有機則とインク

有機溶剤はインクや接着剤などに幅広く使われてきましたが、有機溶剤中毒予防規則など安全面の法令への遵守が今まで以上に求められているため、使用する事業者は対応を迫られています。ここでは、有機則とインクについてご説明します。

有機溶剤とは

  • ・有機=炭素原子(C)を含む物質
  • ・溶剤=物質を溶かすのに用いる液体

他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物の総称で、さまざまな職場で溶剤として塗装、洗浄、印刷などの作業に幅広く使用されています。
有機溶剤は常温では液体ですが、一般的に揮発性が高いため、蒸気となって作業者の呼吸を通じて体内に吸収されやすく、また、油脂に溶ける性質があることから皮膚からも吸収されます。

有機溶剤中毒予防規則とは

省略形で「有機則」とも呼ばれる有機溶剤中毒予防規則は、有機溶剤の安全基準を定めた厚生労働省の省令で、厚生労働省が管轄し、労働安全衛生法に基づいて定められています。
対象となる有機溶剤は54種類で、第一、二、三種有機溶剤の3つに分類されます。産業用インクジェットプリンタに使用されるインク溶媒のメチルエチルケトン(MEK)やアセトンもこの省令に該当し、第二種有機溶剤に分類されます。したがって、有機溶剤中毒予防規則には工場や作業現場における有機溶剤使用時の取り扱いに関する規則も盛り込まれています。

労働安全衛生法の目的(条文より一部抜粋)

労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等、その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とする。

有機則の要求事項

「メチルエチルケトン(MEK)」やアセトンなどの有機溶剤を用いたインクジェットプリンタを使用する工場や作業現場では、以下の事項が要求されます。

有機溶剤中毒予防規則の
要求事項
MEK・アセトン
設備 局所排気装置の設置など
管理① 有機溶剤作業主任者の選任
管理② 定期自主検査の実施(年1回)
作業環境測定 作業環境測定士による環境測定(年2回)
健康診断 作業従事者対象の健康診断の実施(年2回)

※最終判断は労働基準監督署の担当者にご確認ください

有機溶剤の取り扱いに必要な資格

有機溶剤作業主任者技能講習を修了している必要があります。

有機溶剤作業主任者とは

有機溶剤を使っての作業を安全に進めるために指導する責任者です。
作業者が有機溶剤により汚染されないように作業方法を決定し作業者を指揮し、排気・換気装置の点検・整備、保護具の使用状況の監視や安全指導、工具の整備などを行ないます。

有機溶剤作業主任者技能講習とは

有機溶剤作業主任者の選任において、受講し修了する必要のある講習です。
地域により講習頻度は異なりますが、数か月に1 回(東京は月2 回)程度行なわれています。
カリキュラムは2 日間の学科講習で実技はありません。申し込みは、各都道府県労働基準協会連合会にお問い合わせください。

法令への対応

有機溶剤を使用したインクジェットプリンタを使用すると、排気装置の設置や健康診断の実施など、有機溶剤中毒予防規則対策が必要となり、コストがかかります。
エタノールタイプのインクを用いるインクジェットプリンタなら、有機溶剤を使用していないため、有機溶剤中毒予防規則対策が不要です。また、においが少ないことからにおい移りし易い製品や狭い場所での使用にも適しています。

有機溶剤タイプのインクジェットプリンタの課題

法令対策
  1. 局所排気装置の設置
  2. 年2回の健康診断の実施
  3. 年2回の作業環境測定の実施

等の対策が必要

対策費用
  1. 約30~60万円
  2. 約3000~4000円/人×年2回
  3. 約7~8万円×年2回

※対策費用は一例です

におい
  • 作業者が有機溶剤のにおいを嫌がる
  • におい移りし易い製品への印字に向いていない

アルコール系インク インクジェットプリンタのメリット

法令対策 不要!
対策費用 不要!
におい 少ない!

エタノールタイプのインクジェットプリンタなら、有機溶剤中毒予防規則対策のための対策や費用が不要です。また、においが少ないことからにおい移りし易い製品や狭い場所での使用にも適しています。

アルコール系インク(MEKフリーインク)

  • 有機溶剤中毒予防規則への対応にともない、有機溶剤を使用していないエタノールインクが注目を集めています。
    アルコールインクが使えるインクジェットプリンタの採用も、増えています。(当社調べ)

    一方、法令対策には適しているアルコール系インクにも、乾燥速度が遅かったり付着力が弱いなど、印字性能面では課題がありました。しかし今日では、インク成分の最適化により、速乾性や付着力の課題を改善しているインクもあります。
    詳しくは以下の資料をご確認ください。

  • ここ5年間でなんと約6倍に

    アルコール系インク(MEKフリーインク)

    ※当社調べ

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