現在、日本全体でDXが「大きなうねり」となっています。これは保険仲介業の私たちには「危機であり、好機である」といえます。
まず「危機」という観点。現在、あらゆる業界でDXの進展により「仲介業」の存在感が低下、あるいは形を変えています。たとえば旅行業界はどうでしょう。かつて宿泊先や航空券の予約、手配は、伝統的な旅行代理店という仲介会社に頼むのが一般的でした。しかし、今は個人がネットを使って、直接、または従来とは違うモデルの代理店を通して手配できます。
これと同じ現象は保険の仲介業にも必ず起きる。いや、すでに起きつつあります。これはこれまでのやり方に固執していれば、事業基盤が崩壊するかもしれない「危機」です。
一方で、それは同時に「好機」ともいえます。たとえばコンピュータ。今はハードウェアよりソフトウェアの方が、収益を上げるドライバーです。これと同じようなことが保険でも実現できると考えています。
保険という「商品(ハードウェア)」は保険会社が作る。ここで我々が、データ分析やAIを使って顧客の課題やニーズを把握し、最適の提案をする。そんな「ソフトウェア」としての価値、他社にない強みを確立すれば、今以上に成⾧できます。つまり「好機」です。
次に、業務効率化の「のびしろ」。そもそも保険は紙が多い業界です。これを効率化したい。社内からは「保険会社が変わらなければ、代理店側から何もできない」という声もあります。だが本当にそうか。確かにそういう側面もありますが、自分たちが勝手に慣習と決めつけ、それを「業務上の必然」と呼んでいる、そんな部分もあるのではないのか。DXを通じ、仕事のあり方を根本から見直せば、紙はもっと減らせ、作業時間を短縮できます。その分を「お客さまのために何ができるかを考え準備する」という本質的な活動に使っていきたい。今、紙が多いのは、その分合理化の「のびしろ」が大きいともいえます。
最後に「社内の意識改革」。私は前職の銀行で、フィンテックの部門も担当していました。金融サービスは変わっていく。なのに過去の成功体験にこだわり、混濁した意識のまま、本当に仲介会社として生き残っていけるのか。我々は変わらなければならない。前職での経験も踏まえ、「変わる」ことを円滑に進めるための起爆剤としてDX。これは、何か秩序だった計画を立てて、順を追って積み上げる性質の話ではない。失敗はつきもの。いや、失敗していないのは、つまり「挑戦していない」ということであり、その方が危ない。経営者として、明らかにリスク過大な時は手綱を締めるが、基本的には多少の失敗は織り込んだ上で、組織を組み、予算をつけていく。そうやって、社内を変えていきたいと考えています。
・・・などと1人で構想を抱いていた時、偶然にも、期末の納会で彼ら3人が「DXを推進したい」と提案してきたのです。これはもう、渡りに船というか、飛んで火に入る夏の虫というか(笑)。彼らの積極行動のおかげで人選の手間が省けました。さっそく活動計画をまとめてもらい、その上でDX推進部門を組織化したわけです。