模推移(台数ベース)

世界の市場規模推移(台数ベース)

世界の市場規模推移(金額ベース)

世界の市場規模推移(金額ベース)

出典:富士経済「ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望(2011、2013~2017)」を参考に作成

業種別の産業用ロボット市場動向

業種別で産業用ロボットの市場を見ると、自動車や電子デバイス(半導体等)といった分野での利用が多く、この傾向は今後も続くでしょう。さらに現在では食品や医薬品などの他産業での活用も増え、産業用ロボットのシェア拡大が予想されます。

業界別市場規模構成比(台数ベース)

業界別市場規模構成比(台数ベース)

出典:富士経済「ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望(2011、2013~2017)」を参考に作成

それでは、特に成長が見込まれている製造業向けロボットの世界市場を見てみましょう。以下は、FA(ファクトリー・オートメーション)ロボットの世界市場を調査した最新結果です。2017年の産業用ロボット市場は、前年比23.7%増の1兆821億円となり、これを牽引しているのがEMS(electronics manufacturing service:電子機器の受託生産)やスマートフォン関連、自動車関連分野の設備投資です。特に小型ロボットの需要が増えており、技術革新で自由度が増したヒト協調ロボットの導入が進んだことも要因です。今後、従来のロボットでは難しかった複雑な工程の自動化やヒト協調ロボットの導入も進み、特に組立・搬送系ロボットの伸びが予測されます。

出典:富士経済「中国を中心に製造業向けロボットの需要が急増しているFA(ファクトリー・オートメーション)ロボットの世界市場を調査」を参考に作成

現在、産業用ロボットの活用が活発な自動車業界・電子デバイス業界に注目すると、ともにアクチュエーター系と組立・搬送系のロボットが利用されていることがわかります。また、自動車業界では溶接・塗装系、電子デバイス業界ではクリーン搬送系の活用も目立ちます。

産業用ロボットの種類>>

産業用ロボットのしくみ(分解図)>>

出典:富士経済「ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望(2011、2013~2017)」を参考に作成

  • 溶接・塗装系ロボット
  • 溶接・塗装系ロボット
  • 人間の腕のような形状で自由度が高い垂直多関節ロボットに溶接トーチや塗装ガンを取り付けたロボットです。
  • アクチュエータ系ロボット
  • アクチュエータ系ロボット
  • 直行ロボットや水平多関節ロボット(スカラロボット)に代表される、直線運動を行うロボットです。位置決めやピック&プレースなどの作業に用いられます。
  • 組立・搬送系ロボット
  • 組立・搬送系ロボット
  • 位置決めやネジ留め、部品のハンドリング、ダンボール箱をパレットに積むパレタイジングなどのロボットです。用途にあわせてさまざまなロボットが利用され、ロボット同士や工作機械との協調などの進化が期待されています。
  • クリーン搬送系ロボット
  • クリーン搬送系ロボット
  • 半導体やガラス基板、食品や医薬品などの分野で用いられるロボットです。近年は、潤滑封止方式のクリーンタイプの産業用ロボットも登場し、活用の幅が広がっています。

地域・国別の産業用ロボット市場動向

産業用ロボット市場は、世界的に増加傾向にありますが、地域別に見るとアジアで稼働台数が増加していることがわかります。特に中国で稼働台数が増加しており、すでに日本に次ぐ世界第2位になっています。しかし、ロボット化されている割合で見ると中国は、工場労働者1人あたりの台数が少なく、ロボットの導入余地が大きいと考えられ、さらに稼働台数が増えていくことが予想されます。

世界市場の地域別内訳

世界市場の地域別内訳

国別産業用ロボット稼働台数(上位15ヶ国)

国別産業用ロボット稼働台数(上位15ヶ国)

国別産業用ロボット化率(ロボット稼働台数/工場労働者1万人)(同)

国別産業用ロボット化率(ロボット稼働台数/工場労働者1万人)(同)

出典:富士経済「ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望(2011、2013~2017)」、世界ロボット連盟(IFR)「World Robotics 2016」を参考に制作

ロボットビジョンで自由を手に入れた産業用ロボット

これまでの産業用ロボットは、「溶接をする」「塗装をする」「ネジを留める」「ワークをピッキングする」など用途が限定的でした。教えたことを繰り返す「ティーチングバック方式」だったので単純作業しかできず、ティーチングに手間がかかるといった課題もありました。しかし、今後の産業用ロボットは、自動化ニーズの高まりもあり、多品種や複数工程への対応、ヒト協調ロボットなどが普及していくでしょう。

そこでカギを握るのがロボットビジョンシステムです。ロボットビジョンシステムは、人間の目のように状況を捉える「センサ(カメラ)」、撮像した対象物を認識して判断する「画像処理システム」などで構成され、最終的に画像処理の結果に合わせてロボットに指示を出すことが可能です。そのため、従来では難しかった多品種対応や複数の産業用ロボット・工作機器との協調ができるようになります。

ロボットビジョンの役割>>

キーエンスのロボットビジョンはメーカーの垣根を越える!

現在、多くの産業用ロボットメーカーがヒト協調などのシステム開発を行っていますが、まだまだ開発段階のものが多いというのが現状です。そのため新規導入する際にロボットビジョンシステムに対応していない、ほかのロボット・工作機器と連携できないという可能性もあります。

また、ものづくりの現場では現役で活躍している産業用ロボットも多数あります。すでに産業用ロボットを導入している場合、複数のメーカー・機種のロボットが混在しているケースも多いですが、メーカーごとにシステムやプログラミング言語が異なり、ロボットビジョンを導入するときに膨大な手間とコストがかかることもあります。

キーエンスのロボットビジョンシステムであれば、メーカーを問わず、数多くの産業用ロボットに接続可能です。キーエンスのロボットビジョンシステムは、ロボットメーカーを選ぶだけで各社標準のコントローラと接続でき、手軽にロボットビジョンシステムを追加できるので、メーカーに縛られず、最適なロボットを選定できます。

また、通常の産業用ロボットは、メーカーによってプログラミング言語が異なり、導入に手間がかかっていました。しかし、キーエンスのロボットビジョンならメーカーに応じたサンプルプログラム作成が可能で動作検証も簡単です。動作フローを指定するだけでメーカーに合わせたロボットプログラムが自動作成できます。カメラも豊富に設定していますので、用途に応じて最小限のコストで最適なロボットビジョンシステムを導入できます。

ロボットビジョンシステム特設サイト CV-Xシリーズ

世界の産業用ロボットの今後

これまでは単純作業中心だった産業用ロボットですが、製造現場の自動化ニーズを受けてFA(ファクトリーオートメーション)ロボットが普及拡大していくでしょう。さらにIoTやAI技術の活用も進むと予測されます。

ロボットビジョン・システムを活用すれば、組立や搬送などの人が作業している工程をロボットに置き換えることができます。ロボットビジョンによって人間のような複雑な動きが可能になれば、もっとヒト協調ロボットなどが一般的になるでしょう。

IoT・AI対応コントローラは、現時点では試験導入が多いですが、アプリケーション開発やコスト削減が進めば、Industrie 4.0などの生産システム実現に向けた取り組みとして非常に重要な意味を持っています。

目まぐるしく変化する産業用ロボットの業界を注視しながら、適材適所に活用していくことでものづくりの現場はさらに働きやすく、コスト削減も可能になります。キーエンスでは、センサや画像処理システムを中心としたロボットビジョンで、産業用ロボットのメーカーにとらわれない自由なシステム構築と工場の自動化をサポートしています。

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