国際単位系(SI単位系)
筐体設計では、単位系をしっかりと理解しておく必要があります。単位を間違えると、図面の意図が伝わらないばかりか、強度計算で正確な結果を得られないなどトラブルのもとになります。その基本が、国際標準に位置づけられている「国際単位系(SI単位系)」です。こちらでは、「国際単位系(SI単位系)」の基礎知識と種類、使い方について解説します。
国際単位系(SI単位系)とは
国際単位系(SI単位系)とは、十進数をベースにした世界共通の単位体系のことです。1875年のパリで締結された「メートル法を国際的に確立し、維持するために、国際的な度量衡標準の維持供給機関として、国際度量衡局を設立し、維持することを取り決めた多国間条約」というメートル条約が起源になります。
その後、メートル法が世界で使われるようになり、第10回・国際度量衡総会(CGPM)で「長さ(メートル)、質量(キログラム)、時間(秒)、電流(アンペア)、熱力学温度(ケルビン)、光度(カンデラ)」に基づいた六元系国際単位系が採択されました。第11回・国際度量衡総会(CGPM)では、この実用単位系に「国際単位系(フランス語:Le Systeme International d'Unites)」という名称と略称“SI”を採用。第14回・国際度量衡総会(CGPM)では、物質量の単位“モル”が追加され、現在の7つの基本単位になりました。
国際単位系(SI単位系)は、7つの基本単位と組立単位、接頭語で構成されます。7つの基本単位とは、“長さ・質量・時間・アンペア・熱力学的温度・光度・物質量“です。組立単位は、基本単位を組み合わせて乗法・除法の数学記号を使って表す単位です。接頭語とは、「ナノ」「センチ」「ギガ」などの乗数が該当します。組立単位が複雑になってくると実用上で不便なため、固有の名称と記号をつけた単位もあり、組立単位に用いられます。
- SI単位の構成
-
基本単位(7個)
- 量を表す7つの基本単位
m、kg、sなど
組立単位
- 基本単位を組み合わせて表示されるSI組立単位
M2、m/s、kg・m3など
- 固有の名称と記号を与えられたSI組立単位(22個)
N、Pa、Jなど
SI接頭語(20個)
- 定数を表す20個の接頭語
k、m、nなど
- 量を表す7つの基本単位
SI単位に属さないが、SI単位と併用される単位
- SIではないが、慣用的・歴史的に使用が認められている単位。
min、h、dなど
- 推奨していないが使用する場合は、SI単位との対応関係を示すことで併記される単位。
バール、デシベル、海里など
それぞれの単位について詳しくは、次の項目で解説します。SI単位には、「基本単位」「組立単位」「SI接続語」の3つがあり、そのほかSI単位ではないが併用する単位があるということを覚えておきましょう。
7つのSI基本単位
国際単位系では、7つの基本単位を使用します。定義まで覚える必要はありませんが、参考までに掲載しています。
量 | 名称 単位記号 |
定義 |
---|---|---|
長さ | メートル m |
1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる工程の長さ |
質量 | キログラム kg |
プランク定数を単位Js(kg m2 s−1 に等しい)で表したときに、その数値を6.626 070 15 × 10−34と定めることによって定義される |
時間 | 秒 s |
セシウム133の原子の基底状態の2つの超微細構造順位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間 |
電流 | アンペア A |
電気素量を単位C(Asに等しい)で表したときに、その数値を1.602 176 634 × 10−19と定めることによって定義される |
熱力学温度 | ケルビン K |
ボルツマン定数を単位 JK−1(kg m2 s−2 K−1に等しい)で表したときに、その数値を1.380 649 × 10−23と定めることによって定義される |
物質量 | モル mol |
アボガドロ定数を単位mol-1で表したときの数値であり、1モルには6.022 140 76 × 1023の要素粒子が含まれる。モルを用いるとき、要素粒子が指定されなければならないが、そのほかに粒子またはその種の粒子の特定の集合体であってもよい |
光度 | カンデラ cd |
周波数540テラヘルツの単色放射を放出し、所定の方向における放射強度が1/683ワット毎ステラジアンである光源の、その方向における光度 |
接頭語
SI基本単位の前につけて「km(キロメートル)」「mA(ミリアンペア)」のように使用します。そのほか「hPa(ヘクトパスカル)」「MN(メガニュートン)」のようにSI組立単位に用いることもあります。
接頭語 | 10n | 記号 | 十進数表記 |
---|---|---|---|
ヨタ (yotta) | 1024 | Y | 1 000 000 000 000 000 000 000 000 |
ゼタ (zetta) | 1021 | Z | 1 000 000 000 000 000 000 000 |
エクサ (exa) | 1018 | E | 1 000 000 000 000 000 000 |
ペタ (peta) | 1015 | P | 1 000 000 000 000 000 |
テラ (tera) | 1012 | T | 1 000 000 000 000 |
ギガ (giga) | 109 | G | 1 000 000 000 |
メガ (mega) | 106 | M | 1 000 000 |
キロ (kilo) | 103 | k | 1 000 |
ヘクト (hecto) | 102 | h | 100 |
デカ (deca, deka) | 101 | da | 10 |
一 | 一 | 一 | 1 |
デシ (deci) | 10-1 | d | 0.1 |
センチ (centi) | 10-2 | c | 0.01 |
