非接触式表面粗さ・共焦点レーザ顕微鏡

非接触式

非接触式は、接触式の触針の代わりに光を用いたものです。共焦点方式や白色干渉方式など、原理の違いにより複数の方式があります。また、接触式の検出器が光センサになっただけのタイプや顕微鏡タイプのものなど形態も様々です。ここでは弊社のレーザー顕微鏡VK-Xシリーズを例に共焦点方式について説明します。

レーザー顕微鏡は、共焦点原理を利用し対象物表面の凹凸測定を行う顕微鏡です。光源としてはレーザーを用います。図のようなシステム構成となっており、測定部のXYステージに対象物をセットし測定を行います。

レーザー顕微鏡のシステム構成
レーザー顕微鏡のシステム構成
レーザー顕微鏡VK-Xシリーズ

弊社のレーザー顕微鏡VK-Xシリーズでは、測定部の内部にXYスキャナが組み込まれており、光源であるレーザーを対象物の表面でX方向Y方向に走査し面の凹凸データを取得します。以下に原理を述べます。

レーザー顕微鏡の測定原理

  1. レーザー光源から出たレーザーが対象物表面をスキャンします。
  2. 対象物表面から反射したレーザー光はハーフミラーを通り、受光素子に入光します。このとき、入光した反射の光量とレンズの高さ位置をメモリーします。レーザー顕微鏡が取得するデータ数はX方向1024データ、Y方向768データとなっており、1024×768=786432ポイントの全てのポイントの反射光量とレンズの高さ位置がメモリーされます。
  3. 一つの面のスキャンが終了すると、対物レンズがZ方向に指定したピッチで移動します。
  4. 移動した面で同じように面スキャンを行い、1024×768のポイントでレーザーの反射光量をチェックします。それぞれのピクセルの反射光量をvでメモリした反射光量と比較し、上回っている場合は、反射光量のデータとレンズの高さ位置のデータを書き換えます。
  5. 2から4の動作を指定したZディスタンス分繰り返します。
  6. 最終的に1024×768の各ピクセルには、それぞれのピクセルにおいて一番レーザーの反射が強く返ってきたときの、反射光量とレンズの高さ位置がメモリーされています。
  7. 光学式顕微鏡においては対象物にピントが合うときのWD(ワーキングディスタンス:対物レンズと対象物の間の距離)は一定になります。反射光量が最大になったときにピント(焦点)が合っているとみなすと、ピント(焦点)があったとき、すなわち反射光量が最大になったときのレンズの高さ位置をつなぎ合わせることにより、顕微鏡の観察領域(1024×768ピクセル)における3次元データを取得することができます。

レーザー顕微鏡の測定精度

「ピント(焦点)が合ったときに反射光量が最大となる」という共焦点原理を利用した顕微鏡の測定精度には、反射光量のピーク値を正確に読み取る能力が大きな影響を及ぼします。共焦点光学系を構成する方式は複数あります。

以下は弊社のレーザー顕微鏡が採用している「ピンホール共焦点方式」についてです。ピンホール共焦点方式は、受光素子の前にピンホールが設けられています。ピンホールの直径はわずか数10μmで、焦点が合っていないときの反射光を遮断する役目を持っています。

下図で「焦点が合ったとき」では、通常の光学系もレーザー共焦点光学系も受光素子に反射光が入光しています。「焦点が合っていないとき」を見てみると、通常の光学系では受光素子に反射光(ピンボケ光)が入光していますが、レーザー共焦点光学系ではピンホールにより反射光(ピンボケ光)が遮断されています。

すなわち、焦点が合ったときのみ受光素子に反射光が入光する構造になっており、これにより共焦点光学系を構成します。

焦点が合ったとき
焦点が合ったとき
焦点が合ってないとき
焦点が合ってないとき

ピンホール共焦光学系と通常の光学系の受光素子への入光イメージ

ピンホール共焦光学系と通常の光学系の焦点位置検出
ピンホール共焦光学系と通常の光学系の焦点位置検出

実際に入光する反射光量を共焦点光学系と通常の光学系でシミュレーションすると図のようになります。共焦点光学系では焦点位置で反射光量がピークを描いているのに対し、通常の光学系ではなだらかなカーブを描きます。焦点位置付近でピークがたたないため焦点位置を検出することは困難になります。

