保持具
工作機械を使った加工現場では、治具をはじめとする保持具は欠かせません。ここでは、保持具がなぜ重要なのか、また代表的な保持具である治具(ジグ)の種類やNC旋盤で使われる保持具について説明します。
保持具の重要性
金属加工の現場を見ると、加工の精度向上や効率化、安全対策などを目的として、加工器具や加工物の取り付け用器具をはじめ、ガイド用の治具(ジグ、jig)といったさまざまなタイプの保持具を活用していることがわかります。
こうした器具類は段取り替えやけがきなどの手間を省くとともに、正確でスピーディな加工を行う上で欠かせないものです。汎用的な保持具が各種販売されているほか、取り付け用器具や治具を独自に開発、製作して、難易度の高い加工を可能にしている加工メーカーがあります。
マシニングセンタをはじめとして加工の自動化が飛躍的に進歩している一方、単に加工装置を導入して運用するだけでは発注者のニーズに十分応えることが難しくなっている現在、加工の付加価値を追求する上で保持具は重要な位置づけを占めています。
治具
保持具の中でも、治具(治工具)は加工の良し悪しを左右する器具といえます。加工物の位置決めや工具のガイド、固定などさまざまな機能を果たします。これは同じ部品を正確かつ効率よく製造するためのガイド部品です。また、作業者が変わっても品質にブレが生じない加工を実現する上で大切な役割を果たしています。
治具は、加工物を水平に保つ定盤と加工物を固定する装置などで構成されています。これにセットするだけで、けがきなどの手間を省いて、だれでも正確な加工ができる点が特徴です。この中には複数の種類の加工に対応したものから、単一の加工物に特化した専用治具までさまざまそろっています。
汎用的な定盤やバイス(万力)、治具ベース、クランプ(コの字型の締め付け金具)などは市販されているほか、治具メーカーが各種の製品を販売しています。また、必要に応じて専用の治具を自作する場合も多いです。
NC旋盤の保持具
NC旋盤の保持具としては、加工物を固定するチャックの「爪(生爪=なまづめ)」を挙げることができます。ひとくちに爪といっても標準装備のものから専用に製造したものまで多種多様です。
大きくは生爪、硬爪があります。生爪は精度が求められる加工や仕上げ加工に用います。あえて焼き入れをせずに切削しやすい材料で製造されていて、必要に応じて爪部分を切削加工した後、加工物を固定します。一方、硬爪は現場では「おに爪」とも呼ばれ、主に粗加工に用いられます。
このほか、NC旋盤の保持具の属するうち、大がかりなものとしては、加工物をNC旋盤に送り込む自動ワーク搬送脱着装置などがあります。