お客様導入事例
プリンタトラブルによるダウンタイムはゼロに
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拍子抜けするほどトラブルフリー
安定稼働のキーエンスのインクジェットプリンタ採用で生産性向上
東レペフ加工品株式会社 様事業内容
断熱・保温製品事業、介護、福祉、健康関連製品事業
東レ株式会社が開発した断熱素材ペフに、さまざまな特殊加工を施して付加価値を高めた製品を多品種小ロットで生産する東レペフ加⼯品株式会社。同社の加工技術は高く評価され、駅ホームの屋根裏材としても採用されている。
小ロットでの生産性向上には、ラインの稼働率アップが至上命題。しかし同社では、7年前に導入した海外製プリンタの老朽化により、ダウンタイムが生じ始めていた。そこで試験的にキーエンスのインクジェットプリンタを導入。
約1年の導入期間を経た結果を紹介する。
保温に、断熱。暮らしを裏方で支える製品
東レペフ加工品は、1980年に東レの子会社として設立された。電子線架橋(電子線を照射して、分子結合させる技術)したポリエチレンを発泡した素材「トーレペフ®」に、様々な加工を施した製品を展開している。
「設立当初からの主力製品は、パイプカバー、チューブなどの管材用加工製品です。身近なところではエアコンの室外機から屋内に引き込む配管のカバーや、寒冷地向けの水道管保温カバーなどがあります。スーパーマーケットのショーケースの裏側の配管などにも、カバーは使われています。目につくことはあまりないですが、実は多くのところで使われている製品です」と、工務技術室長の中川重行氏は多様な製品用途を語る。
「トーレペフ®」は、加工性にも優れた素材。この特性を活かして耐候性などの機能性を付加したり、カラーリングや模様付けなどによりデザイン性を高めた上で製品提供されている。また加工シートとしての製品提供も行なわれている。最近では、紫外線に対する耐候性の高さが評価され、駅プラットホームの屋根裏材として採用された。
駅ホームの屋根に使用されている耐候性被覆断熱材
「耐候性に関しては、競合他社も力を入れている部分ですが、当社は特許技術による加工により、他社とは一線を画すレベルまで性能を高めています。通常なら数年で劣化するところが、当社製品なら鋼板並みの耐久性を持ちます。その耐久性の高さがユーザーさまから高く評価されました」と、中川氏は技術力の高さを語る。
工務技術室長 中川重行氏
多品種小ロットでの生産性向上を図る
同社の製品ラインナップは、非常にバラエティに富んでいる。パイプカバーやチューブなどに始まり、パイプの継ぎ手カバーやシンクカバー、ユニットバスのような大型成形品にも対応する。さらに高発泡断熱材と各種フィルムを複合した加工シートにも各種対応可能。ほかにもアメニティー事業部では、生活環境の快適さをテーマに開発された「敷楽®(畳表)」「彩美®(置き畳)」「衛生畳(洗える畳)」などの商品を扱っている。
業界内でのシェアが2位という同社の最大の強みは、中川氏によれば「小回りが利くこと」だ。顧客の要望に応じて、あらゆるサイズのオーダーに小ロットでも対応している。
「大口径パイプカバーなどは、一箱に4本入れるだけで終わり、というオーダーを受けることもあります」と、徹底した小ロット対応を語るのは、生産課の西本学史氏。
多品種小ロットとなると、頻繁に行なわれる段取り替えのたびにラインがとまり、生産性は低下しがちだ。同社では近年、それに輪をかけるように、別の要因によるラインストップが発生していた。トラブルを引き起こしていたのは、ラインに設置されたインクジェットプリンタである。
加工用の素材とはいえ、出荷する製品には品番をきちんと印字する。この7年ほど前に打ち出された方針に従い、同社のラインには数十台の海外メーカー製プリンタが設置されている。
同社で製造されたチューブ
生産課 西本学史氏
プリンタトラブルによるライン停止
それ以前から、同社では同じ海外メーカーのプリンタを導入していた。一挙に導入台数を増やす際には、国内メーカーを含めて各社製品の比較検討が行なわれている。その結果、プリンタ本体のコンパクトさが決め手となり、海外メーカー製品が選ばれた。生産ラインのスペース効率を考慮し、サイズが優先されたのだ。
「その代わり、海外製品でJISマークがないため、わざわざ英国本国に依頼をして高額な費用で作ってもらったりもしました。今、考えてみると導入当初から、いろいろと問題があったと思います」(中川氏)
例えば、印字ヘッドとつなぐケーブルが硬くて、装置内に設置しているためメンテナンス時に取り外しをするのが大変でした。しかも、それが原因でケーブル内に走る電気配線が断線してしまうトラブルが起きるようになってしまいました。また、メモリーを維持するためのバッテリーが劣化すると、電源を落とした際にデータが飛ぶおそれがあり、電源を入れっぱなしにしなければならない。さらに、静電気による印字トラブルもあり、これに対しては遮蔽板を置くなどの対策が取られてきた。追い打ちをかけるように、決定的なトラブルに見舞われる。
「なぜかキーボードが操作を受け付けなくなったのです。データ入力はバーコードで読み込むので、キーボードを使うのは電源のON/OFFに加えて洗浄などのメンテナンス時ぐらいなのですが、それでも使えないとなると困ります」と、トラブル状況を西本氏は説明する。