ミリ (milli) | 10-3 | m | 0.001 |
マイクロ (micro) | 10-6 | μ | 0.000 001 |
ナノ (nano) | 10-9 | n | 0.000 000 001 |
ピコ (pico) | 10-12 | p | 0.000 000 000 001 |
フェムト (femto) | 10-15 | f | 0.000 000 000 000 001 |
アト (atto) | 10-18 | a | 0.000 000 000 000 000 001 |
ゼプト (zepto) | 10-21 | z | 0.000 000 000 000 000 000 001 |
ヨクト (yocto) | 10-24 | y | 0.000 000 000 000 000 000 000 001 |
固有の名称と独自の記号を持つSI組単位
7つのSI基本単位のほか、22個の単位には固有の名称とその独自の記号を与えられています。
量 | 単位の名称 | 単位記号 | 他のSI単位による表し方 | SI基本単位による表し方 |
---|---|---|---|---|
平面角 | ラジアン | rad | 1 | m・m-1 |
立体角 | ステラジアン | sr | 1 | m2・m-2 |
周波数 | ヘルツ | Hz | S-1 | |
力 | ニュートン | N | m・kg・s-2 | |
圧力、応力 | パスカル | Pa | N/m2 | m-1・kg・s-2 |
エネルギー、仕事、熱量 | ジュール | J | Nm | m2・kg・s-2 |
仕事率、工率、放射束 | ワット | W | J/s | m2・kg・s-3 |
電荷、電気量 | クーロン | C | s・A | |
電位差(電圧)、起電力 | ボルト | V | W/A | m2・kg・s-3・A-1 |
静電容量 | ファラド | F | C/V | m-2・kg-1・s4・A2 |
電気抵抗 | オーム | Ω | V/A | m2・kg・s-3・A-2 |
コンダクタンス | ジーメンス | S | A/V | m-2・kg-1・s3・A2 |
磁束 | ウェーバ | Wb | Vs | m2・kg・s-2・A-1 |
磁束密度 | テスラ | T | Wb/m2 | kg・s-2・A-1 |
インダクタンス | ヘンリー | H | Wb/A | m2・kg・s-2・A-2 |
セルシウス温度 | セルシウス度 | °C | K | |
光束 | ルーメン | lm | Cd sr | m2・m-2・cd = cd・sr |
照度 | ルクス | lx | Lm/m2 | m2・m-4・cd = m-2・cd |
(放射性核種の)放射能 | ベクレル | Bq | s-1 | |
吸収線量・カーマ | グレイ | Gy | J/kg | m2・s-2 (=J/kg) |
(各種の)線量当量 | シーベルト | Sv | J/kg | m2・s-2 (=J/kg) |
酵素活性 | カタール | kat | s-1・mol |
SIに属さないが、SIと併用される単位①
SI単位では、ひとつの量に対してひとつの単位だけを採用するという原則があります。しかし、慣用的・歴史的観点からSIと併用される単位があります。例えば、時間の量は「秒(s)」がSIですが、「分(min)」「時(h)」「日(d)」なども併用されます。
名称 | 記号 | SI単位による値 |
---|---|---|
分 | min | 1 min=60 s |
時 | h | 1 h=60 min=3600 s |
日 | d | 1 d=24 h=86 400 s |
度 | ° | 1°=(π/180) rad |
分 | ′ | 1′=(1/60)°=(π/10 800) rad |
秒 | ″ | 1″=(1/60)′=(π/648 000) rad |
リットル | l,L | 1 L=10-3m3 |
トン | t | 1 t=103 kg |
SIに属さないが、SIと併用される単位②
以下は、SIに属しませんが、SIと併用される単位で、SI単位で表される数値が実験的に得られるものです。
名称 | 記号 | SI単位で表される通史 |
---|---|---|
電子ボルト | eV | 1eV=1.60217653(14)×10-19J |
ダルトン | Da | 1Da=1.66053886(28)×10-27kg |
統一原子質量単位 | u | 1u=1Da |
天文単位 | ua | 1ua=1.49597870691(6)×1011m |
( )は標準不確かさを表す
そのほかに用いられる単位
そのほかにSI単位に属さず、SI単位と併用される単位として以下があります。これらの単位は、推奨されていませんが、使用する際にSI単位との対応関係を示すことで併記されます。
名称 | 記号 | SI単位による値 |
---|---|---|
バール | bar | 1 bar=0.1 Mpa=100 kPa=105 Pa |
水銀柱ミリメートル | mmHg | 1 mmHg=133.322 Pa |
オングストリーム | Å | 1 Å=0.1 nm=100 pm=10-10m |
海里 | M | 1 M=1852 m |
バーン | b | 1 b=100fm2=(10-12cm)2=10-28m2 |
ネーパ | Np | SI単位との数値的な関係は、対数量の定義に依存 |
ベル | B | |
デシベル | dB |
図面作成時は、単位にも注意しましょう
こちらでは、国際単位系(SI単位系)の基礎をまとめましたが、図面作成時には「SI単位で記載できているか?」ということを再度確認することが大切です。国際単位は、ほぼすべての国で採用されているので、グローバルな生産では非常に重要です。ただし、アメリカやイギリスなど、ごく一部の国では、「ヤード・ポンド法」など、それまで使用してきた単位系も認められています。