幾何公差とは

JISでは、幾何公差を「幾何特性仕様(GPS:Geometrical Product Specification)の規格を幾何特性ごとに表現する公差」と定義しています。つまり、「幾何特性」とは物の形・大きさ・位置関係などを指し、「公差」とは「許容される誤差」を指します。サイズだけでなく、形や位置に許される誤差まで定義しているところが「幾何公差」の特徴です。

サイズ公差(寸法公差)と幾何公差の違い

設計図面の記載方法には、大きく分けて「サイズ公差」と「幾何公差」があります。サイズ公差では、各部部分の長さを規制します。
一方、幾何公差は、形状や平行さ・傾き・位置・振れなどを規制します。

サイズ公差図面
サイズ公差図面
幾何公差図面
幾何公差図面
「示した面(A)に対して『平行度』は『0.01』を超えないように加工してください」という意味

幾何公差の利点

なぜ、幾何公差が必要なのでしょうか。
たとえば、設計者が板状の部品を発注する場合、サイズ公差では以下のような指示になります。

  1. 幾何公差の利点
  2. 幾何公差の利点
    a
    公差域

しかし、この図面では、以下のような部品が納品される恐れがあります。

幾何公差の利点
a
公差域
幾何公差の利点
a
公差域

この部品は、不適合品または不良品になります。
原因は、図面に平行性が記載されていないためです。
この責任は、加工業者ではなく、設計者の公差指示にあります。

同じ部品の図面を幾何公差で表すと、以下のようになります。ここでは、サイズに加えて「平行度」と「平面度」という幾何公差が追加されています。これなら、サイズ公差で発生したようなトラブルを避けることができます。

幾何公差の利点
a
平行度公差
b
平面度公差
c
基準面

つまり、幾何公差にはサイズ公差では表現できない設計者の意図を正確に、効率的に伝えることができるという利点があります。

独立の原則

サイズ公差と幾何公差では、規制する公差が異なります。サイズ公差は長さ、幾何公差は形状や位置関係を規制します。
なので、サイズ公差と幾何公差はどちらが良いといったものではなく、両者を併用することで効率の良い公差指示が行えます。

また、サイズ公差と幾何公差は、それぞれ違った測定機器や検査方法で計測します。たとえば、サイズ公差はノギスやマイクロメータなどで2点間計測するため、下図のサイズ公差はすべて合格になります。

サイズ公差域
サイズ公差域
基準寸法形状
基準寸法形状
寸法公差を持った軸(基準)
サイズ公差を持った軸(基準)
公差を持った真円
公差を持った真円
寸法公差を持った軸(基準)
公差域内でゆがんだ円
公差を持った真円
中心軸がずれている円

しかし、幾何公差では丸さや中心軸の位置は真円度測定機三次元測定機で検査するので、指定した公差の程度によっては不合格になる可能性があります。つまり、サイズ公差では合格、幾何公差では不合格になります。

以上から、サイズ公差の規制と幾何公差の規制には、基本的に関係性がないといえます。この考え方を「独立の原則」といいます。

ISOまたはJISでの定義

サイズと幾何特性の関係について、以下の通り定義されています。

JIS B 0024-1988 製図/ISO 8015-1985
図面に指示された各要求事項、たとえばサイズ公差や幾何公差は、特別な相互関係が指定されない限り、他のいかなる寸法や公差または特性とも関連しないで、独立して適用される。

上記の通り、独立の原則の考え方はISOが規定する国際標準です。しかし、アメリカのように独立の原則を適用しないASME(アメリカ機械学会)のルールを適用する企業もあります。このため、特に海外企業と取引する場合は、事前の打ち合わせなどで規格を明確しておくことをお勧めします。

コラムColumn
寸法公差(サイズ公差)から幾何公差へ

製造業の海外シフトが進み、日本の製造現場ではノウハウを維持する人員の確保が困難になりつつあります。この状況を打開するため、「現場力の維持向上」や「付加価値の提供」と同時に、「設計業務の効率化」が叫ばれています。
これを受け、近年になって日本の機械設計業界にも幾何公差の考え方が取り入れられ始めました。それを端的に示すのが、JIS規格の改訂です。

2016年には新たに「JIS B 0420」を制定、それに合わせて「JIS B 0420-1」や「JIS B 0420-2」を改訂するなど、「寸法公差(サイズ公差)から幾何公差へ」の変化を促そうとしています。また、電子情報技術産業協会(JEITA)などの業界団体も同様に、幾何公差の考え方をガイドラインなどに取り入れつつあります。
特に2016年の改訂では、用語に関する内容が以下のように変更されています。

  • 「公差域」は幾何公差における公差域と区別して「サイズ許容区間」に変更。
  • 「actual size」は測得形体への「当てはめサイズ」に変更。
  • 「基準寸法」は「図示サイズ」に変更。
  • 「許容限界寸法」は「許容限界サイズ」に変更。
  • 全文にわたって、「寸法」を「サイズ」に変更した。

さらに、規格の用語も以下の通り変更されています。

図示サイズ 基準寸法
当てはめサイズ 実寸法
許容限界サイズ 許容限界寸法
上の許容サイズ 最大許容寸法
下の許容サイズ 最小許容寸法
上の許容差 上の寸法許容差
下の許容差 下の寸法許容差
サイズ公差 寸法公差
基本サイズ公差 基本公差
基本サイズ公差等級 公差等級
サイズ許容区間 公差域
公差クラス 公差域クラス
ISOはめあい方式 はめあい方式
穴基準はめあい方式 穴基準はめあい
軸基準はめあい方式 軸基準はめあい

製造業のグローバル化に伴い、今後もこれらの規格は変化し続けることが予測されます。最新情報のチェックを心がけましょう。

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