主な種類と性能
顕微鏡の主な種類と性能についてご説明します。
拡大観察と器具
顕微鏡は、簡単に言えば、対物レンズと接眼レンズという二つの凸レンズを用いて、きわめて小さなものを大きくして観察するための装置です。一般的に研究用に用いられるものは、観察対象(試料)に可視光や紫外光などを当てて観察するため、光学顕微鏡と呼ばれます。従来、広く利用されているのは、生物顕微鏡もしくはその構造に応じて正立/倒立顕微鏡と呼ばれ、倍率は数十倍から1500倍程度のものを指します。
なお、観察の現場では、数倍程度の拡大観察であれば拡大鏡(虫眼鏡、ルーペ)を用い、10倍~50倍では双眼実体顕微鏡、50倍~1500倍までは正立/倒立顕微鏡を使用します。
倍率ごとに観察可能な物
倍率 | 使用する観察器具 | 観察できるものの例 |
---|---|---|
1倍 | 肉眼 | 毛髪(0.1mm程度) |
2~5倍程度 | 虫眼鏡 | 植物や昆虫の構造 |
10~20倍程度 | 双眼実体顕微鏡 | ミジンコなどの微生物 |
50倍程度 | 正立/倒立顕微鏡 | 昆虫の複眼などの細かい構造 |
100倍程度 | 正立/倒立顕微鏡 | ゾウリムシなどの構造 |
200倍程度 | 正立/倒立顕微鏡 | 花粉などの構造 |
400倍程度 | 正立/倒立顕微鏡 | ミドリムシなどの構造 |
800~1500倍程度 | 正立/倒立顕微鏡 | 細胞や染色体などの構造(0.2μm程度) |
2000倍~100万倍程度 | 電子顕微鏡 | 1μm~0.1nm 例…DNA(2nm) |
豆知識:倍率1倍の基準とは?
倍率1倍は人間の目で近くの物がよく見える状態を基準にしています。その距離が250mm(明視距離)であることから、ここから見える大きさを1倍と決めています。
顕微鏡の主な種類
顕微鏡には主に次のような種類があります。一般に顕微鏡といえば、光学顕微鏡を指します。このほかに、電子顕微鏡や走査型プローブ顕微鏡などがあります。
光学顕微鏡
小分類 | 概要 |
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双眼実体顕微鏡 | 立体物を低倍率で手軽に観察できる顕微鏡。 |
明視野顕微鏡 | 代表的な顕微鏡。透過光を用いて対象物を高倍率で観察。 |
偏光顕微鏡 | 物質によって光を通す性質が異なる点を利用した顕微鏡。結晶などの観察向き。 |
位相差顕微鏡 | 光の干渉を利用し、微細な凹凸を可視化する。染色なしで生きた細胞を観察する際に使用。 |
微分干渉顕微鏡 | 位相差顕微鏡と同様に微細な凹凸を可視化するが、細部の解像度が優れる。その半面、偏光を利用するため観察可能な容器は限定される。 |
蛍光顕微鏡 | 試料が発する蛍光を観察。高圧水銀ランプなどの特殊な光源を使用。明視野顕微鏡にオプション機器を装着して蛍光顕微鏡として用いることが可能。 |
全反射蛍光顕微鏡 | 試料の表面近くだけを照らすエバネッセント光を用いた蛍光顕微鏡。背景光を低減できるため、1分子の単位から観察が可能。 |
レーザー顕微鏡(共焦点レーザー顕微鏡) | レーザービームを用いることで、厚みのある試料など焦点距離の異なる対象物をクリアに観察することが可能。 |
多光子励起顕微鏡 | 複数の励起光を用いることで、細胞へのダメージが少なく、高解像度の深部観察が可能に。脳内における神経細胞や血流などの観察に用いられている。 |
構造化照明顕微鏡 | 超解像顕微鏡の一つで、光の回折限界による光学顕微鏡の解像度の限界を超える技術をもとに開発されました。 |
電子顕微鏡
小分類 | 概要 |
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透過型(TEM)、走査型(SEM)など | 光ではなくて、電子線を対象物に当てて拡大する顕微鏡。 |
走査型プローブ 顕微鏡(SPM)
小分類 | 概要 |
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原子力間(AFM)、走査型近接場光(SNOM)など | 先のとがった探針で対象物の表面をスキャンし、針と物体との相互作用を用いて微細な表面形状や物性を測定する。 |
その他
小分類 | 概要 |
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X線顕微鏡、超音波顕微鏡など | - |
光学顕微鏡に関しては、上記の分類のほか、次のような分け方があります。
観察対象、用途での分類
- 生物顕微鏡
- 代表的な顕微鏡。観察対象をスライスした後、プレパラートに固定してスライド上で観察。倍率は50~1500倍程度。
- (双眼)実体顕微鏡
- 昆虫や鉱物など観察対象をスライスすることなく、そのままの状態で観察することが可能。倍率は10~50倍程度。双眼タイプのため、対象物を立体的に観ることができる。
構造での分類
- 正立顕微鏡
- 観察対象を上から観察。プレパラートに乗せて観察する場合に使用。
- 倒立顕微鏡
- 観察対象を下から観察。シャーレ内の培養液に浸けた細胞などの観察に使用。