トレーサビリティシステムの流れ

対応づけの順序を理解してトレーサビリティを実現する

原材料・部品・製品を正確に判別する"識別"については、「識別体制の構築」でご説明しましたが、こちらでは識別したモノや情報を紐づける「対応づけ」についてご説明します。

一歩川上または川下の工程に関連づける

対応づけとは、「モノとモノ」「モノと情報」「情報と情報」を紐づけることで、識別記号から追跡または遡及するためのルールです。それを踏まえて、こちらでは実際の生産工程を例にしながら、より詳しく"対応づけ"について掘り下げていきたいと思います。

一歩川上または川下の工程に関連づける

まず、部品の仕入先(一歩川上の事業者)と出荷先(一歩川下の事業者)のトレーサビリティを確保します。仕入先からの納品伝票で「いつ、だれから、どの部品を、どれだけ仕入れたのか」を確認し、それらの情報を盛り込んだ識別記号を部品に付与し、会社や工場内で情報を記録・保管します。これによって川上への遡及可能性が確保でき、もし不良品だったとしてもトレースバック(遡及)することで仕入先を特定できます。

一歩川上の事業者が遡及できる!

次に製品を納品する出荷先(一歩川下の事業者)への追跡可能性を確保します。納品する製品に仕入先の情報に加え、自社から発送した日時や製品情報を識別記号に追加・記録します。これによって、「いつ、だれに、どの製品を、どれだけ出荷したのか」が追跡できるようになります。

一歩川下の事業者を追跡できる!

トレーサビリティを実現するには、まず社外からの流れを明確にすることが重要です。プリント基板の製造を行っている企業を例に考えていましょう。例えば使用するハンダを複数の企業から仕入れたとします。その中の一部に不良品が混入していた場合、一歩川上への遡及可能性が確保できていれば事業者を簡単に特定することができます。さらに一歩川下への追跡可能性が確保できていれば、そのハンダを使って生産したプリント基板をピンポイントで回収することができ、負担を最小限に抑えることができます。

追跡・遡及を実現するために欠かせない表現様式や伝達媒体、記録媒体については、「伝達する情報とその様式」をご覧ください。

内部トレーサビリティの情報を追加する

次に企業・工場内の原材料・部品・製品の動きを把握する必要があります。先ほどのように電子デバイス業界を例にするとハンダやトランジスタ、抵抗やコネクタなどの部品はどこ製のモノを使ったのか、どの部品を組み合わせたのか、それらの情報を作業前後で追加・記録していくことで内部トレーサビリティが確保できます。内部トレーサビリティについては、「トレーサビリティとは」で詳細に説明しています。

このように一歩川上と一歩川下の事業者への追跡・遡及可能性に加え、内部トレーサビリティを確保し、一つひとつの工程を紐づけていくことが"対応づけ"の基本です。例えばハンダや抵抗などを作る企業、それらを基板に実装する企業、基板を製品に組み込む家電メーカー、すべての工程で対応づけが徹底できれば、自然な形でチェーントレーサビリティを確立することができます。

内部トレーサビリティの情報を追加する

運用するために手順書を策定する

識別と対応づけができれば、モノの一連の流れに対して情報が紐づき、追跡・遡及することができるようになります。しかし、識別や対応づけのルールが社内で統一され、正確に情報が収集・記録できていなければトレーサビリティは実現しません。そこで情報の記録方法や項目、保存方法や期間などをまとめた手順差書を作成します。また同時に社内研修などを進め、スタッフの育成を行う必要もあります。

また、トレーサビリティの信頼性を高めるため、モニタリングや内部監査、外部監査を実施する仕組みづくりも重要です。

モニタリング

トレーサビリティシステムの運用が手順通りに実施されているか確認することです。いつ、だれが、何を、どのようにチェックするか、あらかじめモニタリング計画を定めておくべきでしょう。例えば、「3時間に1回、ライン管理者が、ライン上に流れているシリアル番号の情報を確認する」のように、日常的にチェックする計画を立てることで、トレーサビリティの信頼度は高まります。

内部監査

トレーサビリティが確保できているか、導入・運用による効果はあるのかなどを社内担当者が定期的に評価することです。モニタリングは日常的に行いますが、内部監査は1ヵ月に1回や半年に1回など、一定の期間をおいて実施します。その際に、モニタリングも含め手順通りに行っているか、実際に追跡・遡及はできるか、作業前後の数量などに異変はないか、などの確認を行います。

外部監査

内部監査は社内担当者が行いますが、外部監査は第三者機関に委託して実施内容の確認や評価を行います。トレーサビリティの信頼度を高い水準で維持し、顧客や消費者に対する信頼確保に有効ですが、コストがかかることがネックになります。

実際は部品や製品に合わせて最適な表現様式・伝達媒体・記録媒体を選んだり、各工程で取得する情報を検討したり、それを実現するために機器を導入する必要がありますが、それらは取り扱う部品や製品、生産方式や規模などによっても変わってきます。詳しくは業界別の事例(資料ダウンロード)をご覧ください。

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