「チキンナゲット®(1984年)」「シャウエッセン®(1985年)」から「⽯窯⼯房®(2002年)」に⾄る、20年の間、⽇本の主流世帯は、いわゆる「標準世帯」、お⽗さん、お⺟さん、⼦供2⼈の4⼈家族でした。当然、商品開発のときも標準世帯を念頭に置いていました。それは当たり前すぎて、誰もいちいち⼝にしないほど「当然の前提」でした。
しかし現在、⽇本の主流、もっとも多いのは、⼀⼈暮らしの「単⾝世帯」です。今後、各世帯の⽐率はさらに変化するでしょう。以前は、ただ「新しいジャンルの画期的な商品」を考えれば良かった。それを⾷べるのは「主に標準世帯」に決まっていました。しかし今は、その前提から考え直さなければならない。お客様の豊かな⾷⽣活作りに貢献するために、私たちはもっと「お客様」のことを知る必要があり、だからこそ「お客様のライフスタイルを研究する」ライフスタイル研究室が作られたのです。
⽇本ハムの商品は、主に家庭⽤商品が多く、最後の販売は⼩売企業がおこないます。私たちは最終消費者との直接接点を持たないので、購買データを通じて、直接お客様のことを知るのが難しいのが現状です。これまでは、1969年から継続する独⾃のモニター制度である「奥様重役会」などを通じて、消費者の声を聞く努⼒をしてきました。しかし、それだけでは「⽇本ハムのファン」あるいは「少なくとも多少の関⼼がある⼈」の声しか聴けません。そのため、奥様重役会に加えて、もっと広範囲に、より客観的に、⽇本ハムに特に関⼼のない⼈も含めた、幅広い意味での「潜在顧客」の全体像を知る必要があります。
最近、提携先の⼤⼿⼩売企業様から、膨大な規模の購買データを借り受けることが可能になりました。このようなデータと「家計調査」など公表されている統計データを組み合わせることで、⽇本ハムの顧客像の分析、認識を深めたいと考えています。
⽇本ハム株式会社
⽇本ハム株式会社 ライフスタイル研究室 室⻑ ⼯藤 和幸⽒、主任 菅原 宇希⽒にKIを導⼊した経緯と⽬的について詳しく聞きました。
「食品市場の『前提の変化』をデータ分析を通じて正しく認識したいと考えています」
⽇本ハム株式会社について
⽇本ハム株式会社は、⽇本そして世界を代表する総合⾷品企業の⼀つ。⽇本国内の⾷⾁業界での売上⾼1兆2,300億円(2019年3⽉期)で売上は第1位、世界的にも第5位の規模。従業員数30,840⼈(海外7,957⼈)、⾃社農場、製造、物流、営業など国内580カ所に拠点、設⽴1949年。
年商 | 1兆2,300億円 |
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従業員数 | 30,840名 |
設⽴ | 1949年 |
※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数で記述しています。
データ分析の取り組み
⽇本ハムでは、データ分析にどのように取り組んでいますか?
弊社では1990年代のはじめ、まだ売上⾼7,500億円だった時代に、「1.5兆円に倍増させる」という⽬標を⽴てました。現在の売上⾼は1兆2300億円です。2018年には、さらなる顧客満⾜の向上、そして企業としての成⻑を実現するべく、⽣活者(お客様)の実態やニーズ(困りごと)を知るために「ライフスタイル研究室」を⽴ち上げました。この「顧客を知る」活動の⼀環が、データ分析です。いま⾷品業界では、⼈⼝動態に代表される市場環境の変化に伴い、企業活動の「前提そのもの」が変わりつつあります。これは弊社の事業分野である、調理加⼯品、⽔産品、乳製品、健康⾷品などに影響を及ぼします。この「企業活動の前提の変化」をデータを通じて把握することも、データ分析の⽬的の⼀つです。
調理加⼯⾷品での取り組み⽅針
調理加⼯⾷品でのデータ分析の⽅針を教えてください。
根本のところから、ご説明します。
市場でもシェアが⾼い調理加⼯⾷品は、シャウエッセン®、チキチキボーン®、⽯窯⼯房®などです。⼿前味噌で恐縮ですが、⽇本ハムは過去、「それまでなかった商品カテゴリを新たに創出する」という試みに何度も成功してきました。
まず「美味なる物には⾳がある」というコンセプトで、1985年に開発した「シャウエッセン®」。⾷べてパリッと⾳がするソーセージという新分野を開拓し、発売から30年以上を経た今も定番商品として売れ続けています。
チキンナゲット(⾻なし鶏⾁)も、「チキンナゲット®(1984年)」として、弊社が先⾏して市場投⼊したものです。この他、家庭で本格ピザが楽しめるチルドピザ「⽯窯⼯房®(2002年シリーズ⽴ち上げ)」、野菜を⼀品加えるだけでバランスの良い中華料理がすぐにできる「中華名菜®(1994年)」など、新しい製品ジャンルを次々開拓してきました。
しかし近年は、以前と⽐較して、新ジャンルを開拓するのが難しくなってきています。理由の⼀つが「市場の前提の変化」です。
「前提の変化」への対応を
「市場の前提の変化」とは具体的には?
