CHAPTER 4【食品衛生法改定項目①】
HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理とは?

2018年6月13日に交付された食品衛生法で「原則すべての事業者に“HACCPに沿った衛生管理”を制度化」という項目が追加され、食品を扱う事業者はHACCP(ハサップ:Hazard Analysis Critical Control Point)への対応が必要不可欠です。こちらのコラムでは、「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理とは?」と題して、HACCPの基礎知識や実施する流れ、メリット、産業用インクジェットプリンタと画像処理システムの活用方法をご紹介します。

HACCP(ハサップ)とは?

HACCP(ハサップ)とは、1960年代にアメリカで宇宙食の安全を確保するために開発された食品の衛生管理方式です。「Hazard Analysis Critical Control Point」の頭文字をとった言葉で、日本語では「危害分析重要管理点」と訳されます。

従来の衛生管理の方法は、最終製品の一部を抜き取って検査するものでした。一方でHACCPは、原材料の受け入れから最終製品までの各工程で連続的・継続的に監視し、記録する衛生管理手法です。従来の抜き取り方式に比べて、より安全性が高く、国際基準として多くの国で義務化が進められています。

日本は、HACCPへの対応が遅れていましたが、輸出先国がHACCPへの対応を求めるケースも増えています。国内の食の安全を確保するという意味でもHACCPへの対応は重要です。そこで2018年の食品衛生法改正に伴い、日本国内でもHACCPによる衛生管理がより徹底されました。

HACCPによる衛生管理の基本

HACCPによる衛生管理の基本

従来の衛生管理とHACCPの違い

HACCPによる衛生管理の基本

海外でのHACCPの対応について

EU
2004年から一次生産を除くすべて(※)の食品の生産、加工、流通事業者にHACCPによる衛生管理が義務付けられ、2006年には完全適応となりました。
※原則としてすべての食品事業者。ただし小規模事業者に対しては弾力的に運用されています。

アメリカ
1997年から一部の食品(水産物およびジュースの加工・輸入、食肉および食肉製品)にHACCPによる衛生管理が義務化され、2011年1月に成立した「食品安全強化法」に基づき、HACCPに準じた危害管理の適用を開始。現在では、正規従業員数が500人未満の小規模事業者にも適応を広げ、日本から米国に輸出される食品にも適用されています。

一部の食品または事業者に対して義務化している国
台湾、韓国、香港、フィリピン、インドネシア、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランド など

HACCPによる衛生管理のポイントは「見える化」

HACCPによる衛生管理手法の基本は、微生物による汚染、金属の混入などの危害を予測したうえで、危害の防止につながる特に重要な工程を継続的に監視・記録することです。危害を予測し、頻度や影響の大きさを考慮してリスト化し、適切な管理・記録を行う「衛生管理の見える化」がポイントになります。そのために事業者が行うことは「①衛生管理計画」「②実施」「③記録・確認」という3項目です。

HACCPによる衛生管理のメリット

HACCPによる衛生管理を実施することで以下のようなメリットがあります。
・クレームやロス率が下がる
・品質のばらつきが少なくなる
・食品の安全性が確保できる
・記録に残すことで経験や勘に頼らず品質を高められる
・工程ごとに確認すべき項目が明確になる
・食中毒や異物混入などを未然に防げる
・トレーサビリティ対策になる など

具体的な実施方法について

HACCPの導入というと「手間がかかりそう」「お金がかかりそう」と感じるかもしれませんが、手順を追って実施すれば難しいことはありません。厚生労働省では、「HACCPの7原則 12手順」として導入方法を解説しています。この7原則と12手順を継続し、改善することでHACCPによる衛生管理が実現します。

手順1 HACCPチームを作る

最初に生産に関わる各部門の担当者を集め、HACCPによる衛生管理を実施するために話し合います。製品すべての情報を集め、衛生管理の課題を集約するために「HACCPチーム」を作ることがHACCPの第一歩です。

手順2 製品説明書を作る

製品の概要を「商品説明書」としてまとめます。以下のような内容を話し合いながら書き出し、製品の情報を全体で共有します。
・製品の名称および種類
・原材料の名称
・添加物の名称
・製品の特性(Aw、pHなど)
・包装形態、単位、量
・容器包装の材質
・消費期限・賞味期限、保存方法 など

手順3 消費者を特定する

製品がどのように食べられるのか、誰が食べるのかを書き出します。
・加熱して食べる
・そのまま食べる
・一般消費者が食べる
・病人や乳幼児、高齢者などが食べる など

手順4 製造工程図を作る

原材料の受け入れから保管、製造・加工、包装、出荷までに一連の生産の流れを書き出します。加熱の温度や時間なども具体的に書き込むようにします。

手順5 製造工程図と現場を比較する

手順4で製作した製造工程図と実際の現場を確認し、異なる部分がないか確認します。

手順6[原則1] 危害要因を特定する

製造工程ごとに危害要因を特定します。危害要因とは、有害な微生物や細菌、化学物質など、健康に悪影響をもたらす原因を指します。危害要因が予想される原材料や工程、危害要因の内容や管理方法を書き出すことからはじめましょう。
・原材料や工程
・病原微生物の生存や異物混入など、危害要因が考えられるか?
・予想される危害要因は、重大な危害要因なのか?
・加熱不足などにより、危害要因が発生する可能性があるか?
・加熱時間や温度など、危害要因の管理手段は? など

