最新規格Wi-Fi6Eとは

従来のWi-Fiは、2.4GHz帯と5GHz帯という2種類の周波数を使用していました(※IEEE 802.11ad/WiGigとして60GHz帯もありますが普及していないため省略)。しかし、2022年9月2日に総務省が電波法施工規則などを一部改正し、新規格の『Wi-Fi6E』では2.4GHz帯と5GHz帯に加え、新たに6GHz帯の利用が可能になりました。こちらでは、最新規格となるWi-Fi6Eについて説明します。

Wi-Fi6Eとは

Wi-Fi6Eは、Wi-Fi6の拡張版として新しく誕生した規格で、最後に追加されている“E”は『extended:拡張』の意味です。Wi-Fiの通信規格については、Wi-Fi6と同様にIEEE 802.11axをベースとしています。アメリカや欧州(EU)など、すでにWi-Fi6Eを使える国もありますが、日本では2022年9月2日から解禁され、新しいWi-Fi規格として注目が集まっています。

Wi-Fi6とWi-Fi6Eの違い

Wi-Fi6Eは2.4GHzと5GHzに加えて6GHzも使用可能に。

Wi-Fi6とWiーFi6Eの大きな違いは対応周波数です。Wi-Fi6は2.4GHz/5GHzの2つの周波数に対応していましたが、Wi-Fi6Eは2.4GHz/5GHzに加えて6GHz(5.925GHz~7.125GHz)帯域の3つに対応しています。対応周波数が増えたことで使えるチャンネル数が多くなり、より高速な通信が可能になり、また速度低下が起こりにくくなったことが大きなメリットです。また、6GHz帯は、新たに追加されたものなので、他の電波と干渉する可能性が低いといったメリットもあります。

5GHz帯と6GHz帯の違い

5GHz帯と6GHz帯での大きな違いは、主に『使用できるチャンネル数が増えてスムーズな通信が可能』『使用機器が少ないので電波干渉や電波混雑を避けられる』という2点です。

使用できるチャンネル数が増えてスムーズな通信が可能

周波数帯 2.4GHz
(82MHz幅)
5GHz
(400MHz幅)
6GHz
(480MHz幅)
周波数帯 2.4GHz
(82MHz幅)
選択可能チャンネル数 選択可能チャンネル数
3(20MHz)、1(40MHz)
3(20MHz)、1(40MHz)
周波数帯 5GHz
(400MHz幅)
選択可能チャンネル数
5170MHz~5330MHz:20(20MHz),10(40MHz),5(80MHz),2(160MHz)、5490MHz~5730MHz:20(20MHz),10(40MHz),5(80MHz),2(160MHz)
5170MHz~5330MHz:20(20MHz),10(40MHz),5(80MHz),2(160MHz)、5490MHz~5730MHz:20(20MHz),10(40MHz),5(80MHz),2(160MHz)
周波数帯 6GHz
(480MHz幅)
選択可能チャンネル数
5945MHz~6425MHz:24(20MHz),12(40MHz),6(80MHz),3(160MHz)
5945MHz~6425MHz:24(20MHz),12(40MHz),6(80MHz),3(160MHz)
  • 干渉しないチャンネル配置から選択する場合の選択可能チャンネル数です。
  • 図中で青色に示された周波数帯は日本で利用できる周波数帯です。灰色で示された周波数帯も規格の対象ですが、日本では利用できない周波数帯です。

今回の法改正で使用可能になった6GHz帯(5925M~6425MHz)の周波数帯について、日本国内では1チャンネルが20MHzの場合(HE20)は24チャンネル、40MHzの場合(HE40)は12チャンネル、80MHzの場合(HE80)は6チャンネル、160MHz(HE160)の場合は3チャンネルが使用可能になっています。

従来の5GHz帯域では、1チャンネルが20MHzの場合(HE20)は20チャンネル、40MHzの場合(HE40)は10チャンネル、80MHzの場合(HE80)は5チャンネル、160MHz(HE160)の場合は2チャンネルの使用が可能だったため、選択可能なチャンネルが増えたことで、より快適な通信が可能になります。

