CHAPTER 4注意すべき有機溶剤中毒予防規則と労働安全衛生法

食品・包装業界では、製造年月日や賞味期限の印字に産業用インクジェットプリンタが利用されています。正確で確実、さらに対象物の材質を選ばずに高速移動する商品に印字できることがメリットです。
しかし、高い安全性が求められる食品業界で産業用インクジェットプリンタを使用する場合、「有機溶剤中毒予防規則」と「労働安全衛生法」という2つの法令を遵守する必要があります。こちらでは、安全な食品を提供するために覚えておくべき、「有機溶剤中毒予防規則」と「労働安全衛生法」という2つの法令について解説します。

有機溶剤中毒予防規則とは

有機溶剤中毒予防規則とは、有機溶剤の安全基準を定めた厚生労働省の省令です。「有機則」と省略して呼ばれ、労働安全衛生法に基づいて定められています。対象となる有機溶剤は54種類あり、「第一種有機溶剤」「第二種有機溶剤」「第三種有機溶剤」に分類され、産業用インクジェットプリンタで使用されるインク溶媒(メチルエチルケトンやアセトンなど)も該当します。

有機溶剤の種類について

54種類の有機溶剤については、労働安全衛生法施行令「別紙 別表第六の二」に掲載されています。溶剤名横の数字は省令で管理されている番号(政令番号)です。また、記載された有機溶剤のほか、以下記載の54種類の物質のみからなる混合物、有機溶剤含有物(有機溶剤と有機溶剤以外の物との混合物で、有機溶剤を当該混合物の重量の5%を超えて含有するものをいう)も対象になります。

第一種有機溶剤
14 クロロホルム
23 四塩化炭素
27 一・二‐ジクロルエタン(別名:二塩化エチレン)
28 一・二‐ジクロルエチレン(別名:二塩化アセチレン)
32 一・一・二・二‐テトラクロルエタン(別名:四塩化アセチレン)
36 トリクロルエチレン
38 二硫化炭素
第二種有機溶剤
1 アセトン
2 イソブチルアルコール
3 イソプロピルアルコール
4 イソペンチルアルコール(別名:イソアミルアルコール)
5 エチルエーテル
6 エチレングリコールモノエチルエーテル(別名:セロソルブ)
7 エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(別名:セロソルブアセテート)
8 エチレングリコールモノ-ノルマル-ブチルエーテル(別名:ブチルセロソルブ)
9 エチレングリコールモノメチルエーテル(別名:メチルセロソルブ)
10 オルト‐ジクロルベンゼン
11 キシレン
12 クレゾール
13 クロルベンゼン
15 酢酸イソブチル
16 酢酸イソプロピル
17 酢酸イソペンチル(別名:酢酸イソアミル)
18 酢酸エチル
19 酢酸ノルマル-ブチル
20 酢酸ノルマル-プロピル
21 酢酸ノルマル-ペンチル(別名:酢酸ノルマル-アミル)
22 酢酸メチル
24 シクロヘキサノール
25 シクロヘキサノン
26 一・四‐ジオキサン
29 ジクロルメタン(別名:二塩化メチレン)
30 N・N‐ジメチルホルムアミド
31 スチレン
33 テトラクロルエチレン(別名:パークロルエチレン)
34 テトラヒドロフラン
35 一・一・一‐トリクロルエタン
37 トルエン
39 ノルマルヘキサン
40 一‐ブタノール
41 二‐ブタノール
42 メタノール
43 メチルイソブチルケトン
44 メチルエチルケトン
45 メチルシクロヘキサノール
46 メチルシクロヘキサノン
47 メチル-ノルマル-ブチルケトン
第三種有機溶剤
48 ガソリン
49 コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む)
50 石油エーテル
51 石油ナフサ
52 石油ベンジン
53 テレビン油
54 ミネラルスピリツト(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリツト、ホワイトスピリツト及び ミネラルターペンを含む)

