材料事典

筐体設計者として覚えておきたい専門用語をまとめました。筐体設計では、さまざまな材料の中から最適なものを選択し、形状を決定します。そこで重要なのが材料の知識です。こちらでは、材料事典として、筐体設計で用いられる一般的な材料について説明します。

材料事典

鋼板

鋼板とは、板状に圧延した金属を指します。厚さによって「薄鋼板」「中鋼板」「厚鋼板」に分けられます。また、圧延の方法によって「熱間圧延鋼板」と「冷間圧延鋼板」に大別されます。そのほか熱処理の有無によって「普通鋼」と「特殊鋼」に分類され、圧延方法や表面処理、材料によって特性が異なります。鋼材については、JISで細かく分類されています。

アルミニウム

アルミニウムは、元素記号Al、原子番号13、原子量26.981538、周期表13族に属する物質です。銀白色の柔らかく軽い金属で、飲料水の缶から自動車の部品まで幅広く利用されてます。身近なところでは、1円玉が純度100%の純アルミニウム製です。アルミニウムには、「比重が鉄や銅の約1/3と軽い」「比強度が大きく強い」「空気中で酸化皮膜を生成して錆びにくい」「塑性加工がしやすい」「電気をよく通す」「磁気を帯びない」「熱をよく伝える」「鋳造しやすい」など、さまざまな特性があります。一般的には、銅やマンガン、ケイ素、マグネシウム、亜鉛などを添加し、熱処理などを加えたアルミニウム合金が利用されます。

ステンレス

ステンレスは、英語で「stainless steel」と言い、直訳するとステンレス鋼になります。“stainless”は“錆びない”という意味なので、錆びない鋼というわけです。厳密には、錆びないわけではなく、錆びにくい鋼です。ステンレスは、鉄を主成分とし、クロムを10.5%以上含んだ合金です。

真鍮板

真鍮(しんちゅう)とは、銅と亜鉛の合金で黄銅(こうどう、おうどう)やブラスと呼ばれる金属です。身近なところでは、5円玉の素材が真鍮です。真鍮板は、真鍮を使った材料の総称です。真鍮は、腐食しにくく加工性に優れているので、昔から建築資材や家具などに使用されてきました。ただし、錆びや酸化で変色しやすいことがデメリットです。

銅板

銅メダルのほか、10円玉の素材(厳密には銅とスズの合金)としても馴染み深い金属が銅です。銅板は、銅または銅の合金でできた板材です。特長は、金属の中では、常温で銀に次いで2番目に電気を良く通すことです。電気のほかに熱も通しやすく、電気伝導性・熱伝導性に優れた金属です。また、銅は非磁性で磁化しません。

セラミックス

セラミックスとは、無機物質に熱処理を加えて焼き固めた材料を指します。代表的なものとして、耐火レンガ・セメント・ガラス・陶磁器などがあります。セラミックスの特長は、耐熱性・耐摩耗性・硬度が高いことです。しかし、衝撃に弱く、加工に時間がかかるというデメリットもあります。

プラスチック

プラスチックとは、石油を原料にした合成樹脂のことです。加熱整形後の特性により、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」に分けられます。熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PET)・高密度ポリエチレン(HDPE)・塩ビ(V、PVC)・ポリプロピレン(PP)・ポリスチレン(PS)・ABS樹脂(ABS)・ポリアミド、ナイロン(PA)・ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂(PMMA)などがあります。熱硬化性樹脂は、ポリウレタン(PU)・シリコーン(SI)、メラミン(MF)、エポキシ(EP)などです。身の回りにある樹脂製品のほとんどがプラスチックと言えます。

ゴム

ゴムとは、形状やサイズに関係なく、加えた力の方向に伸縮し、力を除くと元の形状に戻る特性(弾性変形)を持つ物質です。ゴムの主原料として使用される高分子物質(原料ゴム)は、天然ゴムと合成ゴムに大別されます。天然ゴムは、数種のゴムの木が分泌する樹液(ラテックス液)を乾燥固化させたものです。一方、合成ゴムは、石油から工業的に製造されたものです。

エンジニアリングプラスチック

エンジニアリングプラスチックとは、機械的強度や耐熱性を向上させたプラスチックの総称です。略してエンプラとも呼ばれます。エンプラは、自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用に使用され、一般的に40MPa以上の引張強さ、100°C以上の(長期)耐熱性を持つもの、または耐熱性がさらに高く150°Cでも長時間使用できるものとされてます。エンプラは、「汎用エンプラ」と「スーパーエンプラ」の2種類に分類されます。

FRP(繊維強化プラスチック)

FRP(繊維強化プラスチック)は、樹脂にガラス繊維や炭素繊維を混ぜて強度を向上させた複合材料です。プラスチックは軽量で加工しやすい反面、弾性や強度が低いため構造用材料に適しません。そこで生まれたのがFRP(繊維強化プラスチック)です。ガラス繊維を使ったものを「GFRP」、炭素繊維を使ったものを「CFRP」と呼びます。ガラス繊維や炭素繊維のほかにも使う繊維によってさまざまな種類があります。

FRM(繊維強化金属)

FRM(繊維強化金属)は、アルミニウムやチタンに繊維状のボロンやタングステン、アルミナ、炭化珪素などを加えた複合材料です。強度や弾性に優れていることから、スペースシャトルの部品や、航空関係の部品に用いられています。

MMC(金属基複合材料)

MMC(金属基複合材料)は、金属を基材に強化材料を複合させた材料です。金属酸化物(Al2O3、SiO2等)に炭化物(SiC、WC、TiC等)や窒化物(SiN、TiN)、硼化物(BN)、ダイヤモンドやセラミックス、プラスチックス(PTFE)などを複合することで、耐摩耗性や耐熱性、強度などを強化できます。MMC(金属基複合材料)には、組み合わせる材料によってさまざまな種類がありますが、共通していることは、金属に強化材料を混ぜることで高強度・高剛性と軽量を両立できることです。

C/C(炭素繊維強化炭素複合材料)

C/C(炭素繊維強化炭素複合材料)は、繊維強化複合材料の一種で、炭素繊維を母材として炭素で強化したものです。C/Cコンポジットやカーボンカーボン (carbon-carbon)、カーボンカーボン複合材料 (carbon-carbon composite)、強化カーボンカーボン (reinforced carbon-carbon, RCC)などの呼び方があります。その特長は、軽く丈夫で、1000°C以上の熱にさらされても強度を保ち、繰り返しの使用に耐えることです。そのため航空機や競技車両のブレーキシステム、宇宙ロケットの耐熱タイルなどに使用されます。

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