チャンネル被りを避けることができ、チャンネルごとに接続機器を分散できるので、通信品質の安定が見込めるというわけです。また、複数のチャンネルを束ねて通信帯域を拡大する『チャンネルボンディング機能』もチャンネル数が増えたことで使いやすくなり、高速かつ安定した通信が可能になります。

使用機器が少ないので電波干渉や電波混雑を避けられる

2.4GHz,5GHz 既存電波が多く電波干渉しやすい。6GHz FA無線のみで電波干渉しづらい。

Wi-Fi6Eで使用可能になった6GHz帯は、現状では対応端末が少なく、通信速度の遅い端末も存在しないことから、電波干渉や電波混雑などの影響を受けにくく、速度低下もしにくいというメリットがあります。

たとえば、道路をイメージしてください。車線数をチャンネル数とした場合、純粋にチャンネル数が増えたことで道路幅が広がり、通行がスムーズになります。さらに接続機器が少ないので、走行しているクルマも少なくなり、通行がスムーズになります。また、2.4GHzや5GHzのように古い世代の低速な端末との接続もないので、低速で走行するクルマもいなくなり、渋滞の発生も抑えられます。結果として快適な通信が可能になります。

とくに複数のWi-Fi機器などがあるオフィスや工場のような環境では、電波干渉で電波混雑が発生しやすいので、6GHz帯のWi-Fi6Eは効果的と考えられます。

Wi-Fi6Eのメリット

Wi-Fi6Eのメリットは、前述したとおり、チャンネルを多く割り当てられるようになり、使用機器が少ないことによる電波干渉や電場混雑が避けられることにより、複数機器を接続しても安定した高速通信が可能なことです。

また、5GHz帯は、気象レーダーや航空レーダーのレーダー波にも利用され、レーダーとWi-Fiの干渉を防ぐために、Wi-Fi機器にはレーダー波を検出すると5GHz帯の電波を停止する「DFS(Dynamic Frequency Selection)」という機能の搭載が義務化されています。対する6GHz帯は、DFSの制限がなく、レーダー波の干渉を受けないので安定した通信が可能というメリットもあります。

ただし、これらのメリットを享受するには、Wi-Fiルーターやアクセスポイントだけではなく、端末(子機)側も6GHz帯に対応した製品を使用することが大前提になります。Wi-Fi6Eに対応したルーターやアクセスポイントの多くは、2.4GHz/5GHz/6GHzという3つの周波数に対応しているので、これまでの製品が使用できなくなるということもないのでご安心ください。

そのほかについては、基本的にWi-Fi6と同じIEEE 802.11axをベースに開発されているので、機能面は同様になります。

海外を含む電波法について

Wi-Fi6Eの導入に関しては、国や地域によって差があります。日本では2022年9月2日から解禁となりましたが、EUやアメリカ、イギリス、韓国、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ペルーなどでは、それ以前から使用可能でした。ただ、そのほかでは検討中の国などもあるので、たとえば海外の拠点などで使用する場合には注意が必要です。

また、Wi-Fi6Eの許可が出ている国や地域でも使用可能な周波数が異なる場合もあります。Wi-Fi6Eの技術仕様では、5925~7125MHz(1200MHz幅)までの帯域、チャンネル数は最大59(20MHz)となっていますが、日本ではそのうち5925~6425MHz(500MHz幅)、チャンネル数は最大24(20MHz)に制限しています。

海外では、欧州(EU)は日本と同様の5925~6425MHz(500MHz幅)を採用。欧米や韓国では5925~7125MHz(1200MHz幅)を許可しています。そのほかにも国や地域によって電波出力や屋内外の使用条件などは異なりますので、海外での使用を想定している場合は各国の電波法などを確認ください。

アメリカ/EU/日本の6GHz帯 規定

SPモード時の周波数 LPIモード時の周波数 VLPモード時の周波数
アメリカ SPモード時の周波数 アメリカ 5925-6425,
6525-6875MHz
5925-6425,6525-6875MHz 欧州(EU) 5925-7125MHz - 日本 -
欧州(EU) LPIモード時の周波数 アメリカ - 5925-7125MHz 欧州(EU) 5925-6425MHz 日本 5925-6425MHz
日本 VLPモード時の周波数 アメリカ - 欧州(EU) 5925-6425MHz 日本 5925-6425MHz

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