産業用インクジェットプリンタの使用における
有機溶剤中毒予防規則への対応について

有機溶剤中毒予防規則は、工場や作業現場における有機溶剤使用時の取り扱いに関する規則で、多種多様な場面を想定しています。こちらでは、特に産業用インクジェットプリンタを使用するうえで遵守すべきポイントを紹介します。

一般的な産業用インクジェットプリンタのインクには、付着力や速乾性を高めるために「メチルエチルケトン(MEK)」という揮発性の高い物質が含まれています。メチルエチルケトン(MEK)は、塗料や接着剤に使われる一般的な物質ですが、第二有機溶剤に分類されるので有機溶剤中毒予防規則への対応が求められます。その際に注意すべき3つのポイントが以下となります。

1.排気設備の設置

1.排気設備の設置

2.責任者の任命

2.責任者の任命

3.健康診断の実施

3.健康診断の実施

1.排気設備の設置

第二種有機溶剤「メチルエチルケトン(MEK)」を屋内で使用する場合、発生源を密閉する設備および局所排気装置またはプッシュプル型換気扇装置を設けることが定められています。

2.責任者の任命

有機溶剤を取り扱う業務では、有機溶剤作業主任責任者技能講習を修了した有機溶剤作業主任者を専任し、労働者の指揮・監視・点検等を行うことが定められています。

3.健康診断の実施

事業者は、有機溶剤を扱う労働者に対し、6ヶ月に1回の医師による健康診断の実施を定めています。

有機溶剤中毒予防規則の対策が不要に
コストカットにもつながるMEKフリーインク

従来の産業用インクジェットプリンタのインクは、「メチルエチルケトン(MEK)」を使用しているので有機溶剤中毒予防規則への対応が必要不可欠でした。そこで近年では、「メチルエチルケトン(MEK)」を含まないMEKフリーインクの開発が進められています。MEKフリーインクであれば、排気設備の設置や専任者の任命、健康診断などの有機溶剤中毒予防規則への対応が不要になります。従来のインクに比べて安全性が高く、通常運用時における保護具の着用を最低限に抑えることができるので大幅なコストカットが可能です。MEKフリーインクは、固着しにくい性質を持ち、ノズル詰まりが発生しにくいというメリットもあります。

MEKフリーインクを使った場合のコスト削減例

通常のインクを使用した場合

有機溶剤中毒予防規則対策

局所排気装置の設置

オペレーターの健康診断実施(年2回)

作業環境測定の実施(年2回)

費用

30〜60万円

3000〜4000円/人(×2回)

7〜8万円(×2回)

※対策および費用は入例になります。

MEKフリーインクを使用した場合

有機溶剤中毒予防規則対策

不要

費用

0円

従来のメチルエチルケトン(MEK)やアセトンを含まないアルコール系のMEKフリーインクは、付着力や乾燥速度に課題がありました。そこでキーエンスでは、対象物との接着力を高め、インクの乾燥速度を早めることでにじみのない「強接着MEKフリーインク」を開発。メチルエチルケトン(MEK)を使用していないので有機溶剤中毒予防規則への対応が不要で、アルコール系MEKフリーインクでは難しかったはっきりとした印字が可能です。

MEKフリーインクなので有機溶剤中毒予防規則に対応不要

排気設備の設置

排気設備の設置

責任者の任命

責任者の任命

ダミーダミー

健康診断の実施

MEKフリーインクなのに素材を問わずにしっかり印字できる!

