ねじやボルトの強度区分

部品を固定するため、ねじには大きな力がかかります。

たとえば、壁に取り付けたフックに何かを吊るすと、フックを固定しているねじに力がかかります。部品の固定には、この力に耐えるねじを使わなければなりません。また、ねじを締めるときも、ねじの強度を超えた力で締め付けると、ねじが破断します。

このようなことがないように、正しい強度のねじを選択する必要があります。

ねじの応力-ひずみ曲線

応力-ひずみ曲線は、荷重のかかり始めから破断までの、応力とひずみの関係を表すグラフに描かれた曲線です。

たとえば、ねじを締めて行くと締め付け力が増していき(A:降伏点)、一定以上に締め付けると締める力が抜けて(B:下降伏点)ねじが伸びて(C:最大応力)最後はねじが破断します(D:破断点)。

降伏点までは、ボルトが伸びても元の長さに戻ります。しかし、降伏点を超えると、元に戻りません。ボルトの選択は、これらの特性を考慮する必要があります。

応力-ひずみ曲線
応力-ひずみ曲線
  • A:降伏点
  • B:下降伏点
  • C:最大応力
  • D:破断
  • E:引張強度
  • F:塑性域
  • σ:応力
  • ε:ひずみ

ねじの強度区分

ねじの強さは、ねじ頭に記載されている数字を見れば確認できます。ねじの頭には、材質や強度を示す数字が記載されています。これを「強度区分」といい、はじめの数字は引張強さまたは材質、次の数字は引張強さに対して何パーセントの荷重が降伏点なのかを示します。

鋼製ねじの場合

たとえば、強度区分表示が「6.8」の場合、「6」は引張強さが600N/mm2 、「8」は引張強さの80%である「480N/mm2」が降伏点であることを示します。

ステンレス製ねじの場合

たとえば強度区分表示が「A3-70」の場合、はじめのアルファベットと数字は鋼種区分でA1~A5はオーステナイト系、C1~C4はマルテンサイト系、F1ならフェライト系を示します。したがって、「A3」はオーステナイト系です。「70」は引張強さの70%である「700N/mm2」が降伏点であることを示します。

ステンレス製ねじの強度分布の組み合わせ
鋼種分類 鋼種区分 強度区分
引張強さ 加工法
オーステナイト系
  • A1
  • A2
  • A3
  • A4
  • A5
50 軟質
70 冷間加工
80 高強度
マルテンサイト系 C1 50 軟質
70 焼き入れ
焼き戻し
110 焼き入れ
焼き戻し
C4 50 軟質
70 焼き入れ
焼き戻し
C3 80 焼き入れ
焼き戻し
フェライト系 F1 45 軟質
60 冷間加工

これにより、たとえば「A3-80」は
「オーステナイト系で引張強さが80%の高強度のねじ」
ということになります。

鋼製ナットの場合

鋼製ナットの強度区分は保証荷重応力を表しており、たとえば強度区分表示が「10」の場合、JISで規定された強度区分の「10」に相当し、保証荷重応力は1000N/mm2になります。

保証荷重応力
ナットの強度区分 保証荷重応力(N/mm2
4 510
5 520~630
6 600~720
8 800~920
9 900~920
10 1040~1060
12 1140~1200

ボルトとナットの組み合わせ

JISは、ナットの強度区分を基準に、そのナットと組み合わせるボルトの強度区分と呼び径の範囲を規定しています。ボルトの強度を十分に発揮させるには、適切なナットと組み合わせなければなりません。

以下に、呼び高さが 0.8d(dは呼び径)以上のナット における、ボルトの組み合わせを示します。

ボルトとナットの組み合わせ
ナットの
強度区分
ナットの呼び径範囲 組み合わせるボルト
スタイル1
(1種/2種)
スタイル2
(10割ナット*)
呼び径範囲
(mm)
強度区分
4 16を超える - 16を超える 3.6、4.6、4.8
5 39以下 - 16以下 3.6、4.6、4.8
39以下 5.6、5.8
6 39以下 - 39以下 6.8
8 39以下 16を超え
39以下
39以下 8.8
9 - 16以下 16以下 9.8
10 39以下 - 39以下 10.9
12 16以下 39以下 39以下 12.9
10割ナット
高さが呼び径の約10割(例:M10=高さ10mm)のナットです。
コラムColumn

電動キャリパーブレーキとねじ

電動キャリパーブレーキとねじ

近年の自動車ブレーキ関連技術の中で、電動キャリパーブレーキの採用が電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)を中心に広がってきています。

「電動キャリパーブレーキ」とは、ブレーキキャリパーをモーター駆動でコントロールするブレーキシステムです。電動キャリパーブレーキではブレーキを押すピストンのストロークが短いことに着目し、ボールとボールの間にばねを配置したボール循環部がないコンパクトなボールねじを採用しました。

電動キャリパーブレーキは、キャリパーを押すピストンを油圧ではなくモーターで押します。キャリパーを押すマスターシリンダーのストロークはボールねじでコントロールします。この技術により、EVやHEVのエネルギー回生*を最大限に活かし、その効率や制動力は大きく向上するといわれています。

エネルギー回生
自動車のブレーキングによって発生するブレーキの発熱や運動エネルギーを電気エネルギーに変換し、再利用する働きのことです。この機能を備えたブレーキを「回生ブレーキ」、システムを「エネルギー回生システム」といいます。

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