顕微鏡の照明法

透過照明による光の当て方や光源の違い、顕微鏡の照明法についてご説明します。

主な照明法

顕微鏡による観察では、観察対象への光の当て方が重要な役割を果たします。照明法は、大きく「透過照明」と「落射照明」の二つに分かれます。対象や目的によって適した照明法を選ぶ必要があります。

透過照明

試料の背面から光を当てることを透過照明といいます。無色透明な細胞など生物系の観察に向いています。一般的な生物顕微鏡がこの方法を採用しています。透過照明の中には、明視野照明法と暗視野照明法の2種類があります。

明視野照明法

試料を背面からの光で透かして観察する一般的な方法です。明るい背景の中に、背景よりも暗い部分が浮かび上がります。

暗視野照明法

背面からの光で照らすのは明視野照明法と同じですが、直接光をさえぎることで、暗い背景の中に試料の輪郭を光らせる点が特徴です。コントラストの低い細胞などの観察に向いています。この観察を行うには、暗視野コンデンサーが必要です。

落射照明

透過照明とは逆に試料の正面から光を当てることを、落射照明といいます。実体顕微鏡で鉱物や工業加工物などの立体物や不透明な試料を観察する際に便利です。

透過照明による光の当て方

コンデンサーレンズがついた光学顕微鏡で透過照明を用いる場合、光の当て方によってケーラー照明および散光照明、クリティカル照明の3種類があります。

ケーラー照明

光を対物レンズの後方に集める方法です。透過照明では最も頻繁に用いられ、明るく、光のムラが少ないのが特徴です。高倍率での観察や写真撮影の際に欠かせません。

散光照明

反射鏡の上に散光板を設置することで、ムラのない照明を可能にします。ただし、散光板を通した光となるため、若干暗めとなります。

クリティカル照明

光を試料面に集める方法です。明るいのが特徴ですが、ムラが生じやすい欠点があります。

光源の違い

使用する顕微鏡によって用いる光源が異なります。それぞれの特性を理解した上で、適切な光源を使用する必要があります。

光学顕微鏡向け

自然光

室外からの光を反射ミラーに当て、試料に照射します。この際、直射日光を避けなければなりません。また、蛍光灯などの人工光源を自然光の代わりにすることができます。

タングステンランプ

いわゆる白熱電球で、従来、光学顕微鏡で広く用いられてきました。入手がしやすい上、安く購入することができます。

ハロゲンランプ

白色に近く、明るさにムラがないのが特徴です。タングステンランプより高価である反面、寿命が長いというメリットがあります。

蛍光顕微鏡向け

水銀ランプ

高圧水銀ランプともいいます。蛍光顕微鏡で観察する際、蛍光物質の特定の波長を励起させる光源として一般的に用いられています。紫外から近赤外までの広い波長で強いパワーを得ることができ、フィルターを用いることで、必要とする波長の光を当てることが可能となります。波長域によって多種多様なフィルターが存在し、使用する蛍光色素にあわせて組み合わせることで、特定の蛍光を選択的に検出できます。メタルハライドランプも水銀ランプの一種です。点灯させるには、高圧の電源装置を必要とします。

キセノンランプ

一般的にはカメラのストロボに使われているランプです。光の輝度が高いのが特徴です。

LEDランプ

単体のLEDでは比較的波長幅の狭い光を発する為、LEDと蛍光体の組み合わせや、複数のLEDの組み合わせによって白色光を得ます。コンパクトで消費電力が小さく、寿命が長いというメリットがありますが、LEDの組み合わせによっては特定の波長でパワーが劣るなどのデメリットも生じます。

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