株式会社横河ブリッジ

株式会社横河ブリッジ 執行役員 兼 製品エンジニアリング事業部長 小藤 輝正 氏に、KIを導入した経緯とその効果について詳しく聞きました。

「設計本部、生産本部、製品エンジニアリング事業部でKIを活用、また全社を横断するデータドリブン推進ワーキンググループも発足させました」

株式会社横河ブリッジについて

株式会社横河ブリッジは鋼橋(金属製の橋)を事業分野とする日本有数の企業です。明石海峡大橋やレインボーブリッジなどさまざまな鋼橋を建設しています。このほか、建築の鉄骨建方工事や高減衰構造体など精密機器の製造機材も手がけています。

創業 1907年(設立2007年)
年商 894億87百万円
(2024年3月期)
従業員数 1000名

※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。

活用状況・課題・効果

活用状況

  • ・設計本部、生産本部、製品エンジニアリング事業部でKIを活用。全社を横断するデータドリブン推進ワーキンググループも発足
  • ・設計本部デジタルエンジニアリング部では、予実管理と不具合分析環境を構築し、要因分析によって課題発見・解決を図っている
  • ・生産本部工務課では、工数改善を図るために作成している月次資料をKIに置き換え、分析に活用している
  • ・生産本部品質保証課では、橋桁の仮組立出来形の改善を目指し、各仮組ヤード・項目・形式について傾向を分析している

導入前の課題

  • ・デジタルエンジニアリング部では、生産に直結する業務の特性上、手戻りが後工程に大きな影響を及ぼしてしまうため、不具合撲滅に課題があった
  • ・工務課では、原価計算の基礎となる歩掛の正確な把握に課題があり、品質保証課では仮組班による測定と品証課の測定のズレに課題があった
  • ・製品エンジニアリング事業部では予算達成のための、案件の必要十分量を知る必要があった

KIへの評価、導入効果

  • ・要因ツリー機能による、ワンクリックの要因深掘り分析を高く評価
  • ・キーエンスは外部の担当者というよりは、プロジェクトメンバーのような存在

社内4部門でデータ分析を推進

KIの活用状況を教えてください。

KIは現在、設計本部のデジタルエンジニアリング部、生産本部の工務課と品質保証課、そして製品エンジニアリング事業部の計4部門で活用しています。また全社を横断するデータドリブン推進ワーキンググループも発足させました。

図面の次元変換の際に生じる、不具合の解析にKIを活用

設計本部デジタルエンジニアリング部では、どのように活用していますか?

デジタルエンジニアリング部は、KIに最初に興味を持った部門でもあります。あるときキーエンスからKIを紹介するダイレクトメールが来ました。キーエンスといえば営業利益率が50%を超える高収益企業として知られており、そんな企業が、自社業務のために開発したデータ分析システムを外販しているという。それを聞いて、このシステムを私たちの不具合分析に使うことはできないかと、当初は考えました。

デジタルエンジニアリング部の業務では、2次元図面を基に3次元モデルを作成し、橋桁の形状を決定後、工場製作のため再び2次元に変換するという作業がありますが、この次元変換の過程で不具合が一定の頻度で生じています。この課題に対して、データ分析を通じて解決していきたいと構想しました。

ただこの取り組みはそれが成功したとしても、費用対効果の点で大きな効果は見込めず、これだけでは全社導入の材料として不十分である懸念もありました。そこで生産本部を巻き込むことにしました。

品証課では測定結果の違いに、工務課では歩掛の正確把握に課題があった

生産本部を巻き込んだ、とは具体的には?

生産本部は当社の中で、もっともデータを豊富に有する部門です。しかしそのデータもエクセルベースで管理・分析されていて二次元でしか捉えられていないのではないか、KIを使えば複数のエクセルファイルを使って三次元・四次元的に分析できるのではないかと考えました。

まず工務課。ここでは工場の作業員一人ひとりの日報すべてを集計し、各工事の各作業でどれぐらい時間を要しているか集計します。それにより作業ごとに要する工数を把握して歩掛を設定し、同種工事の応札用に「原価」を算出しています。

橋の仕事は公共事業であり、入札が前提となります。入札の予定価格について、発注者である自治体は、標準的な歩掛をもとに積算し、一方、私たちは自分たちで把握した歩掛をもとに「原価」を算出し、それに基づいて入札額を決定します。

この原価は、赤字を恐れるあまり安全側、高め側に設定しすぎると、それに伴い「この金額以下では応札できない」という基準も高くなり、受注機会を逸失するおそれがあります。原価を正確に把握し、競争力のある入札価格を提示することは、営業観点において非常に重要であり、工務課でもこの点で課題意識を持っていました。

次に品証課。この課では、工場で作った物の寸法を精密に測り、顧客に提出する書類を作成します。

品証課では、検査のときの「計測結果の違い」について課題意識を持っていました。計測には2種類あって、一つは仮組作業を担当する仮組班が自分で計るもの、もう一つは品証課が納品前の最終検査で計るものです。この2つの結果は本来、一致するべきですが、実際にはズレが生じることがあります。たとえば現場に搬入する前に仮組をおこなうヤードごとに寸法が異なることもある。その原因は何か、どんな場合にどの程度のズレが生じるのか、それを詳しく知りたかった。

