画像センサによる外観検査
外観検査は、品質保証の観点から全数検査が望ましく、近年は画像センサの導入が進んでいます。こちらでは、画像センサの基本的な知識、メリットとデメリット、専用検査装置との違い、画像センサに付随するレンズや照明などの周辺機器の選び方、外観検査を自動化するメリットなどをご紹介します。
画像センサとは
目視検査は、目で認識したワークを限度見本と比較し、脳で考えて良否を判定します。この人間の“目”をカメラ、脳を“コントローラ”に置き換えたものが「画像処理システム」「画像センサ」です。画像センサは、カメラで撮像したデータを処理し、対象物の位置や角度、形状、寸法、数量などを出力し、登録したデータと照合して合否判定を行います。人が目で見て判断する工程にかわって検査を行い、自動化するシステムというわけです。
画像センサのメリット・デメリット
画像センサは、これまで人の目に頼っていた外観検査を自動化する有効な手段です。しかし、メリット・デメリットを理解せずに導入すれば、予想していた効果が得られなかったという事態に陥ってしまいます。そこで画像センサのメリット・デメリットの一部をご紹介します。以下記載内容のほかにも人件費削減、24時間安定稼働、検査スピードアップ、汎用性の高さ、ヒューマンエラーの防止など、さまざまなメリットがありますので、抱えている課題やコストを考慮して上手に導入しましょう。
メリット
- 微細な異物・傷・欠陥の判別が可能
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従来のカメラは画素数が少なく、微細な欠陥の判別が困難でした。しかし、カメラや画像処理技術の発展により、近年では肉眼で確認が難しい、拡大鏡や顕微鏡を必要としていた微細な変化も検知可能です。キーエンスの画像センサは、クラス最大画素数である2100万画素カメラをはじめとした高画素のカメラもラインナップされており、目視では発見が難しいレベルの異物・傷の検査にも対応可能です。
- インラインでの全数検査を実現
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目視検査は、オフラインで行うことが一般的です。しかし、画像センサを活用することで、インラインで正確に異物・傷・欠陥の検査が可能。ライン稼働中に検査が行えるので効率的です。
デメリット
- イニシャルコストがかかる
- 目視検査に比べて、初期の開発費・設置費などがかかり、インライン検査を行う場合はライン設計を見直す必要もあるのでイニシャルコストがかかります。しかし、キーエンスの画像センサは、31万画素〜2100万画素と幅広い画素数のカメララインナップがあるため、予算に合わせて選択でき、設定も簡単なので最小限のコストで導入が可能です。
画像センサと専用検査装置との違い
外観検査のインライン化や自動化の方法として、画像センサのほかに専用検査装置があります。どちらも「外観検査を自動化する」「インライン検査を実現する」「検査工程の手間・時間を削減する」といった目的は同じです。しかし、それぞれにはメリット・デメリットがあります。
専用検査装置は、検査に特化した装置になりますので、当たり前ですが外観検査に必要なスペックを満たしています。しかし、高価で汎用性が低いというデメリットがあります。一方で画像センサは汎用性が高く、部品・製品の仕様変更はもちろん、ライン設計の変更などにも柔軟に対応可能。外観検査のみならず、寸法測定や数量のカウント、産業用ロボットと組み合わせて位置決めや搬送など幅広い用途に利用できることがメリットです。そのため高価な専用検査装置を購入したけど、仕様変更で利用できずに無駄になるという心配もありません。
レンズ・照明を使って外観検査を安定化
画像センサは、検査対象のワークを撮像するカメラ(撮像素子およびレンズ)、ワークを照らす照明、撮像したデータを処理・出力するコントローラなどによって構成されています。そして安定した検査を行うには、まずはワークを確実に撮像する必要があります。高精度で安定した外観検査を行うには、「対象物を大きく映す」「ピントの合った画像を映す」「明るくはっきりした画像を映す」という3つが大切でレンズ・照明の選定が重要になります。
レンズ選びの基礎知識
カメラ用レンズは、視野・焦点距離・被写界深度・歪みなどの選定ポイントがありますが、今回は安定化を実現するために押さえておくべき焦点距離と被写界深度についてご説明します。
- 焦点距離
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焦点距離とは、ピントを合わせたときのレンズから撮像素子までの距離です。FA用レンズには、代表的なものとして8 mm/16 mm/25 mm/50 mmといった仕様のレンズがありますが、撮影対象のワークに必要な視野と焦点距離から焦点の合う位置(WD:ワークディスタンス)を求めることができます。WDと視野の大きさは、レンズの焦点距離と撮像素子のサイズで決まり、接写リングが不要な最至近距離以上では、次の比例式で表されます。
WD:視野角=焦点距離:撮像素子サイズ
例1 : 焦点距離16 mmレンズ、撮像素子サイズ3.6 mmの場合、視野を45 mmにするには、WDは200 mmとなる。
- 被写界深度
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通常のデジタルカメラで、被写体にピントを合わせて奥や手前をぼかす撮影方法がありますが、このピントの合う奥行きを決めるのが被写界深度です。通常、焦点距離が短いレンズほど深度が深く(手前や奥がぼやけなくなる)なります。また、対象物までの距離が遠くなればなるほど、絞りを絞っているほど深度の範囲が深くなります。そこで高低差のあるワークの外観検査を行う場合は、接写リングやマクロレンズを使用せず、できるだけ対象物の距離が遠くなるレンズを選ぶことと、できるだけ絞れるように明るい照明で照らした方がピントが合いやすくなります。
照明選びの基礎知識
上述しましたが、ピントの合った画像を撮像するには、できるだけワークを均一に明るく照らし出すことが重要です。それに加えて、検出するワークの素材や形状、検査内容などによって照明を選定する必要があります。照明選びの例を以下にいつくか挙げてみましたので参考にしてください。詳しくは事例ページや以下の「FAの画像処理を基礎から学べるサイト 画像処理.com」をご覧ください。
- 金属表面の刻印有無検査
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フラットな金属表面の凹凸を検出する必要があるので「正反射タイプ」のLED照明が最適です。
- 透明テープ越しのチップ印字検査
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照明の映り込み(ハレーション)が起こりやすいので、斜めから照射する「拡散反射タイプ」のLED照明が最適です。
- リード端子の寸法測定
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正確な寸法を計測するために、対象ワークの輪郭をシャープに映すことができる「透過タイプ」のLED照明が最適です。
画像センサによる外観検査で大幅タクトアップ
量産の現場では、1つの部品もしくは製品を何秒で生産するのかを示す時間「タクトタイム」があります。このタクトタイムが短くなれば、短時間で生産ができるので製品単価を抑えたり、生産量を増やしたりすることができます。そこで生産現場ではタクトアップが重要な課題になります。
画像センサで外観検査を行えば、従来はオフラインで行っていた検査をインライン化でき、外観検査の時間を短縮できます。また、外観検査に左右されることなく、生産ラインをフル稼働できるので大幅なタクトアップが実現可能です。実際に画像センサを導入してタクトアップした事例などは、「不良の発生と外観検査事例」をご覧ください。