⾷⾁事業での取り組み指針
⾷⾁事業での、データ分析の⽅針は?
⽇本ハムは、ハム、ソーセージの印象が強いのですが、実は売上⾼の57%、つまり約8000億円は豚⾁、鶏⾁、⽜⾁など⾷⾁事業による売上です。国内124箇所に⾃社農場を持ち、⽣産、加⼯、流通まで、すべて⾃社でおこなう垂直統合⽅式です。
現在、⽇本の⾷⾁流通の約20%を弊社が担っています。象徴的にいえば、スーパーに並んでいるお⾁を買うとき、あるいは外⾷で⽣姜焼き定⾷やホイコーローなど⾷べるとき、その約2割が⽇本ハムのお⾁であるわけです。今後、⽇本ハムが成⻑を続けるには、売上の過半を占める⾷⾁事業のさらなる強化が不可⽋です。しかし、ここでもやはり、調理加⼯⾷品と同じく「市場の前提の変化」が浮かび上がります。実は、⼈⼝が減少に転じたここ数年でも、⽇本の⾷⾁全体の消費量は下がっていません。調査によれば、シニア層の⾷⾁消費が伸びている。たとえば「すき焼き」の消費が⽬⽴っています。いまのシニア層は、⼦供の頃、⾁がまだ貴重品で、すき焼きが「⽉に⼀度のごちそう」だった世代です。そのシニア層が経済的に余裕が出た今になって、「すき焼きを、⽉に何度でも、お腹いっぱい⾷べたい」と思っても不思議はありません。しかし世代の⼊れ替わりが必須である以上、この傾向も恒久のものではなく、調理加⼯⾷品と同じく⾷⾁事業でも、顧客の実像を知る努⼒が必要になります。ただ、⾷⾁販売のデータ分析は⾮常に難しい。というのも⾷⾁は、シャウエッセン®など調理加⼯⾷品のように商品番号(JANコード)がついておらず、モモ⾁、ムネ⾁など⼤ざっぱな総称のもと、1個、2個ではなく、グラム単位で計り売りしているからです。シャウエッセン®の販売データなら、JANコードで追えば、どこでいくつ売れたのか相当正確に分かります。しかし、⾷⾁ではそうしたデータ追跡が⾮常に難しいです。それでも各種統計を参照するなどして、今後、何とかデータ分析の理路を⾒いだしたいと考えています。
KIを選んだ理由
今回、KIを導⼊した経緯を教えてください。
KIはマーケティング/営業⽀援ツールの展⽰会で知りました。導⼊にあたっては、POS分析システムなど他製品とも⽐較検討しました。その際の⽐較基準、要件は次の通りです。
要件1.「こちらのバイアス(思い込み)を排除できる仕様であること」
弊社では、これまで「斬新な発想」を求め、「想い」をもって商品開発に取り組んできました。「想い」は今後も不可⽋ですが、それが強すぎると「思い込み」が⽣じるおそれもあります。データ分析は思い込みや先⼊観を排除するべくおこなうものですが、⽅法を間違えると、分析を通じて逆に思い込みが強化されます。新たに導⼊する分析ツールには、こちらの先⼊観をなるべく排除する仕様であることを求めました。
要件2.「⾃由度が⾼いこと、チャレンジできること」
POS分析ツールには、通常、いくつか「テンプレート」が付属しています。それを使えば、その⽇からでも簡単にPOS分析ができる。たしかに便利です。ただ、今回はこのテンプレートの存在が、POS分析ツールを不採⽤にした理由となりました。テンプレートを使えば誰でも同じように分析できる、つまり、誰がやっても同じ。テンプレートの枠内でしか発想できなくなる。つまり他社と同じ発想になり、それでは意味がない。だからテンプレート無しで、⾃由に汎⽤的に分析できるツールであることを求めました。
要件3.「使いやすいこと」
私たちはいわゆる「データサイエンティスト」ではありません。またデータ分析は、重要度が⾼いとはいえ、ライフスタイル研究室の「業務のひとつ」なので、データ分析の「勉強」に専念できません。こうしたリテラシーの我々なので、簡単で直観的に⾃由に使えるツールであることを求めました。
以上、3要件で⽐べたところ、KIが最も優れていましたため、導⼊を決定しました。
先⾏ユーザーとしてのアドバイス
現在、KI導⼊を検討している企業に向けて先⾏ユーザーとしてのアドバイスなどあればお願いいたします。
⾃社にKIが向いているどうかを判断する基準の⼀つとして、「チャレンジを欲しているかどうか」が挙げられるかもしれません。チャレンジが不要なら、テンプレートが豊富なシステムか、あるいは極論すればエクセルでも良いわけです。しかし⾃由な分析と新たな発⾒を求めるなら、KIは良い選択肢たりうると考えます。⽇本ハムは、20年後の創業100周年にむけて、さらに成⻑していく所存です。そのためにもKIを使いこなし、さらに顧客と市場を熟知していく必要があります。キーエンスには、そうした弊社の取り組みを優れた技術、製品、サポートを通じて後⽅⽀援いただくことを希望します。今後ともよろしくお願いします。
⽇本ハム株式会社
「食品市場の『前提の変化』をデータ分析を通じて正しく認識したいと考えています」
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