量産

試作検証後、量産設計・量産試作を経て最終的な仕様書・図面をもとに量産化に取り掛かります。量産に向けて最終試作、治具や生産設備などの作り込みを行っていく段階になるので、この段階での後戻りは大きなコストアップにつながります。量産と言っても商品によってさまざまな工程がありますが、こちらでは基本的な流れと、機械設計者として注意すべきことをまとめています。

量産の基本的な流れ

設計を終え、試作・評価を行い、量産前審査をクリアすると、いよいよ量産に入ります。一般的に以下のようなステップを経て量産に進みます。

仕様書や図面のブラッシュアップ

詳細設計の仕様書・図面・回路図などをもとに量産設計を行います。量産前にデザインレビュー(DR)を実施し、審議・承認を得ます。

必要な材料・部品の選定、加工方法の決定など

最終図面などをもとに製造部門・製造業者と相談し、必要な材料や部品の選定、加工方法の決定、金型や治具などの設計、表面処理の仕様決定、生産手順書などの作成を進めます。

量産前試作

量産前試作では、量産に耐えうる水準の部品を揃え、量産に向けた生産ラインを作りながら試作を行います。

試験や検査を行い、規格等の申請を実施

工業製品の多くは、JISやISO等の規格に適合していることが求められます。そこで耐久試験などを実施し、市販するために規格申請等を行います。

量産開始

材料や部品の確保、生産設備の準備が完了したら量産を開始します。

量産で考えられるトラブル

量産でのトラブルは、大きなコストと時間の無駄につながります。そこで設計者には、量産を見越した設計と、トラブルを予測した設計が求められます。あくまで一例ですが、以下のようなトラブルが発生する可能性を考慮して設計を進めましょう。

大幅なコスト増になる量産段階の修正

フロントローディングの概念でも説明していますが、後工程になるほど修正にかかるコストと時間は増大します。量産前試作では、簡単に一部を修正するというわけにはいきません。もし修正が発生した場合は、金型の修正、内容によっては作り直しが発生し、大幅なコストアップにつながります。修正には時間もかかるので、納期遅延によるリリースの遅れにつながり、大きな機会損失を生み出します。量産前審査での指摘漏れ、修正漏れなどは致命的なコストと時間の無駄を生むことを理解しておきましょう。また、量産段階での修正等も見越した設計が大切です。

材料・部品の調達ミスによる納期遅延

設計者として気をつけなければならないのが、材料・部品の調達です。量産のために仕様書や図面完成しても部品が調達できず、すぐに量産できないケースは多々あります。材料・部品が調達できない理由としては、「予算の問題」「欠品」という2通りが考えられます。そこで設計者は、材料・部品の価格のほか入手性や代替品の有無なども検討しておく必要があります。また、もし欠品が発生した場合のリスクについても理解し、事前に対策を講じておく必要があります。

不良品・不合格品の判定基準の明確化

量産試作で問題なくても、生産ラインに移った段階で問題が発生することもあります。量産試作段階で検査や課題解決しておくべきですが、試作と量産では製造工程や使用設備、作業者が異なるのでトラブルが発生するリスクがあります。そこで検査基準書等で不良品・不合格品の判定基準を明確化しておき、補修・返品等の処理についても取り決めておく必要があります。これは初期ロッドだけではなく、製品販売後に発生した不良品についても同様です。製造部門・製造業者と連携して返品後の解析期間を明確にしておき、不良発生時の対処やリコール手続きなども話し合っておく必要があります。

設計者は量産方法にも理解が必要です

上記のようなトラブルの多くは、量産への理解不足が主な要因で、事前に予測できるものが多いです。予測不能なトラブルではなく、設計段階で対策できる可能性があります。例えば、初期段階の仕様書を詰めておく、デザインレビュー(DR)の頻度と精度を高めるなどの対処方法が考えられます。量産時の加工方法については、以下ページでも詳しく説明しているので併せてご覧ください。

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