目的に合ったカメラの選定

画像センサは、カメラ・照明・レンズ・コントローラなど、多くの機器から構成されるセンサです。導入にあたっては、それぞれの機器の選定に始まり、設置場所や入出力の仕様確認、検出判断など、さまざまな工程が必要です。ここでは、機器選定の中から、目的に合ったカメラを選定するためのポイントを紹介します。

画像センサ導入までに確認する主な項目

1検査に必要な機器の選定

検査仕様に合致した機器を選定します。

カメラ/コントローラ/照明/
レンズ/モニタ

2検出判断

実ワークと実機で実験を行ないます。

OK、NG品の限度見本/検査タクト/
Must、Wantの確認/品種数

3設置方法、設置場所の選定

具体的な設置場所を検討します。

移動中/停止中/
周囲環境/外乱光/振動など

4自動化のための制御方法

画像センサへの入出力制御を確認します。

撮像タイミング/判定結果出力/
PLC制御/データ出力

5現場テスト

必要に応じて実ラインで検証します。

セッティング微調整/統計解析/
入出力制御確認

6操作方法レクチャー

基本的な設定方法を説明します。

交差設定/感度調整/検査設定変更/
品種登録

画像センサに使用されるカメラの種類は大きく以下のように分類されます。この中から用途に合わせて最適な画像が得られるカメラを選定します

高画素タイプ 高速タイプ 標準タイプ 小型タイプ それぞれにカラー・白黒カメラがあります。 画像センサ導入までに確認する主な項目

【カメラ選定1】画素数で選ぶ(高画素タイプ or 標準タイプ)

画像センサに使用されるCCD撮像素子は、格子状に並んだ小さな画素(ピクセル)の集合体です。標準タイプとしてよく使用される31万画素のCCDから、高画素タイプと呼ばれる200~500万画素のCCDが存在します。

ではこの画素数の違いをどうやって使い分ければよいのでしょうか?

一般的には「視野サイズ」と「画素分解能」という考え方からカメラを選定します。「視野サイズ」は検査対象物を撮像する範囲で、使用するレンズにより変更可能です。また「画素分解能」とは「CCDの1画素が何mmに相当するか」であり、それぞれの関係は以下の式であらわされます。

画素分解能=Y方向視野サイズ(mm)÷CCDのY方向画素数

それではY方向30mmの視野サイズに設定したときの画素分解能を考えてみます。CCDは標準タイプの31万画素(Y=480画素)と高画素タイプの中でも汎用的な200万画素(Y=1200画素)を使用します。

【31万画素カメラ使用時の画素分解能】=30mm÷480画素=0.063mm/画素
【200万画素カメラ使用時の画素分解能】=30mm÷1200画素=0.025mm/画素
 となります。

画素分解能が分かれば、その時の視野サイズでの目安が算出できます。画像センサの代表的なアプリケーションとして「外観検査」と「寸法検査」がありますが、「外観検査」では「最小検出サイズ」が、「寸法検査」では「寸法公差」が良否判定に用いられます。

それぞれの目安は一般的に、
「最小検出サイズ」=4画素角
「寸法公差」=±5画素
 を基準として算出します。

先ほど計算した画素分解能から、「外観検査」をした際の「最小検出サイズ」を求めると
【31万画素カメラ使用時の最小検出サイズ】=0.063mm/画素×4画素角=0.25mm角
【200万画素カメラ使用時の最小検出サイズ】=0.025mm/画素×4画素角=0.1mm角
 となります。

もし「視野30mm内でφ0.1mmの異物まで検出したい」という検査内容であれば200万画素以上のカメラを選定する必要があるといえます。

【参考】視野30mm内のφ0.5mmの異物部分を拡大

【参考】視野30mm内のφ0.5mmの異物部分を拡大

カメラ選定 POINT1

「画素分解能」という考え方から良否判定の目安をつけることで最適な画素数のカメラが選定できます!

【カメラ選定2】CCDタイプで選ぶ(カラータイプ or 白黒タイプ)

「カラーカメラと白黒カメラ、どちらを選定すればよいの?」という質問がよくあります。一般的に、検出したいポイントが「色相変化」で差が出ている場合はカラーカメラでメリットが出るケースがあります。以下は白黒カメラでは検出しづらい白地に黄色の汚れをカラー処理を使用して検出している例です。

カラーカメラ画像 カラー処理画像 傷検査安定度表示 白黒カメラ画像

ただし、白黒カメラを選定するメリットが無いというわけではありません。以下の「バックライトを使用した寸法計測」のように、「色相変化」ではなく「明度変化」で大きく差が出るようなケースでは白黒カメラを選定することもあります。

バックライトを使用した金属ワークの各種寸法検査

バックライトを使用した金属ワークの各種寸法検査

カメラ選定 POINT2

検出したいポイントが「色相変化」なのか「明度変化」なのかを見極めることで、カラーカメラと白黒カメラを使い分ける!

