鉄鋼業界
鉄鋼材料は、使用目的にあわせて「焼入れ」「焼もどし」「焼なまし」「焼ならし」などの熱加工を行い製品化されます。こちらでは、鉄鋼業界の熱処理工程における温度管理の事例について、キーエンス商品を活用したソリューションを交えてご紹介します。
ワニス焼付炉の温度管理
鉄鋼業界では、絶縁や防錆、強度向上などを目的としてワニス含侵などの処理を行うことがあります。その際、ワニスの乾燥・焼付のために乾燥炉・焼付炉を用いた熱処理を行いますが、目的の特性を得るためには決められた温度と時間で加熱する必要があります。焼付温度が高いとワニスが蒸発して剥がれてしまい、焼付温度が低いと焼付不良につながるため、品質を保証するためには焼付温度の収集・管理が必須。銅線であれば温度管理データの保管期間は一般的に10年ほどです。
通常のワニス焼付炉は、ダンパーの開閉を人の手で行っていますが、チャート紙では開閉時の温度変化を正確に読み取ることが困難でした。キーエンスのタッチ型パネルレコーダ「TR-Wシリーズ」であれば、チャート紙を重ねて確認するように同一画面上で波形を重ねて比較できるので一目で判別できます。
また、プリンタ搭載タッチ型パネルレコーダ「TR-Hシリーズ」であれば、チャート紙にデータを残すこともできます。従来のチャート記録計は常に印字していますが、TR-Hシリーズはチャート保存が不要なデータはデジタルデータとして管理、必要な部分のみ印字するといった使い方もできるので経済的です。長期保存が必要なチャート紙がかさばって保管に困るという事態も避けられます。
圧延加熱炉の温度記録
製鋼では、スラブ(鋼片)から所定の厚みの鋼板に仕上げる工程を「圧延」と呼びます。圧延では、スラブを加熱炉で加熱してから圧延機で所定の厚みになるまで伸ばしていきます。その際に圧延加熱炉の温度が一定に保たれていないと、板厚のばらつきや幅異常などの原因になります。
キーエンスのタッチ型パネルレコーダ「TR-Wシリーズ」は、高速サンプリングが可能なので微細な温度変化も読み取れ、画面上で担当者がデータの閲覧しながら監視し、チャート紙のようにタッチペンで画面上にコメントを書き込むこともできます。上限値、下限値、範囲内、範囲外、変化率などのアラームに加え、あらかじめ基準(マスター)になる波形を登録してしきい値として使用する「プロファイルアラーム」などの先進の判定機能も備え、確実な温度管理をサポート。それらのデータは、デジタルデータとして保存します。プリンタ搭載タッチ型パネルレコーダ「TR-Hシリーズ」は、デジタルデータに加え、チャート紙に記録することもできるので紙媒体に記録を残したいというご要望にも対応しています。
連続焼鈍炉の温度管理
熱間圧延後にさらに薄く仕上げる場合など、熱を加えずに行う圧延加工を「冷間圧延」といいます。鉄鋼材料は冷間圧延を行うと硬化してしまうため、一般的には冷間圧延後に材料を軟化させる焼鈍(焼なまし)を行います。
焼鈍では、鉄鋼材料を再加熱し、その温度で一定時間保持したあとに冷却する必要がありますが、その際に使われる炉が「連続焼鈍炉」です。連続焼鈍炉の炉体部は、一般的に加熱帯・均熱帯・冷却帯から成り立っています。この加熱サイクルの均一化が品質の安定化につながります。
また、トラブルや不良品が発生した際の品質保証として、記録計で連続焼鈍炉での温度管理は常に監視・記録する必要があります。従来はチャート記録計が用いられていましたが、チャート紙の確認や保管などに手間がかかっていました。キーエンスのタッチ型パネルレコーダ「TR-Wシリーズ」であれば、ディスプレイ上でリアルタイムに温度変化を確認でき、アラーム等の設定や検索も簡単です。耐久性も高く、記録紙やインクが切れて記録が途切れることもありません。ペーパーレス化によって記録紙やインクが不要になるので、ランニングコストやデータ保管の手間も省けます。