除電器の原理と種類

除電器の原理と種類

除電器(イオナイザ)の種類は、空気分子をイオン化する方法として、コロナ放電を利用するタイプと光を利用するタイプに分かれます。

コロナ放電式の除電器は、針状の放電電極へ電界を集中させることによりコロナ放電を発生させ、イオン化した空気で除電する仕組みで、さらに「自己放電式」と「電圧印加式」に分かれます。

電離放射線を用いた除電器は、微弱な軟X線を使用する「軟X線式」、アルファ粒子を使用する「α線方式」、紫外線を使用する「紫外線式」とがあります。

その中でも、「コロナ放電式(電圧印加式)除電器」は、安全で安定した高い除電能力と、精度の高い除電を必要とする製造現場などで、多く利用されています。

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電離放射線式の除電原理

放射線により帯電物物体近傍のガス分子を電離し、イオン化します。
光源に軟X線、紫外線、放射性同位元素の3種類があります。両者の違いは光源だけで、イオン化原理はほぼ同一です。

軟X線方式は、軟X線が空気中の分子によって散乱されると、その際に吸収されたエネルギーによって分子中の電子が励起・放出されます。電子を放出した分子はプラスイオン化します。電離した電子が近傍の中性ガスに衝突し、吸着すると、その分子はマイナスイオン化します。

紫外線方式は、紫外線(光子)が空気中の原子あるいは分子に吸収されると、その際に吸収されたエネルギーにより、電離します。

放射性同位元素からのアルファ粒子による空気の電離作用を用います。放射能を用いるので、現在はほとんど用いられていません。それぞれの特長を以下の下表にまとめます。コロナ放電式との最大の違いは、除電器近傍でイオンを生成するのではなく、ワーク近傍でイオンが生成できることです。

電離放射線式の特長

軟X線方式 紫外線方式 α線方式
○イオンバランスが良い ○減圧環境下で使用可能 ○イオンバランスが良い
○副生成物が無い ×大気圧下はオゾン発生多い ○電源不要
○不活性ガス中除電可能 ×大気圧下は除電距離が短い ×除電距離が短い
○防爆環境内使用可能 ×人体に影響(被曝) ×人体に影響(被曝)
×人体に影響(被曝) ×ランプ交換必要(1年) ×廃棄に手続きが必要
×ランプ交換必要(1年) ×廃棄に手続きが必要  
×廃棄に手続きが必要    

電離放射線式の特長

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コロナ放電式の原理

電圧印加方式のコロナ放電式除電器は、高電圧を印加する針状の電極と、高圧電源、アース電極で構成されており、電極針に高電圧(±3kV以上)を印加することで電極針の先端部分でコロナ放電を発生させています。

コロナ放電式の原理

コロナ放電が発生すると、電極針周辺に存在している空気が電気的に分解され、イオンが発生し、このイオンで反対極性の静電気を電気的に中和することで除電を行います。

自己放電式の除電原理は、針状導体が接地された構造となっています。針状導体を帯電物に近づけると、その間の電位差によりコロナ放電が発生し、針状導体近傍の空気が電気的に分解、イオンが発生します。このイオンで反対極性の静電気を電気的に中和することで除電を行います。

針状導体(常に0V)と帯電物の電位差を利用し、コロナ放電を発生させるため、帯電物の電圧が±3kV以下になるとコロナ放電が消え、それ以上の除電ができなくなります。
一般的に、電圧印加式の「コロナ放電式除電器」と呼ばれるものには、次の3タイプがあります。

ブロアタイプ

ブロアタイプ

図は、代表的なブロアタイプイオナイザです。
机上での作業時に簡単に設置して使用できる除電器で、内蔵されたファンからイオン化エアーが供給されるタイプです。

コロナ放電で発生したイオンをブロワーの風で搬送し、正負のイオンを含んだ風で帯電物を除電するので、凹凸を持つような形状の物体を除電するのに適しています。
また、人体の除電にも使用可能で、人体は導体に近いため、イオン風を人体全体ではなく、一部に当てるだけで除電効果が得られます。

ブロアタイプ

バータイプ

バータイプ

図は、代表的なバータイプイオナイザです。
例えば、樹脂成形品の付着防止や、ウエハ搬送時の帯電防止、シート材のゴミ付着防止など、広範囲に渡る安定した除電を行いたい場合に適したタイプです。