労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、「安衛法」とも呼ばれ、「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。その手段として「労働災害の防止のための危害防止基準の確立」、「責任体制の明確化」、「自主的活動の促進の措置」など総合的・計画的な安全衛生対策を推進しています。

労働安全衛生法の改正について

平成28年6月1日、労働安全衛生法が改正により、SDS交付義務の対象となる物質(※平成29年3月1日時点で663物質)について事業場におけるリスクアセスメントが義務付けられました。この法改正により、有機溶剤およびアルコールベースのインク・洗浄液を使用する場合、同法令への対応が必須となりました。労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントは、SDS交付義務対象物質を製造する事業者だけではなく、取り扱う事業者も含めたすべてが対象になります。事業者には、労働者の危険または健康被害を防止するために義務付けられている対象物質のみならず、対象物質に当たらない場合でもリスクアセスメントを行なうように務める必要があります。

リスクアセスメントとは

労働安全衛生法では、リスクアセスメントを「化学物質などによる危険性・有害性を特定し、その特定された危険性・有害性に基づくリスクを見積もることに加え、リスクの見積もり結果に基づいてリスク低減措置(リスクを減らす対策)の内容を検討する一連の流れ」と定義しています。

産業用インクジェットプリンタに求められる対策

産業用インクジェットプリンタを使用する場合、リスクアセスメントに基づいてリスクを見積もったうえで以下のような対策が求められます。

封じ込めの一般原則

封じ込めの一般原則

グローブボックス

グローブボックス

呼吸用保護具

呼吸用保護具

労働衛生保護具

労働衛生保護具

1.封じ込めの一般原則

化学物質を外部に出さないための対策が求められます。

2.グローブボックス

化学物質からの暴露を低下させるために給排気を備えたボックスを使用することが求められます。

3.呼吸用保護具

化学物質を吸入しないように防毒マスクの使用が推奨されています。

4.労働衛生保護具

皮膚や目を守るために保護メガネや耐溶剤の手袋の使用が推奨されています。

労働安全衛生法に基づく対策例
(インクジェットプリンタのメンテナンスについて)

産業用インクジェットプリンタを使用するには、日頃のメンテナンスが欠かせません。特にヘッドの洗浄は稼働前に実施するため頻度の高い作業になります。その他にも日常的に発生するメンテナンス作業があり、事業者はリスクアセスメントの結果に基づき対策を講じることが努力義務化されています。

メンテナンスの際に要求される装備

インクジェットプリンタのメンテナンスを実施する場合、健康障害を防止するために以下のような装備が必要です。

ヘッドの洗浄

ヘッドの洗浄

洗浄液の補充

洗浄液の補充

インク排液

インク排液

フィルター交換

フィルター交換

曝露低減により労働安全衛生法に対応
インクジェットプリンタの新標準MK-Uシリーズ

有機溶剤中毒予防規則の対策不要!
労働安全衛生法への対策も万全!

従来の産業用インクジェットプリンタは、労働安全衛生法に対応するために対策が必要でした。そのため設備投資にコストがかかるという問題がありました。しかし、キーエンスのユニバーサル インクジェットプリンタ「MK-Uシリーズ」は、インク・補充液の曝露や吸入を防ぐ新構造を採用し、化学物質の外部への流出を最小限に抑えています。これにより従来のインクジェットプリンタで必要だった対策や追加コストも不要になり、より手軽にインクジェットプリンタが導入できるようになりました。また、強接着MEKフリーインク対応なので、有機溶剤中毒予防規則への対策も不要です。

ユニバーサル インクジェットプリンタ「MK-Uシリーズ」の特徴

オートシャワーの洗浄機能搭載

専用ステーションにセットすれば、オートシャワー洗浄中も化学物質の揮発を抑えられます。洗浄した液に触れることがないので安心です。

カートリッジ式インク・補充液

カートリッジ式インク・補充液を採用しているのでタンクに注ぎ込む必要もありません。補充の際に揮発したり、こぼしたりするリスクもなく、使い切ったらワンタッチで交換可能です。

ダイレクトボトル排液

ボトルキャップをしっかりと固定してから排液ができるので漏れ出す心配がありません。曝露や吸入の心配をせずに排液ができます。

ワンタッチ部品交換

定期交換が必要なフィルタやポンプなどの消耗品は、すべてマニュアル・工具なしで交換可能です。指示どおりに作業をすれば、インクが漏れ出す心配もありません。

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