電極式レベルスイッチ
電極式レベルスイッチは別名導電率レベルスイッチとも呼ばれ、可動部のない電気的なレベルセンサとして、鉄鋼・食品・化学・薬品・半導体などの諸工業や農業水・浄水場・汚水処理などの液面制御に汎用的に幅広く使用されています。
原理
-
アース電極と検出電極間に交流電圧を印加します。
電極間が液体に接触していない状態では電流は流れません。液体に接触すると電流が流れます。この電流の"流れる/流れない"を検出して出力を制御します。
従って、導電性の液体のみ検出することが可能です。 - 電極棒の表面積、距離、浸水長さ、そして液体の固有抵抗により電極間の抵抗値が決まり、流れる電流が決まります。レベル制御するための基準抵抗範囲が決まっています。
構造
- 電極保持部、プロセス接続、電極棒、リレーユニットで構成されています。リレーユニット以外は電子部品は存在しません。可動部がなく、シンプルな構成です。
- リレーユニットは、液体の電気抵抗に合わせて感度設定が切り換え可能になっており、最初の設置時に感度設定を行います。
- 検出電極を検出したい液面レベル(高さ)に合わせて切断します。複数接点必要な場合は、検出電極を複数本接続できる電極保持部を用意し、それぞれ検出したい液面レベルの高さに長さを合わせます。
- 液体の流れや振動などによる電極棒同士の接触を防ぐため、およそ1m間隔ごとにセパレータと呼ばれる絶縁板が必要です。
- 付着物などによる誤動作を防止するため、電極の先端以外は絶縁チューブで覆われているタイプもあります。
- 電極材質を液体の腐食性により、ステンレス、ハステロイ、チタンなど自由に選択できます。
選定方法
電極棒の選定
電極棒の材質を液体の腐食性に合わせて選定します。濃度や温度によっては電極の耐食性が異なるため注意が必要です。
例)金属材料の耐食表
水溶液 | 電極棒 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
種類 | 濃度 [%] |
温度 [°C] |
SUS304 | SUS316 | チタン | HASB | HASC |
亜硫酸 H2SO3 |
6 | 30 | E | C | A | B | B |
硫酸 H2SO4 |
10 | 30 | E | C | E | A | A |
60 | 30 | E | E | D | B | C | |
塩酸 HCl |
10 | 30 | E | E | E | C | C |
37 | 30 | E | E | E | C | E | |
クロム酸 CrO3 |
20 | 30 | C | B | A | B | B |
硝酸 HNO3 |
10 | 30 | B | A | A | D | A |
68 | 30 | C | C | A | D | D | |
フッ化水素 HF |
5 | 30 | E | E | D | D | C |
リン酸 H3PO4 |
10~85 | RT | B | B | C | B | C |
酢酸 CH3COOH |
5~50 | RT | A | A | A | A | A |
100 | RT | A | A | A | A | A | |
ギ酸 H・COOH |
全 | BP | D | D | D | A | A |
アセトン CH3・CO・CH3 |
全 | RT | B | B | A | A | A |
アンモニア NH3 |
100 | 100 | C | C | A | B | B |
10 | BP | C | B | B | B | C | |
苛性ソーダ NaOH |
30 | 60 | A | A | B | A | B |
50 | 65 | B | A | C | A | C | |
塩化ナトリウム NaCl |
25 | BP | C | B | A | B | B |
塩化第二鉄 FeCl3 |
30 | RT | E | E | A | E | B |
注1 RT:室温 BP:沸点
注2 A:耐食性十分 B:耐食性あり、浸食率は0.8mm/ 年 C:耐食性劣る、浸食率は1.8mm/ 年 D:耐食率大きく、使用不可 E:耐食性なく、使用不可
電極間が導電性のゴミなどで導通してしまう場合、絶縁チューブタイプの電極を使用します。
接点数や測定レンジによって電極の本数、長さを決定します。
電極保持部
電極棒を何本取り付けるかで極数を決定します。最大6極程度です。
タンクや槽、排水ピットへの取り付けは、フランジ取り付けかネジ式です。設置方法に合わせて選定します。
リレーユニット
液体の固有抵抗に合わせて、感度タイプを選定します。一般用で制御可能な液体の固有抵抗の最大値は30kΩ・cmが限界です。
水の固有抵抗(一般的な目安)
種類 (温度[°C]/濃度[%]) |
固有抵抗 | 感度 |
---|---|---|
水道水 | 5~10k Ω・cm | 標準 |
井戸水 | 2~5k Ω・cm | 標準 |
川水 | 5~15k Ω・cm | 標準 |
雨水 | 15~25k Ω・cm | 標準 |
海水 | 0.03k Ω・cm | 低感度 |
下水 | 0.5~2k Ω・cm | 標準 |
蒸留水 | 250~300k Ω・cm | 高感度 |
苛性ソーダ (15/2.5~42) |
0.003~0.01k Ω・cm | 低感度 |
塩酸 (15/5~40) |
0.001~0.003k Ω・cm | 低感度 |
使用環境
使用温度は概ね-20~60°Cの範囲で使用可能です。ただし、氷の検出はできません。
注意点
付着物
-
液体に油分が混入する場合や、カルキなどが付着する場合、電極に絶縁被膜を形成することがあります。その場合、正常に動作しないことがあり定期的な清掃が必要です。
波立ち・泡
-
液体の波立ちや泡がある場合は、防波管の設置が必要です。
防波管と電極棒の接触を防ぐため、パイプ材質は樹脂性が好ましく、パイプ上部には空気孔をあける必要があります。
粘性の液体
粘度の高い付着性のある液体の場合、電極間がブリッジしてしまうため正確なレベルが検出できません。使用は避けた方がよいでしょう。
液体の変化
段取り変えや濃度の変化等で液体の電気抵抗が変わる場合、検出できなくなることやレベルに誤差を生じることがありますので注意が必要です。
腐食性の液体
-
腐食性のある液体の場合、電極の腐食状況を定期的に確認します。腐食が激しいときは電極の交換をします。
結露
結露により電極の根元で導通してしまうことがあります。その場合、ウエス等で定期的に水分をふき取る必要があります。
周辺機器
周辺機器から液体に電流が流れている場合は、機器が損傷する恐れがあり注意が必要です。
設置環境
タンクの壁や底に電極棒が接触しないように距離をあける必要があります。
まとめ
このページでは、電極式レベルスイッチの原理や構造、選定方法・注意点について説明しました。
それらをまとめると、以下の通りです。
- 電極が液体に接触すると電流が流れるという原理を利用したレベルセンサ。
- 導電性の液体のみ検出することが可能。
- 使用温度はおよそ-20~60°C。氷の検出はできない。
- 電極棒の定期的な清掃が必要。正確な検出のためには、粘性の液体や液体の電気抵抗の変化などに注意が必要。
検出する液体によって、レベル検査の方法もさまざまです。最適なレベル検査を行うには、それらの特徴を知り、正しく検査することが大切です。
このページで紹介した内容や他のページに記載しているレベルセンサの知識や事例について、1冊にまとめた資料「レベルセンサ ハンドブック」は、下記からダウンロードできます。