広い空間の静電気除去

一般に静電気が発生する場所といえば、物と物が摩擦した部分と考えられがちです。しかし、静電気は移動する物や人などすべてから発生する可能性があり、微弱な静電気に至っては、部屋全体に行き渡る場合があります。
ここでは、広い空間で発生した静電気の除去の原理を説明、その事例を紹介します。

広い空間の静電気除去とは

静電気は、物を動かしても、人が歩いたり動いたりしても発生します。したがって、人が行き来する場所や部品を運搬する空間は、いつも帯電しているといえます。
たとえば、クリーンルームや電子部品を収納している倉庫などでは常に静電気が発生しています。このため、静電気による異物の付着や部品の破壊を防ぐには空間を除電する必要があり、これを広い空間の静電気除去といいます。

空間の静電気除去の原理

除電器(イオナイザ)が発生させるプラスとマイナスのイオンは、結合するとイオンが消滅し、除電効果が失われます。したがって、広い空間を除電するには、プラスとマイナスのイオンを結合させず遠くまで運ぶ必要があります。
イオンの発生周期が短いと、短い時間でプラスとマイナスが切り換えられ*、イオン同士が結合するため遠くまで届きません。逆に、イオンの発生周期が長いと、同極性のイオンを放出している時間が長くなるので、お互いに反発し合ってイオンが広がりやすくなります。
そこで、イオンを結合させないように除電器(イオナイザ)のプラスとマイナスのイオンの発生周期を長くしてイオンを広がりやすくすると、広い空間の静電気除去が可能になります。

「再結合現象」という、プラスイオンとマイナスイオンが結合して両方のイオンが消滅してしまう現象のこと。

発生周期が短い場合
発生周期が短い場合
発生周期が長い場合
発生周期が長い場合
  1. A:電極針
  2. B:発生周期
  3. C:再結合現象
  4. D:消える
  5. E:届く

除電器(イオナイザ)による空間の静電気除去事例

空間に広くイオンを届けるには、パルスAC方式やパルスDC方式のバータイプ除電器(イオナイザ)が有効です。バータイプの除電器なら、異物が浮遊している空間に対して、部屋ごと広範囲に除電することができます。イオンを部屋全体に行き渡らせ空間に漂う異物自体を除電することで、静電気による異物付着を防ぐことができます。

事例-1:エアシャワー時の除電

人体には、髪の毛や多くのホコリ・塵が付着しています。エアシャワーでは、エアで飛ばしたホコリが人体に再付着します。そこで、静電気除去したい現場の入室前にバータイプ除電器(イオナイザ)を使うことで、作業者の帯電と異物の持ち込みを防ぐことができます。半導体製造工場や精密加工工場などのクリーンルームの入り口では、このような静電気対策が有効です。

事例-1:エアシャワー時の除電

事例-2:広い空間を漂う異物への対策

広い空間に異物が浮遊している場合は、バータイプ除電器(イオナイザ)で、部屋ごと広範囲に静電気を除去します。部屋ごと静電気を除去することで、異物自体の静電気も除去でき、異物付着を防ぐことができます。半導体デバイスを収納した倉庫でのESD(Electro-Static Discharge:静電気放電・サージ)対策には、このような方法が有効です。

事例-2:広い空間を漂う異物への対策

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