構想設計に入る事前準備「設計書」のポイント

設計における失敗を解決する重要なプロセスで紹介した、構想設計に入る事前準備「設計書」のポイントについてまとめました。 絵を描くときにデッサンからはじめるように、商品設計でも設計書が最も重要です。設計書を疎かにしてモデリングをはじめることは、さまざまなトラブルの要因になります。

使用目的を明確にする

新しい商品を開発する場合、まず企画書を作成します。そして企画書が承認されると、設計者は「使用目的の明確化」を行います。ここからが設計者の仕事で、「設計書」のスタート地点です。使用目的に明確化とは、簡単に言えば商品を「いつ、どこで、誰が、どのように使うか」をまとめる作業です。その際には、「6W2H」に当てはめながらまとめていくとスムーズです。英語の授業で「5W1H」というものを学びますが、「6W2H」はこれに「Whom(誰のために)」と「How much(コスト)」を加えたものです。

6W2H QCD 定義
Why Q 「なぜ開発するのか?」開発の目的や理由をまとめます
Who 「開発するのは誰か?」通常は自社開発者になります。外部に委託する場合は、委託先となります
Whom 「誰のために開発するのか?」想定されるユーザーをまとめます
Where 「どこで使う部品・商品なのか?」開発する部品・商品を使う場所をまとめます
What 「何を開発するのか?」商品や部品、筐体や電気部品、ソフトウェアなど開発するものをまとめます
How 「どのように開発するのか?」何人で開発するのか、どのような技術を使用するのかなど、開発方法をまとめます
How much C 「いくらになるのか?」商品や部品の原価、販売価格、開発費などのコスト面をまとめます
When D 「いつ開発するのか?」開発のスケジュールや期日・納期、生産スケジュールなどをまとめます

技術者の4科目「QCDPa」

設計者がマネージメントする項目として、技術者の4科目「QCDPa」という言葉があります。「Q(Quality:品質)」「C(Cost:コスト)」「D(Delivery:期日)」はよく耳にする言葉で、「QCD」とも呼ばれます。これに「Pa(Patent:特許)」を加えたものが技術者の4科目「QCDPa」です。6W2Hを考えるうえで「QCDPa」も重要なキーワードです。日本は、昔から「Q(Quality:品質)」を中心に考えてきましたが、今ではコストパフォーマンスにあたる「C(Cost:コスト)」、製品サイクルの短縮を実現するために「D(Delivery:期日)」の管理も重要度が増しています。さらに設計者である以上、「Pa(Patent:特許)」を守ることは絶対です。

技術者の4科目「QCDPa」

設計にマーケティングの手法を取り入れる「3C分析」

設計にマーケティングの手法を取り入れる「3C分析」

商品開発では、ユーザーに求められているものを形にすることが目的です。また、より良い商品を生み出すために、他社に勝る部分が必要です。それは機能だけではなく、デザインや値段、使いやすさなどさまざま。その分析方法として、マーケティングでよく用いられる「3C分析」が有効です。

3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の頭文字をとったマーケティング環境分析のフレームワークです。市場・顧客、自社、競合のそれぞれの分析し、「KSF(Key Success Factor:成功要因)」を発見し、方向性を決める手法としてマーケティング分野で広く取り入れられています。

設計書を作成する場合にも6W2Hをまとめる際に効果的です。市場理解や他社との比較・優位性の確認、企画書作成や企画提案、要求仕様書の評価に活用できます。

Customer(市場・顧客)

近年は顧客視点が重要になっているので、最初に「Customer(市場・顧客)」の分析をします。市場規模や成長性、顧客ニーズ、購買意欲などを調査します。以下が代表的な把握すべき項目です。

  • 業界の市場規模
  • 市場の成長性
  • 顧客ニーズ
  • 顧客の消費行動や購買行動 など

Competitor(競合)

次に競合となる企業・製品・サービスなど、「Competitor(競合)」の分析を行います。以下が代表的な把握すべき項目です。

  • 競合他社の現状シェアと推移
  • 競合となりうる企業・製品の特長
  • 各競合の業界ポジション
  • 新規参入・代替品の脅威
  • 特に注意すべき競合の特長と今後の予測 など

Company(自社)

「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」の分析結果をもとに自社の戦略を考えます。ニーズの調査や競合他社と比較しながら、特長や収益性、販路、技術力など、さまざま視点から自社の強みと弱み、KSF(成功要因)を探ります。以下が代表的な把握すべき項目です。

  • 既存事業・自社製品の現状(売上、シェア、製品ラインアップ、戦略など)
  • ビジネスや製品の特長、強み、弱み
  • ヒト・モノ・カネの現有リソース、強み、弱み
  • 資本力・投資能力 など

マーケティング分野では、3C分析のほかにSWOT分析等も用いられますが、最終的にエンドユーザーのニーズを満たし、競合他社を上回る価値ある製品を企画することが「 KSF(成功要因) 」となる場合が多いです。

設計書にまとめる具体的なアプローチ

3C分析やQCDPaを踏まえて6W2Hをまとめ、設計書を作成する具体的なアプローチは以下のようになります。設計書まで落とし込み、設計審査をクリアしてはじめて3D CADによるモデリングに取りかかることができます。

使用目的を考える・製品や市場を分析する
6W2Hにあてはめながら使用目的を明確にします。さらに従来製品の長所や短所を分析し、競合他社との比較を行います。
製品開発の方向性を理解する
「どのような業界・顧客にアプローチするのか」「どのように供給するのか」「どのようなコンセプトで開発するのか」といった製品開発の方向性を策定します。
ニーズ・競合他社を分析する
3C分析を活用し、エンドユーザーのニーズ、競合他社の長所・短所などを調査します。
製品仕様を絞り込み、要求仕様書にまとめる
機能・性能などの製品仕様を数値化します。情報の優先順位を決め、最終的な要求仕様書にまとめます。
技術選択とFMEA/FTA解析・設計課題洗い出し
要求仕様をクリアするための技術を選択し、 FMEA/FTAを使用した故障・不具合防止の解析や設計課題の洗い出しを行います。
設計書にまとめる
問題がなくなれば設計書にまとめ、設計審査・構造設計へと進みます。

筐体設計のススメ トップへ戻る