故障ならば修理すれば良い、と考えるのが普通だ。ところが、ここにも海外製品ならではの問題がひそんでいた。ヨーロッパでは基本的にパーツ交換の概念がなく、トラブルが起こればアッセンブリーごと取り替えなければならなかったのだ。キーボードもプリントヘッドもまるごと交換、となると当然コストが高くつく。
「次から次に短い期間で、キーボードがだめになりました。これはリコールじゃないかと代理店に話をしたのですが、メーカーではその意志はないとのこと。結局は、間に入っている代理店がコスト負担して、無償交換してくれていました。とはいえ導入から7年経ってきたこともあり、そろそろ代替機の検討が必要と判断したのです」と、中川氏は語る。
操作性の良さが選択基準に
新しく導入するプリンタに関しては、操作性が重視された。前回導入時には、プリンタ本体のコンパクトさを優先して海外メーカーの製品が選ばれたが、今回はヘッドまでのケーブルが長く、コンソールを手に持って操作できるなど取り回しの良さが評価され、キーエンスのインクジェットプリンタが選ばれた。
「導入に際しては、国内外の数社の新型機を検討しました。印字品質については、文字のサイズが大きいこともあり、各社ともにそこまでの差は認められませんでした。そこで比較検討のポイントになったのが、使い勝手の良さです。その点で、バッテリーが不要であり、操作パネルを取り外せる使い勝手、ケーブルが長くてしなやかで取り回しの良いこと、さらにコストまで含めたトータルなコストパフォーマンスの高さで、キーエンスのインクジェットプリンタを選びました」と、中川氏は選択理由を語る。
東レペフ加工の売りは多品種である。1つのラインでも扱う品種は1000種類にも及ぶ。それだけの品番を一からプリンタに設定し直すのは、大変な作業になるところだが、品番設定はキーエンスのスタッフがサポートすることで難なくクリアした。これはバーコードリーダを取扱いしているキーエンスならではのメリットで、接続するためのソフトなどを製作する必要がなく、バーコードリーダとインクジェットプリンタをダイレクトに接続できるためだ。
これまで使ってきた結果を西本氏は「非常にハンドリングがよく、導入時からトラブルがないことに驚いています。前回の海外製プリンタ導入時には、ほぼ毎日トラブル続きで初期調整に時間を取られました。最初は必ず何かあると身構えていたのですが、拍子抜けするほど問題は何も起こっていません」と評価する。
ヘッドにつながるケーブルは長く屈曲性がある
操作性の高いタッチパネル
ノズル詰まりを抑制
トリプル電磁弁構造
自動洗浄後に回収経路に残っていたインク成分が、温度変化などによりノズル表面に出てくると詰まりが発生します。キーエンスのインクジェットプリンタは回収経路内に電磁弁を追加してインク成分をシャットアウト。ノズル詰まりが起きない構造です。
切り換えミスを防止
バーコードリーダを直結
あらかじめ商品のバーコードを登録しておけば、バーコードを読み取るだけで、簡単に品種の切り換えが行なえます。多品種製品に対応する際の、人為的なミスを防止します。
HR-50UB使用例
プリンタトラブルによるダウンタイムはゼロに
導入後、1日8時間のフル稼働で約1年が過ぎた。この間に印字品質はもとより、トラブルはまったく起こっていない。メンテナンスについても「ボタンを一押するだけで、ほかには何もしていないというのが正直な話です。他のラインでは海外製のプリンタが稼働していて、こちらはトラブルが発生するたびに、その処理に時間を取られています。これとキーエンスのインクジェットプリンタを入れたラインの稼働率には、雲泥の差が出ていますね」と西本氏は語る。
他にもキーエンス製プリンタが入っているラインと、他のラインでは一つ大きな違いがある。従業員のゴーグルだ。キーエンスのインクジェットプリンタはオートシャワー洗浄機能やインク交換がワンタッチで可能なので、オペレータが有機溶剤に直接触れる必要がなくゴーグルを着用していない。これに対して海外製プリンタではヘッドの洗浄やインク補充の際に有機溶剤が周囲に揮発している環境で作業する必要があるため、プリンタを扱う従業員はゴーグルを着用している。
これは2016年6月に施行された労働安全衛生法の改正により、現場の安全性向上を目的として、リスクアセスメントの実施義務とその結果に基づいた安全対策を講じる努力義務が、インクジェットプリンタを使用している企業に求められているからだ。
「もちろん、海外製プリンタを使っている現場環境に、何か問題が起こっているかと言えば、決してそんなことはありません。労働安全衛生法が改正される以前から、当社では環境測定などの配慮は十分に行なっていますから。ただ、今後も化学物質に対する規制はますます強化されるでしょうし、配慮された機種にしておくことが望ましいと考えています。特にインクはMEKフリーのタイプを今後も導入していくことになるでしょう」と、中川氏は、現場の状況を語る。
7年前に一斉導入された数十台のプリンタは今後、順次入れ替え時期を迎えることになる。
「今後は壊れたマシンから入れ替えていく計画です。現在使っている海外メーカーに加えて国内メーカーさんからも新製品が出ているので、新規導入に際しては、それらも比較検討の対象にはなります。ただ、メンテナンス性の良さはもとより、1年間使い続けてきてまったくトラブルが起こっていないキーエンス以外の製品を、あえて検討する必要はないのではないでしょうか」と、中川氏は締めくくってくれた。
キーエンスのインクジェットプリンタで印字されたパイプカバー