【カメラ選定3】転送速度で選ぶ(高速タイプ or 標準タイプ)

画像センサのカメラには、画素数は同じでも転送速度が高速なタイプがあります。31万画素のタイプを例にあげると、標準タイプの転送速度16.0msに対して高速タイプでは4.7ms の転送速度を実現しています。部分取込機能により更なる高速化も可能です。ライン速度が高速な場合はもちろん、通常のライン速度における検査においても「前処理の追加」「検査ツールの追加によるダブルチェック」など、より安定性を高めた検査を行ないたい場合に高速タイプの選択が有効です。

高速カメラ使用アプリケーション

高速カメラ使用アプリケーション

カメラ選定 POINT3

高速カメラ選定のメリットは「検査タクトの高速化」だけではなく「処理を安定させる」ことにもつながる!

【カメラ選定4】カメラサイズで選ぶ(小型タイプ or 標準タイプ)

小型カメラはスペックはそのまま、カメラサイズを大幅に小型化したものです。高画素タイプ、標準タイプのカラー・白黒それぞれに小型タイプがあり、多くは限られた設置スペースを有効活用するために選定します。特に既存設備への後付けなどでスペースが無い場合などは、大幅な設備改造が不要になるため小型カメラを選定するメリットが出てきます。

必要設置スペースの考え方

下図のように、A:WD(ワーキングディスタンス=レンズ先端~ワークまでの距離)、B:レンズサイズ、C:カメラサイズ、D:ケーブルスペース(曲げ部含む)を合計したものがカメラ部分で必要になる設置スペースです。

例:標準カメラに焦点距離6mmのレンズを使用して30mmの視野にした場合

必要設置スペースの考え方

カメラ選定 POINT4

設置スペースを事前に確認して小型カメラを選択することで不要な設備改造を無くすことが可能!

カメラ選定のまとめ

画像処理におけるカメラ選定は、安定検査を行なう上で最も基本的かつ重要な選定項目となります。
以下の選定手順で、カメラのスペックと型式の対応表を確認することにより、最適なカメラを選定することができます。

  • 1.【画素数】を選ぶ。
    必要精度を満たす画素数(ピクセル)を選択します。

  • 2.【転送速度】を選ぶ。
    高速処理やさらなる安定化処理を必要とするケースでは高速タイプを選択します。

  • 3.【カメラサイズ】を選ぶ。
    設置スペースが限定される場合は小型タイプを選択します。

  • 4.【白黒/カラー】を選ぶ。
    CCDタイプ(カラーまたは白黒)を選択します。色相変化をとらえる場合はカラーカメラを選択します。

各商品の詳しい情報は、下記の表から商品詳細ページをご覧ください。

画素数 2100万画素 500万画素 200万画素
5104×4092 2432×2040 2432×2050 1600×1200
転送速度 109.9ms 27.6ms※1
50.3ms※2
29.0ms※1
52.4ms※2
61.2ms 11.6ms※1
20.1ms※2
11.6ms※1
20.2ms※2
29.2ms 58.5ms
カメラサイズ 標準 標準 標準 小型
白黒 CA-H2100M CA-HX500M - CV-H500M CA-HX200M - CV-H200M CV-200M CV-S200M
カラー CA-H2100C - CA-HX500C CV-H500C - CA-HX200C CV-H200C CV-200C CV-S200C
画素数 31~47万画素
784×596 512×480 784×596 512×480 640×480
転送速度 2.9ms※1
5.2ms※2
1.7ms※1
2.8ms※2
2.9ms※1
5.3ms※2
1.7ms※1
2.9ms※2
4.7ms 16.0ms
カメラサイズ 標準 小型
白黒 CA-HX048M - CV-H035M CV-035M CV-S035M
カラー - CA-HX048C CV-H035C CV-035C CV-S035C

※1 CV-X400シリーズおよびCV-X200シリーズ+CA-EC80HX/EC80L使用時 ※2 CV-X100シリーズ、もしくはCV-X200シリーズ+CA-EC80使用時

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