手順7[原則2] 厳重な管理が必要な工程を特定する

危害要因を特定したら健康被害の重大度をランク付けし、健康被害の重大度が高いと判断した場合は、重要管理点(CCP)に指定します。

手順8[原則3] 工程を管理する基準を決める

手順7で厳重な管理が必要だと判断した工程は、加熱温度・加熱時間などの安全が確保できる基準を設定します。基準は必ずしも数値である必要はなく、色や形でも大丈夫ですが、誰が見ても明らかだと判断できることが大切です。

例)管理基準として、○○℃以上で△△分以上加熱殺菌する
モニタリング方法として、担当者は□□分ごとに装置の温度と時間を確認するなど

手順9[原則4] 基準の達成を確認する

手順8で決めた加熱温度や加熱時間などの基準が常に達成できているか、モニタリングを実施します。

手順10[原則5] 問題の改善方法を決めておく

各工程で問題が発生した際、迅速に対応できるように予め改善方法を決めておきます。改善策を講じた場合は記録を残し、見直すことで品質の安定化にもつながります。
・基準を達成しなかった製品を区分けする
・機械等の故障等を特定し、復旧する
・基準に満たなかったものを廃棄する など

手順11[原則6]衛生管理が機能しているか見直す

実施している衛生管理が有効に機能しているか見直し、定期的に記録を見て確認します。
・重要な工程の記録を確認する
・温度計やタイマーの校正をする
・問題発生時の改善措置を確認する
・検査工程を確認する
・修正が必要が検討する など

手順12[原則7] 各工程の管理状況を記録する

HACCPで最も重要なのが各工程の記録を残すことです。HACCPによる衛生管理を実施した証拠にもなり、問題発生時の原因を突き止めるヒントにもなります。

CHECK!HACCPではロットNOによる管理が必要!

HACCPでは、製造から包装、出荷までを通してロットNoと紐付して管理します。各工程での加熱温度・時間の情報に加え、包装や容器、出荷する際の段ボールに対して、期限と同時にロットNoを印字してトレースする必要があります。食品衛生法の改定でHACCPによる衛生管理が徹底されたことで情報の取り扱いが厳格化しました。そこで重要になるのが印字方法や情報管理です。

具体的にどのように記録を残すのか

HACCPでは、賞味期限・消費期限のほかに加熱時間・温度、ロットNoなどの情報を記録します。記録方法としては、「紙に手書きで残す」「スタンプを押す」「ラベルを貼る」などの方法がありますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。そこでおすすめの方法が産業用インクジェットプリンタを使った印字です。産業用インクジェットプリンタは、包装や箱などに直接印字することができ、消えたり、改ざんされたりする心配がありません。高速で流れるラインを止めることなく印字でき、簡単に印字内容も変更できるなどたくさんのメリットがあります。

また、目視による確認は、「0(ゼロ)とO(オー)のような似た印字の読み間違い」「伝票やラベルへの記載ミス」「パソコンへの入力ミス」などのヒューマンエラーが起こる可能性があります。万全を期するには、画像処理システムやハンディターミナルなどの活用が有効です。産業用インクジェットプリンタで印字した情報を画像処理システム・ハンディターミナルで読み取ることでヒューマンエラー防止につながります。また、画像処理システム・ハンディターミナルのデータをパソコンに保存すれば、記録漏れ・入力ミスの心配も不要です。

印字から検査、記録の流れを自動化

キーエンスは、印字機と画像センサを両方取り扱っているので、簡単に印字・検査・記録を行うシステム構築が可能です。ユニバーサル インクジェットプリンタ「MK-Uシリーズ」と自動辞書登録が可能な画像センサ「CV-Xシリーズ」や、操作が簡単な画像判別センサ「IV2シリーズ」を連携すれば、手間のかかっていた印字・検査・記録の流れを自動化できます。

HACCPとトレーサビリティの関係

賞味期限や消費期限、ロットNo、各工程での加熱温度・時間などを一元管理することで、もし不良品や印字ミスが発生して自主回収(リコール)になった場合でも、その原材料が使われている製品をピンポイントで特定して回収することができます。この時間経過に沿って追跡することを「トレースフォワード」と呼び、自主回収(リコール)対策に有効です。また、記録をたどることで不良の原因を速やかに特定し、工程改善・品質改善を実施することもできます。この時間を遡って記録をたどることを「トレースバック」と予備、品質の向上や安定に有効です。

このように「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにすべく、原材料の調達から生産、そして消費または廃棄まで追跡可能な状態にすることを「トレーサビリティ」と呼びます。自動車で電子部品では一般的ですが、近年では「牛トレーサビリティ法」「米トレーサビリティ法」など食品業界でも取り入れられています。HACCPによる衛生管理は、トレーサビリティにも有効なので同時に対策してみたはいかがでしょうか? キーエンスの産業用インクジェットプリンタや画像処理システムは、トレーサビリティにも対応しています。

トレースフォワード(追跡)

トレースフォワード(追跡)

トレースバック(遡及)

トレースバック(遡及)

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