バータイプ

スポットタイプ

スポットタイプ

図は、代表的なスポットタイプの除電器です。小型ヘッドで、局所的に狙ったポイントを除電することが可能です。取り付け箇所を選ばず、装置のすき間などから狙ったポイントだけをスポット的に除電できるタイプです。
一般的に供給できるエアー圧力も高く、除電と同時にゴミやホコリを「吹き飛ばす」ことも可能です。

スポットタイプ

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コロナ放電とは

コロナ放電(Corona Discharge 局部破壊放電)は、不平等電界中で局所的に電界の大きい箇所の近傍で電離作用が行われ、局部的に微かな発光を伴った放電のことです。
この場合のコロナ放電の発生条件は、放電を発生させたい箇所の電界の強さおよび気体分子のイオン化のしやすさで決まります。
コロナ放電の強さを決定する要因は、電極構造、印加電圧、気圧、気体の種類があります。

接地電極の役割

接地電極の役割

実際の電極構造は電極針周辺に接地電極が配置されています(図)。接地電極は、接地された導電体です。

接地電極の役割

電極針周辺に接地電極が無い場合、電極針近傍の電界の強さ(V/m)が非常に弱くなります(図)。

電界の強さは、電極間の電位差を電極間距離で割って求めます。
電極針周辺、例えば20mmの距離に接地電極を置き、電極間電位差が+7kVの場合、電極近傍での電界強度は・・・

→350kV/m

接地電極が無く、電極針からアースまでの距離が1mの場合、電極近傍での電界強度は・・・

→7kV/m

これでは電界強度が弱く、コロナ放電が行えないため、電極針周辺に接地電極を配して電界強度を強くします。

設置電極のデメリット

設置電極のデメリット

接地電極は、前述したように電極針周辺の電界強度を強くするために必要です。
反面、生成したイオンが接地電極に引き寄せられ電気的に中性化されてしまいます。
一般的に、生成イオンの半分~9割程度が接地電極により中性化されます。

放電開始電圧

放電開始電圧

電界強度の強さとコロナ放電は、非連続的な関係です。電界強度が一定値以上の領域で、コロナ放電は発生します。しきい値を超えない間は、コロナ放電は発生しません。
例えば、針状電極と平板電極を20mm間隔で対向させて針状電極に直流電圧を印加すると、約3kVでコロナ放電が表われます。
電極針への印加電圧を更に上げて行くとやがて火花放電へといたります(図)。図に様々なコロナ放電の形状分類を載せていますが、必ずしも順序どおりになるとは限りません。針状電極の直径・電極間距離や環境により、現れるコロナ放電の種類およびコロナ放電が開始される電圧値は変わります。

コロナ放電が表われる電圧値のことを放電開始電圧と呼びます。
放電が開始されてから、次の種類のコロナ放電に移るまで、例えばグローコロナからブラシコロナに移るまでの間、放電電流値は印加電圧に比例します。
除電器で考えると、放電電流値はイオン量に等しいので、イオン量は印加電圧値に比例することが分かります。

コロナ放電とオゾン

コロナ放電時には、正負イオンだけでなくオゾン(O3)も生成されます。
オゾンが生成されるプロセスは3つあります。

  1. 紫外線のエネルギーにより、オゾンが生成
  2. 空気中の水分の電気分解により、オゾンが生成
  3. 電子と酸素分子の反応により、オゾンが生成

いずれもコロナ放電時に生起されるプロセスです。
オゾンは強力な酸化剤、殺菌剤なので、高濃度であると人体や環境に害を及ぼします。
現在、除電器に関してオゾン濃度を規定している規格・指針はないため、各メーカで達成しているオゾン濃度は異なります。使用者側は、一般の作業環境濃度の基準値を参考に、除電器で許容されるオゾン濃度を求めます。日本では0.1ppm(8時間未満)が基準値です。

除電器と感電/漏電

コロナ放電式除電器は、±数kV以上の高電圧を扱う機器です。電極針には、高圧電源が発生した高電圧が印加されています。初期の除電器の場合、電極針先端からの漏電や、電極針から周辺部への異常放電発生による火災の危険性がありました。現在の除電器は、本質安全性と機能安全性の両面で対策がされています。

本質安全性は、電極針と高圧電源間に抵抗やコンデンサを入れる事で、μA~mAオーダーの電流しか流れない設計になっている点が挙げられます。

機能安全性は、漏電や異常放電時に電力を遮断する保護回路が挙げられます。

除電器と感電/漏電

但し現在でも、高電圧を伝送するケーブル部分の配線には注意が必要です。
高電圧ケーブルから周囲への放電リスクをなくすため、十分な絶縁距離を保つ配線を施工します(上図高圧ケーブル配線参照)。

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