顕微鏡の観察法

顕微鏡の観察方法は様々です。それぞれの観察方法やその特徴などをご説明します。

観察方法による比較

生物顕微鏡は、基本的に透過光によって観察を行います。しかし、照明法で見たように、試料によって無色透明であったり、光を通さなかったりなど、さまざまな対象があるため、光の性質を利用してそれぞれに適した観察法が開発されてきました。

主な観察法の特徴は下記の通りです。光の散乱や回折、偏光、干渉、蛍光といった性質を利用して、観察法が編み出されています。

観察方法 特徴 主な観察対象
明視野観察法 生物顕微鏡による一般的な観察方法。透過照明を用いて、視野が明るいのが特徴 生体、細胞
暗視野観察法 直接光を当てず散乱光を利用し、暗い視野の中で試料を光らせて観察 微生物や細胞
位相差観察法 光のずれである位相を利用して、試料を明暗のコントラストに変換して観察 無色透明の試料、生きている細胞
偏光観察法 偏光させた照明で照らし、試料の明暗や色のコントラストに変換して観察 岩石や鉱物などの結晶、高分子
微分干渉観察法 透過光が試料を抜けて進む際の距離の違いを利用して、色や明暗のコントラストを付けて立体的に観察 無色透明の試料、生きている細胞
変調コントラスト(レリーフコントラスト)観察法 試料の高低差を明暗のコントラストに変換して立体的に観察 プラスチック容器内の細胞
蛍光観察法 試料を蛍光化合物やGFPなどの蛍光タンパク質で染めて、蛍光部分を観察 蛍光色素で染色もしくは標識した細胞や組織、自家蛍光を発する生体
反射照明観察法 光を透過しない試料について、反射光を用いて観察 金属など
分散観察法 試料をインデックスオイルに浸けて、浸液の中で拡散した透過光を利用して観察 アスベストの検出

それぞれの観察法

明視野観察法

生物顕微鏡で一般的に用いられる観察法です。試料全体を直接光で照らし、透過光もしくは反射光で観察します。背景が明るいのが特徴です。染色した試料をはじめ、病理検査や半導体の検査などで広く用いられています。

暗視野観察法

試料を透過、反射した光を対物レンズに入れず、試料により散乱、回折した光だけを対物レンズに入れることで、暗い視野の中に散乱、回折した光だけを写し出すことができます。明視野観察では識別が難しい、生きた細胞など無色透明の試料を見るのに適しています。また、光学顕微鏡の解像限界を超えて、小さな部位を観察できる点が特徴です。
暗視野観察には専用のコンデンサーを用います。

位相差観察法

光の回折現象によって、位相差という光のずれが生じることに着目した観察法です。生物の組織や細胞のように無色透明な物体は、明視野で観察するのは困難ですが、部分的に屈折率や厚みが異なることから、位相差が生じます。それを明暗のコントラストに変えることで、試料の観察を可能にします。
従来、暗視野でしか観察できなかった細胞などを明視野で観察できるようにしたものです。また、試料を染色する必要がないため、生きた状態で観察が可能です。観察にはリング状のスリットが入った位相板を用います。

偏光観察法

光の振動方向が偏る偏光という現象を利用した観察法です。偏光した照明で試料を照らし、偏光板を回して観察します。試料からの偏光と偏光板の方向が平行の場合は明るく写り、直交する場合は暗く写ります。
この方法によって、岩石や鉱物の薄片を観察することで結晶構造を知るのに役立ちます。また、繊維や高分子、半導体、骨組織などの観察にも用いられています。
専用の対物レンズおよび、ポラライザーとアナライザーの2種類の偏光板を用いて観察を行います。

微分干渉観察法

位相差観察法と同様に、無色透明の試料の観察に適しています。ただし、位相差観察法が光の回折現象を利用しているのに対して、微分干渉観察法は光の進み方の違い(光路差)を明暗のコントラストに変えることで、観察を可能にしています。
比較的厚みのある試料の観察に向いていて、試料を立体的に見ることができます。また、位相差観察法の画像と相補の関係にあるため、両方の観察結果を比べることでより正確な観察ができます。
対物レンズに「DIC」の表記がある場合、この観察法に適していることを意味します。

変調コントラスト観察法

位相差観察法や微分干渉観察法と同様、無色透明の試料を観察するのに有効な観察法です。レリーフコントラスト観察法とも呼ばれ、試料の高低差を明暗のコントラストに変えて観察します。
微分干渉観察法とは原理が異なるものの、観察画像が立体的に見える点は同じです。一方、微分干渉観察法はプラスチック容器が使用できないのに対して、変調コントラスト観察法は使用が可能であるのが特徴です。そのため、精子や卵細胞の観察に向いています。

反射照明観察法

透過光ではなく、反射光を利用して観察するのが特徴です。岩石や鉱物のように光を通さない試料の観察に適しています。反射明視野観察法をはじめ、反射暗視野観察法、反射微分干渉観察法などがあります。

分散観察法

試料をインデックスオイルに封入して観察する方法です。オイルの屈折率の違いによって光が分散する現象を利用して観察します。主にアスベストを検出し、種類を同定するために用います。

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