自動車業界

エンジンやパワートレインなど過酷な環境下で使用される自動車部品は、耐摩耗性や耐疲労性を高めるために熱処理が施されます。それは鋼材に限らず、アルミや樹脂、カーボンなど多種多様な素材に対して行われます。こちらでは、そんな自動車業界の熱処理工程における温度管理の事例について、キーエンス商品を活用したソリューションを交えてご紹介します。

アルミ溶解炉の温度管理

アルミ溶解炉の温度管理

自動車のボディなどには、高強度で加工性に優れ、複雑な構造に適した鉄が使用されてきました。しかし、近年は燃費性能の向上を目的に軽量化の重要度が増し、従来は一部の高級車やスポーツカーにしか採用されていなかったアルミが素材として使用されるケースが増えています。しかし、アルミは鉄に比べて扱いが難しい面があり、熱処理工程も同様です。

アルミから部品を製造する場合、通常は原材料をアルミ溶解炉で溶かして成型します。一般的にアルミ溶解炉は720〜750度で管理しますが、温度が低ければ湯まわり不良が発生し、鋳巣(引け巣やブローホールなど)につながります。逆に温度が高すぎれば共晶相が融解し、その部分が膨張して鋳物表面に膨れが生じ、凝固すると収縮して空孔になります。そこで熱処理工程ではシビアな温度管理が求められます。

キーエンスの記録計「TRシリーズ」であれば、温度センサからの情報をデジタルデータとして収集・管理・解析でき、正確かつ緻密な温度管理が可能です。ペーパーレス化によってチャート紙やインク切れなどの不安もなくなり、ランニングコストの削減にもつながります。また、上限値や下限値を設定することで異常時のアラーム判定もでき、プリンタ搭載モデルであれば自動でチャート紙に印字することも可能です。

熱処理炉温度管理

熱処理炉温度管理

鋼材の性質を調整する「焼入れ」「焼もどし」「焼なまし」「焼ならし」などの熱処理工程では、一定の温度と時間で加熱し、冷却する必要があります。温度が高すぎても低すぎても、時間が長すぎても短すぎても不良につながります。そこで熱処理炉の温度を常に監視し、記録することが大切です。温度管理の記録漏れがあると品質管理に影響が生じ、最悪の場合はロットすべてを破棄という事態となり大きな損失につながります。

しかし、熱処理は長時間にわたる工程も多く、例えば紙を使って記録していると用紙切れで記録漏れが発生することもあります。さらに従来の記録紙を使った方法は、熱処理サイクルを判断する際にチャート紙に定規をあて数値を読む、OHPシートと重ねて比較するなど、作業者によって誤差が発生する可能性もあり、スピードや正確性にも課題がありました。

キーエンスのタッチ型パネルレコーダ「TR-Wシリーズ」であれば、内部フラッシュメモリ2領域と外部フラッシュメモリ1領域の合計3領域にデータを保存するので、万が一の記録漏れを防ぐことができます。さらに予め基準となる熱処理サイクル波形を登録し、しきい値として使用することも可能。スピーディで正確な炉内の温度監視・記録・解析を実現します。

また、TR-Wシリーズは、一般的な組込式に加え、持ち運べるポータブルタイプも設定しているので利便性が格段にアップしました。プリンタを内蔵したタッチ型パネルレコーダ「TR-Hシリーズ」であれば、デジタルデータと紙に二重にバックアップができるのでデータ欠損のリスクを極限まで下げることができます。

車載向け基板製造における樹脂硬化炉の温度データ管理

車載向け基板製造における樹脂硬化炉の温度データ管理

近年の自動車は電子制御が進み、多くの制御基板が使用されるようになっています。それら車載向け基板の製造では、樹脂硬化炉を使った熱処理が行われます。樹脂硬化炉は、炉内の温度上昇時にある一定時間を過ぎてからは、品質を一定に保つために設定温度以上に上がらないようにするなど温度変化を常時監視する必要があります。さらに製品を納品する際、品質を証明するために紙媒体での加熱状態のデータ提出を求められるケースも増えています。

キーエンスのプリンタ搭載タッチ型パネルレコーダ「TR-Hシリーズ」は、そのようなお客様の要望にお応えするためにチャート紙とデジタルメモリへのリアルタイム保存を両立。従来であれば2台のレコーダが必要な場面でも1台で完結します。さらに世界初の機能として、特定ロットだけの印字、トラブル時のみの印字など、必要なところだけチャート紙に印字することも可能です。

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