上のように、ワークが曲面状の光沢面である場合などは白黒カメラでは人が目で見るように画像を処理できません。
これは実画像を見ても分かるとおり、ラベルの明るさが一定にならないためです。
この場合、カラーカメラであれば右の画像のようにラベルの金色だけを抽出することができます。
これは、白黒カメラの処理基準である明度(明るさ)ではなく、色相(色合い)のデータを使ってカラーカメラが画像を処理するためです。
現在画像センサの主力である白黒カメラでは対応が困難な検査でもカラーカメラを使うことで安定検査が可能になる場合が多くあります。画像道場ではこれまでS撮像【絵を映すこと】を中心に書いてきましたが、今回は人の目に近い画像を映す『カラーカメラ』及びコントローラで安定した画像処理を実現するために画像を加工する『前処理』について説明します。
画像センサで使われるカラーカメラは一般的に 単板式
といわれるCCDが1つのカメラです。カラー画像には色の3原色(RGB)情報が必要なので、CCDの1画素毎にRGBいずれかのカラーフィルターが貼りついており、1画素毎にRGBいずれかの256階調の濃淡情報をコントローラに送ります。
コントローラでこの情報を使ってカラー画像処理を行ないます。
色を数値的に表すための体系を表色系といい、通常は3つの軸を持つ3次元空間で表現されます。表色系は複数ありますが、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)の3要素を使う HSV方式が最も人の目に近く、画像処理に適しています。
画像を最適化する方法の1つにカメラのゲイン調整があります。カラーカメラであれば、RGBそれぞれのゲイン調整をすることで、赤いものをより赤く、青いものをより青く、緑色のものをより緑に変換することができます。色の判別をする際に効果的です。
キャップの色判別
白黒カメラが持つ濃淡情報は256階調ですが、カラーカメラならRGBそれぞれに256階調を持つので、256×256×256=16,777,216階調の情報を持ちます。この白黒カメラ比8万倍の情報により、グレー256階調では検出できない物が検出できるようになります。この約1677万階調の中から指定した色範囲だけを抽出する機能をカラー2値化処理といいます。
コイルの巻き線から緑色の線の切れを検出する場合
まとめ
カラー画像センサはRGB毎の256階調濃淡データ=1677万階調データを使うことで、白黒カメラの256階調では判別できない色の差を検出できます。
カラーカメラを使うことで、画像センサの用途は大きく広がります。
カラーカメラの情報量は白黒カメラの8万倍あると書きましたが、この情報を全て処理に使うと膨大な処理時間がかかります。一方高速ラインで用いられる画像センサには、百分の一秒単位の処理時間が求められます。また2値化処理では検査できない形状サーチや外観傷検査の用途においては、多すぎる情報量がノイズとなって特徴点を曖昧にする恐れがあります。この双方の問題をクリアする為に開発された前処理機能が「カラー濃淡処理」です。
カラー画像の膨大なデータを、指定した色を明度の最高階調とする256階調グレー画像に変換する前処理です。明るさだけでなく、色情報を用いるために金と銀の判別や、淡い色の判別など白黒カメラでは検出困難な検査に対応できます。
下のワークのように淡い色の模様を検出する場合、白黒濃淡処理では非常に薄い模様として認識されます。これに対してカラー濃淡処理なら、色情報をもとに濃淡画像を作成するので背景は真っ黒、淡い色ははっきりしたグレーとして認識可能です。
両者でマークの形状違いや位置ズレを検査した場合、どちらが安定するかは一目瞭然です。
まとめ
カラーカメラは情報量が多いという利点とその情報量が多いために処理時間が遅いという弱点を抱えていました。
その弱点を解消するために『カラー濃淡処理』という前処理が開発され、現在ではカラーカメラでも百分の一秒単位の高速処理が実現できています。
画像センサには用途によって最適な画像に変換するための前処理機能が多く搭載されています。
これらは白黒カメラだけではなく、カラー2
値化処理、カラー濃淡処理後のカラーカメラでも使用できます。
そのいくつかを紹介します。
鉄板表面の傷検査
ワーク表面のヘアラインの影響をなくして、傷だけが浮かび上がります。
ゴム加工品のバリを 無視した表面汚れ検査
*ワークの複雑な形状を無視して汚れだけを残します。
コネクタのハウジング部 異物・汚れ検査
複数の前処理を多段に組み合わせるマルチフィルタがより最適な画像を実現します。
カラーカメラの効果と前処理 まとめ
画像処理の基本は撮像【きれいな絵を撮ること】です。
カラーカメラを使うことで人の目に近い色の差を抽出することができます。
また前処理機能により、検査内容に最適な画像に加工ができます。
傷検査・寸法計測などの本処理を設定する前に、撮像と前処理を最適に行なうことで安定した検査ができる可能性が高まります。
次のテーマはソフト編:外観検査の基礎です。
数ある検査モードの中でも最も多く使われるのが傷モードです。
様々なワークの外観検査に対応するための傷モードアルゴリズムを説明します。