設計用語
筐体設計者として覚えておきたい専門用語をまとめました。こちらでは、筐体設計や機械設計で用いられる設計関連の用語を説明します。
3C分析
3C分析とは、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の頭文字をとったマーケティング環境分析のフレームワークです。マーケティング分野では、一般的に用いられる手法ですが、設計者にとっても重要です。市場・顧客、自社、競合のそれぞれを分析することで、筐体設計の企画・構想において市場理解や他社との比較・優位性の確認、企画書作成や企画提案、設計書など設計の前準備の段階で活用できます。
フロントローディング
フロントローディングとは、設計初期(フロント)に負荷をかける(ローディング)という意味で、製品開発初期段階に比重を置いだ開発手法です。製品開発における要件定義や基本・詳細設計などの上流工程に予算や人材などのリソースを投入し、品質や精度を高めて下流工程で発生する課題や不具合を減らすことで開発スピードの向上とコストの削減を図ります。その具体的な方法として、CADや解析ソフト(CAE)、3Dプリンタなどの導入が挙げられます。詳しくは以下のページを併せてご覧ください。
デザインレビュー
デザインレビュー(DR:Design Review)は、日本語で「設計審査」と呼ばれ、設計の各段階で設計者と各部門の専門家や責任者が集まって設計の評価をする場です。デザインレビューで重要なことは、設計トラブルを後工程に流さないことです。デザインレビューは、一般的に構想設計、基本設計、詳細設計、試作・評価などの各工程毎に行われます。
ポンチ絵
ポンチ絵とは、製図の下書きとして作成したものや、イラストや図を使って概要をまとめた企画書のことです。概略図や構想図とも呼ばれます。筐体設計においては、製図に入る前段階で構想を練ったり、企画部門やクライアントに形状や機能を説明したりするために用いられます。正確性が求められる図面とは異なり、フリーハンドで機能や形状などを盛り込んで概要をまとめることが重要です。近代では3DCADを使った下書きが主流となっているため、活用される場面は少なくなってきています。
機械的特性
機械的特性とは、「伸び」「耐力(降伏点、引張強さ)」「絞り」などの材料の力学的な特性です。筐体設計者は、適切な材料を選択するために、材料の特性である機械的特性を十分に理解しておく必要があります。
電気的特性
電気的特性とは、電気を流したときに「電気が流れやすい」「電気が流れにくい」「通電すると発熱する」などの評価特性です。筐体設計の場合は、中に基盤などが入るので、材料の絶縁性・誘電性・帯電性などが重要になります。筐体設計者は、機械的性質のほか電気的性質も理解し、設計を行う必要があります。
熱特性
温度変化による強度・寸法の変化、燃焼性、膨張率、熱伝導率など、熱が加わったときの各種特性を総称して熱特性と呼びます。熱特性は、材料個別に決まっているものもありますが、製品・部品ごとに試験を実施することも多くあります。CAE解析で熱特性をシミュレーションすることもあります。
環境特性
環境特性とは、静音性や耐塵性、防水性など、周辺環境に及ぼす特性です。また、筐体は、内部に電子基板やギア、モーターなどを入れるため、それらを守るために衝撃対策・防塵対策・耐圧対策・防水対策・防音対策・電気的ノイズ対策・温度対策・光線対策なども重要です。詳しくは以下のページをあわせてご覧ください。
加工特性
加工特性とは、切削・曲げ・溶接・接着・溶着などのしやすさです。筐体設計では、設計段階で加工特性まで考慮し、量産しやすい形状や材料を検討します。
表面処理
表面処理とは、製造工程の最後に行われる、材料表面のメッキや塗装などです。表面処理を行うことで耐摩耗性・潤滑性・強度・耐衝撃性・電気伝導度・熱伝導度・耐食性・耐薬品性・耐熱性・密着性などが向上し、さらに装飾性を高めることができます。一般的には、研磨や洗浄、エッチング、メッキ、着色、塗装などがあります。筐体設計では、表面処理も検討します。
熱処理
熱処理とは、部品や製品に熱を加える操作全般を指します。焼入れや焼きなましなどの金属熱処理のほか、食品などの加熱殺菌処理なども熱処理に含まれます。そのほか、熱可塑性樹脂の成形品の残留応力を取り除くために整形後に行う「アニーリング(アニール処理)」、熱硬化樹脂の成形品の硬化を進めるために行う「アフターベーキング」なども熱処理の一種です。
表面粗さ
表面粗さは、機械加工での表面の粗さを規定するものです。切削や研磨などの加工を行うと、表面に微細な凹凸が生まれます。それが原因でしっかりと密閉できず、水やホコリが侵入するといった可能性があるので、図面上で「表面粗さ記号」を用いて指定します。
幾何公差
幾何公差は、JISで「幾何特性仕様(GPS:Geometrical Product Specification)の規格を幾何特性ごとに表現する公差」と定義しています。「幾何特性」とは物の形・大きさ・位置関係などを指し、「公差」とは「許容される誤差」を指します。サイズだけでなく、形や位置に許される誤差まで定義しているところが「幾何公差」の特徴です。設計図面の記載方法には、大きく分けて「サイズ公差」と「幾何公差」があります。サイズ公差では、各部部分の長さを規制します。一方、幾何公差は、形状や平行さ・傾き・位置・振れなどを規制します。
3R(スリーアール)
3Rとは、「 Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の3つの“R”の総称です。「 Reduce(リデュース)」とは、製品を作るときに使う資源を減らし、廃棄物の発生を抑えることです。「Reuse(リユース)」とは、使用済み製品や部品を繰り返して使用することです。「Recycle(リサイクル)」は、廃棄物等を原材料やエネルギー源として有効活用することです。筐体設計では、3Rのために技術開発やリサイクル方法まで含めて考えなければなりません。