また生産本部では、従来も「工数改善ワーキング」という会議体で、さまざまなデータ、パラメータを見ながら「ここが予定より少し多いけれど、それはなぜ?」のように分析しており、要因の深掘りには常に高い関心がありました。

そこを糸口に、当時の生産本部長に「工場ではデータを大量に取ってますよね。それを深く分析すれば、きっと効果的で面白いことになるでしょう。やってみませんか」ともちかけたところ、良い反応を得ることができました。

なお品証課での計測結果の課題については、現在のところ大きくは、温度あるいは天気に関わりがありそうだと分かってきました。温度が変われば、鉄の伸縮が生じるのは以前から把握していましたが、KIで分析したところ、天気も要因の一つであるようです。

天気のデータがあっても、以前のExcel閲覧の方法では、詳しい相関分析まで及びませんでした。結局、Excelはよくまとまっているように見えて、「では、なぜそれがそうなるのか」を知りたいとき役立ちません。そこを何とかKIで補い、原因をより深く認識していく、今はようやくその糸口がつかめてきた段階です。

生産本部の生産高は百億円単位になります。ここが1%改善されるだけでも、相当な導入効果になると期待しています。

製品エンジニアリング事業部では、案件の必要十分量の分析へ

製品エンジニアリング事業部では、どのように活用していますか?

私の担当事業部ですが、経験的に分かっていることが多いのでわざわざKIで分析する必要のないと思い、最初は導入するつもりはありませんでした。ただほかの部署の状況を見ていると、経験則をデータに基づいて裏付けることが大切だと考え直しました。それに経験とは違った結果になるかもしれないですしね。

業務の管理方法として、将来、受注の可能性がある「案件」が今の段階でどのぐらいあるかを、受注確率ごとにA ~ Cの3段階に分類、管理しています。

KIを通じて実現したいのは、仮に2年後に受注額、数十億を目指すとして、では今の時点で案件を、A、B、Cそれぞれで、どれほど確保する必要があるか、そこを定量化、見える化することです。「2年後に50億やりたいなら、KIによれば、今の時点でここまで到達している必要がある。では、それに合わせて、具体的にどのように動いていけばいいんだろう」と会話していきたいわけです。

ただ当社のような公共事業、入札制度を前提とした営業では、「案件の創出」は難しい。それは発注者の判断になります。となると、営業活動は「顧客への、判断材料の提供」になります。たとえば「こういう製品を使えば鋼橋のライフサイクルコストがこのくらい安くなります。この製品を、そちらで管理している、この橋梁で使えば、良い結果につながるのではないでしょうか」など情報提供していくわけです。

まず過去5年間のデータをKIに投入し、これを将来予測につなげていきたいですね。

データに基づく思考を企業文化として定着させたい

データドリブン推進ワーキンググループの取り組みについて教えてください。

KI導入に合わせて「データドリブン推進ワーキンググループ」を発足させました。大きな目的はKIを、その導入を先導したデジタルエンジニアリング部にとどまらず、他部署にも広く使ってもらえるよう推進することです。

会社全体に、データを元にした思考やデータドリブンの企業文化を醸成させたい。企業文化は、資産として金銭換算も難しい、評価しづらい価値ですが、だからこそ重要だと思っています。事実に基づき、原因を探る思考。それが文化として根付くだけで、企業の価値は大きく向上します。それを実現するためのツールとして、KIは非常に有用だと考えています。

要因ツリーによる原因の深堀りを高く評価

ツールとしてのKIへの評価をお聞かせください。

KIは、要因ツリー機能を使い、ワンクリックで深掘りを繰り返せる点が魅力です。特定箇所でデータが変動している、その原因を知りたいときは、そこをクリックし、出てきたデータをさらにクリックする、というようにして、データの内訳、変化が生じている要因を簡単に知ることができます。

今後はKIを、月次会議でのコミュニケーションツールとしても活用し、データに基づいて事実と推測を切り分けた議論が、当たり前にできるようにしていきたいですね。

キーエンスの担当者は、こちらが話す建設業界の言葉もよく理解しており、ストレスなく円滑に話せます。「それはこういうことですか」のように、会話の流れの中で新しいアイディアが出てきます。キーエンスの方は外部の担当者というよりは、仲間、ワーキンググループの1メンバーのように感じています。

工事への人の割り当ての最適化も視野に入れる

KIの今後の活用計画を教えてください。

これは私個人の思いで、今後のというか実現にも高いハードルがあると思うのですが、一つのテーマとしては、現場などの人員配置に対してKIを活用することが考えられます。

社員の人事データと個別工事のデータを分析することで、人の割り当ての「相性」のようなものを、KIがA群、B群、C群のように属性分類し、こういう現場ならA ~ C群の中からこう組み合わせるのがよい、といったヒントが導き出せればと良いと思います。そうした手法が確立すれば工事現場のみならず社内の人員配置にもデータ分析が応用できることでしょう。キーエンスには、そうした当社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じて⽀援いただくことを希望いたします。今後ともよろしくお願いします。

株式会社横河ブリッジ

「設計本部、生産本部、製品エンジニアリング事業部でKIを活用、また全社を横断するデータドリブン推進ワーキンググループも発足させました」

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