レーザーのXY方向分解能

非接触式では接触式の触針にあたるのが光のスポットになります。非接触式では、接触式と異なり対象物に直接触れないため、触針が摩耗するとか、対象物が傷つくというデメリットは発生しません。しかしながら、対象物の形状を正確に測定するためにはスポット径の大きさが重要になります。スポット径が大きければ実際の形状より滑らかなデータしか取得できません。

レーザー顕微鏡の場合では、光源にレーザーを用いているため非常に微小なスポットを作ることができます。×150(N.A.=0.95)の対物レンズを使用したときは、レーザー光源にバイオレットレーザーを用いたVK-X200では平面空間分解能としては0.13μmの解像度を実現しています。接触式では測定できないような狭小な幅の凹凸もレーザー顕微鏡であれば測定が可能です。

非接触式表面粗さ・形状測定機の特徴

既に説明しているポイントも含めて、非接触式の特徴をまとめると以下のようになります。

長所 短所
  • 試料の表面を傷つけない
  • 接触式と比較して微小な凹凸を測定できる
  • 測定時間が短い
  • 観察画像と同時に形状を比較することができる
    (顕微鏡タイプ)
  • SEMに匹敵する高解像度・超深度画像を取得できる
    (カラー3Dレーザー顕微鏡)
  • 測定対象物の大きさが限定される
    (一部の顕微鏡タイプ)

測定時間

レーザー顕微鏡の場合では、1024×768の一画面をスキャンする時間は約0.1秒です。Z方向に100ステップのデータを持つ3次元データを取得するために要する時間は約10秒です。横一本のラインということになると、約1.5秒で1000ステップのデータを取得することができます。

観察画像と形状の同時比較&高解像度・超深度画像取得

レーザー顕微鏡は、測定中にレーザー反射光量情報を取得します。(レーザー顕微鏡測定原理参照)このレーザー反射光量情報を利用して対象物の表面状態をレーザー画像で取得できます。また、VK-Xシリーズではレーザー用の受光素子とは別にカラーCCDカメラが内蔵されており、これにより対象物の色情報を取得することができます。レーザー画像は非常に解像度が高く、また、焦点があった部分を積み重ねて画像を作製するため、電子顕微鏡(SEM)に匹敵する観察画像を得ることができます。また、この高解像度のレーザー画像にカラーCCDからの色情報を重ねることによりカラーで画面の全てに焦点のあった画像で観察ができます。(カラー超深度画像)これはSEMには真似のできない画像になります。

通常の光学顕微鏡画像
【通常の光学顕微鏡画像】
凹凸のある対象物では一部にしか焦点が合わない。
レーザによる超深度画像
【レーザによる超深度画像】
画像全てにピントが合い且つ高解像度で観察可能。
カラーレーザ超深度画像
【カラーレーザ超深度画像】
高解像度・超深度・カラーでの観察が可能。

レーザー顕微鏡の観察画像(半導体バンプx100)

粗さや形状を測定する際には観察画面上でポイントを指定するだけで形状測定ができるため
以下のようなメリットが発生します。

  • 測定ポイントを正確に指定することができる
  • 形状と画像を同時に確認できるため構造の確認が容易
観察画像と形状の同時比較&高解像度・超深度画像取得
レーザ顕微鏡の粗さ測定画面

図は実際のレーザー顕微鏡VK-Xシリーズの粗さ測定画面の一例です。
接触式では基板上パターン上部に触針を設置することは困難ですが、レーザー顕微鏡の場合は画面上で確認できるため容易に行えます。

大型対象物への対応

大型対象物対応ステージとレーザー顕微鏡の組み合わせ例
大型対象物対応ステージとレーザー顕微鏡の組み合わせ例

通常、顕微鏡タイプの場合ではXYステージ乗るような対象物以外は測定できません。レーザー顕微鏡VK-Xシリーズでは顕微鏡を測定ヘッド部と土台部の二つに分けることができる構造となっています。
大型対象物専用の治具により対象物に対する制限はありません。図はFPDパネル用大型ステージと組み合わせた例です。

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