静電気とは

「静電気」は、私たちの暮らしに身近な存在です。衣服を脱いだり、エレベータのボタンを触ったりしたときに、パチッと音がして痛みを感じる。そんな経験を誰もが一度はしたことがあるでしょう。
性別・年齢を問わず、多くの人が不快に感じるこのやっかいな「静電気」は、一体何者でしょうか。そもそも、どのようにして「静電気」は発生するのでしょうか。
ここでは、「静電気」発生のメカニズムと痛みについて紹介します。

静電気のメカニズム

私たちの身の回りにはいろいろな「もの」があります。金属、プラスチック、繊維など、その素材や構造はさまざまです。
これら、私たちの身の回りにあるものはすべて電気をもっています。どんなものでも、プラスとマイナスの2種類の電気をもっています。私たち人間も同じです。通常は、プラスの電気とマイナスの電気を同じ数だけもっています。

プラスが1個、マイナスが1個
プラスが1個、マイナスが1個

上の図は、プラスの電気とマイナスの電気が同じ数だけあるので、釣り合いがとれており、バランスが良い状態といえます。専門的には「電気的に中性な状態」といいます。
これは、中性という言葉の通り、プラスでもマイナスでもない状態です。つまり、「電気を帯びていない状態」ということができます。電気的に中性な状態のものに触っても、電気を帯びていないため、パチッとすることはありません。
しかし、このバランスが良い状態は常に保たれるわけではなく、ある現象をきっかけに簡単に崩れてしまいます。その「ある現象」とは、「衝突」です。異なる2つのものが衝突すると、片方からもう片方へマイナスの電気が移動します。

2つのものの間には、マイナスの電気を「奪う側」と「奪われる側」という関係があります。これは、「もの」によってマイナスの電気を引っ張る力が異なるために生じる関係性です。2つのものがぶつかったとき、マイナスの電気を引っ張る力が強い方へ、もう一方のマイナスの電気が移動するのです。

ぶつかると"マイナスを引っ張る力が強い方"にマイナスの電気が移動する
ぶつかると"マイナスを引っ張る力が強い方"に
マイナスの電気が移動する

マイナスの電気を奪われた側は、プラスの電気が多くなります。一方、マイナスの電気を奪った側は、マイナスの電気が多くなります。もともとはバランスが良い状態だったものが、ぶつかったことでバランスを崩してしまったのです。

このバランスが崩れた状態のことを「静電気」といいます。静電気を帯びていることを専門的に「帯電している」といいます。
静電気には、プラスに帯電した「プラスの静電気」と、マイナスに帯電した「マイナスの静電気」が存在することになります。

「静電気」を帯びたものは、電気的にバランスが悪い状態です。バランスが悪いものは、どうにかして元のバランスが良い状態に戻ろうとします。例えば、つまづいてバランスを崩したときに体勢を立て直そうとする人間の動作と同じです。転びたくないのでバランスが良い状態に戻ろうとするのです。

痛みの正体と静電気

プラスに帯電したものとマイナスに帯電したものが近づくとどうなるでしょうか。
マイナスに帯電した側のマイナスの電気は、プラスに帯電した側に戻ろうとします。バランスを取り戻そうとするためです。そして両者が触れた(極度に近づいた)ときに、マイナスの電気は、プラスに帯電した側に戻ります。

このマイナスの電気が戻る動きを「放電」といいます。放電とはつまり「マイナスの電気の放出」であり、このとき、"もの"と"もの"との間には電流が流れます。

冒頭のエレベータのボタンの例で考えてみましょう。例えば、エレベータのボタンがマイナスに帯電していたとします。反対に、そのときに自分がプラスに帯電していたとします(人間はプラスに帯電しやすい性質をもっています)。
この状態でエレベータのボタンに触ると、マイナスの電気が自分の手に流れ込んできます。「放電」が起き、電流が流れているのです。感電(身体が電気に触れる)している状態で、人は痛みを感じます。
一般的に、この軽い感電を指して「静電気」という言葉が使われますが、正確にはこれは「静電気によって起きた放電」なのです。

痛みの正体と静電気

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