物流の基礎と目的について

「物流」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは「物流センター」や「倉庫」といった保管場所のイメージ、または荷物を積んだ「大型トラック」や港を行き交うコンテナ船がモノを「配送」「輸送」するといったイメージでしょう。しかし、どちらも物流のごく一面だけを捉えた不完全な理解です。ここでは、私たち現代人にとってなくてはならない物流というものの本質や目的などについて改めて考察していきましょう。

物流とは

物流とは、その名の通りモノの流れ=フローです。企業が自社の商品を消費者へ届けるすべての過程、プロセスを含む一連のフローこそ物流の本質と言えます。物流センターや倉庫などの保管場所、大型トラックによる配送、船や航空機などによる輸送はその通過点に過ぎません。突き詰めていくと商品を届けるための物流システムの情報処理なども含まれますが、詳しくは後ほど解説いたします。まずは、物流=モノを届けるために流れと理解しておきましょう。

「商流」との違い、「流通」の概念

物流と似た言葉に「商流」があります。こちらも、「生産」から「消費」という流れという点では物流と共通していますが、物流が純粋に生産物=商品の流れであるのに対して、商流とはその過程で生じる所有権の移転や代金決済、それに伴う交渉や契約、情報の移転といったフローを指します。もっとわかりやすく言えば、モノの取引活動とおカネの流れのことと言い換えてもよいでしょう。「流通」とは、この物流と商流という2つの構成要素からなる概念です。

ロジスティクスとの違い

物流と混同されがちな言葉として「ロジスティクス」が挙げられます。ロジスティクスとは、「兵站(へいたん)」を意味する英語で、戦時、必要な物資や兵を戦地に送り届けることを指した言葉です。戦争ではこの兵站が勝敗を分ける要素で、それだけに必要なものをスピーディー、かつ的確に供給する必要があり、そのためのノウハウが長い歴史を通じて蓄積されてきました。物流は、細かく分類すると「製造物流」「販売物流」「調達物流」からなりますが、こうした複雑なモノの流れを一元管理して、物流をより効率化するための考え方をロジスティクスと呼びます。ロジスティクスは、物流の上位概念と考えることができ、ロジスティクス=物流は間違った捉え方と言えます。ロジスティクスについては、「物流の歴史」でも詳しく解説します。

物流の目的

生産から消費までには時間的・空間的な隔たりがあります。 この生産と消費の間にある時間的・空間的ギャップを埋めることが物流の目的です。かつては、輸送効率を上げて商品が届くまでの時間を短縮することで、空間的な距離を解消することが物流の主な使命でした。しかし、今はただスピーディーであるだけでなく、どれだけタイムリーにモノを消費者の下へ届けられるかが重要なテーマになっています。そのためには輸送や保管といった機能を生かしモノの量、時間、場所を調整して、在庫切れや過剰在庫を防ぎながらムダなく、効率よく商品を届ける仕組みが不可欠です。現代は、ムダのない、効率的な物流がキーワードになっています。

物流の6大機能

産地から消費者の下へ、モノを迅速かつタイムリーに届けるための仕組みが下記に示した物流の6大機能と呼ばれるものです。物流の6大機能には、商品を運ぶ、移動するだけでなく、荷の保管や包装加工といった要素も含まれています。

物流のしくみイメージ
輸送・配送

生産者から消費者(需要者)にモノを送り届ける機能が輸送と配送。輸送は別名「一次輸送」とも言われ、長距離の移動を伴いながらモノをA地点からB地点へと運ぶ役割を果たします。一方、配送は「二次輸送」とも呼ばれ、近距離の小口輸送を担います。輸送と違い、A地点からB地点への移動という単純な流れではなく、C地点から複数個所にモノを送り届ける機能があります。なお、この輸送と配送で物流コストの6割を占めると言われています。

保管

物流センターや配送センターなどがこれに当たり、生産者と消費者間の時間差を調整してタイムリーにモノを届ける役割を果たします。また、冷蔵・冷凍倉庫や食品加工を行うプロセスセンターなど商品の品質や価値を維持する機能を持った保管施設も該当します。

包装

物流過程で生じる物理的なダメージ(傷・破損)から製品を守るための過程です。

荷役

物流センターや倉庫の内外で荷物を運搬・移動する作業工程を荷役と呼びます。なお、荷役は「荷揃え」「積み付け・積卸し」「運搬」「棚入れ(保管)」「仕分け」「ピッキング(集荷)」といった6つの工程に分かれています。

流通加工

倉庫や物流センターに入ってきた品物をいったんバラして、消費者が求めやすい単位に仕分けて包装し直すこと。商品のラッピングや値札貼り、輸入品のラベル貼り替え、衣料品の検針作業なども流通加工の一種です。

情報処理

受注からピッキング、出荷、配送といった物流の流れを一元管理する情報システムは日に何万という件数を扱う物流の世界ではもはや不可欠な存在。産地や工場を出発した製品が荷物として今、どこにあり、いつまでに所定の場所に届くのかといったモノのトレーサビリティに深く関わっているからです。そこで活躍するのが、インターネットやイントラネットと連携したハンディターミナルなどのIT機器です。

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