RoHS指令

RoHS指令は、電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関するEUの法律です。2003年2月に最初の指令(通称:RoHS1)が制定され、2011年7月に改正指令(通称:RoHS2)が施行されています。そして今年、2019年7月22日より改正RoHS指令(RoHS2)に伴い、6物質から10物質に禁止物質が拡大します。EU圏内に製品を輸出する企業にとって注目度の高いRoHS指令について詳しく解説します。

RoHS指令の概要について

RoHS指令は、電気・電子機器(electrical and electronic equipment 以下「EEE」)などの特定有害物資の使用制限に関するEUの法律です。「Restriction of the use of certain hazardous substances in electrical and electronic equipment」の略称で、RoHS(ローズまたはロース)指令と呼ばれ、日本語で「有害物質使用制限指令」と訳されます。

RoHS指令は、2003年2月に最初の指令(通称:RoHS1)が制定され、2006年7月に施行されました。その後、2011年7月に改正指令(通称:RoHS2)を公布。RoHS1では、有害物質として6物質が指定されていましたが、RoHS2では4物質が追加され、合計10物質が規制対象になりました。そして2019年7月22日から使用制限がはじまります。

2003年2月13日 RoHS(通称:RoHS1)公布
2006年7月1日 RoHS(通称:RoHS1)施行(1〜7、10のカテゴリ対象)
2011年7月1日 改正RoHS(通称:RoHS2)公布
2014年7月22日 医療機器(カテゴリ8)および制御機器(カテゴリ9)に適用
2016年7月22日 インビトロ診断用医療機器(体外診断用医療機器)(カテゴリ8の一部)に適用
2017年7月22日 工業用監視・制御機器(カテゴリ9の一部)に適用
2019年7月22日 1〜10のカテゴリ以外の電気電子機器に適用
フタル酸エステル類4物質の含有制限適用

RoHS2の禁止物質について

RoHS1では、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化カビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)の6物質が規制対象でしたが、2019年7月22日からは、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)、フタル酸ジイソブチル(DIBP)の4物質が新たに加わり、全10物質が規制対象になります。2019年7月22日からの規制対象物質は以下のとおりです。

規制対象濃度(閾値)は、カドミウムのみ0.01wt%(100ppm)で、それ以外の物質は0.1wt%(1000pm)となります。

禁止物質 規制濃度(閾値) 備考
0.1wt%(1,000ppm)
水銀 0.1wt%(1,000ppm)
六価クロム 0.1wt%(1,000ppm)
PBB(ポリブロモビフェニル) 0.1wt%(1,000ppm)
PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル) 0.1wt%(1,000ppm)
カドミウム 0.01wt%(100ppm)
DEHP(フタル酸ジニエチルへキシル) 0.1wt%(1,000ppm) 新規追加物質
BBP(フタル酸ブチルベンジル) 0.1wt%(1,000ppm) 新規追加物質
DBP(フタル酸ジブチル) 0.1wt%(1,000ppm) 新規追加物質
DIBP(フタル酸ジイソブチル) 0.1wt%(1,000ppm) 新規追加物質

対象製品について

RoHS1では、対象製品を1~10のカテゴリに限定していましたが、RoHS2では対象範囲が広がります。具体的には、以下11分類すべての電気・電子機器(交流1,000ボルト以下、直流1,500ボルト以下)が対象です。運用開始時期を見ていただくとわかりますが、カテゴリによって段階的に適用が開始しています。

対象製品カテゴリ 適用開始
1 大型家庭用電気製品 2006/7/1
2 小型家庭用電気製品 2006/7/1
3 IT機器及び遠隔通信機器 2006/7/1
4 民生用機器 2006/7/1
5 照明機器 2006/7/1
6 電動工具 2006/7/1
7 玩具、レジャー、スポーツ機器 2006/7/1
8 医療用機器 医療用機器 2014/7/22
体外診断用医療機器 2016/7/22
9 監視・制御機器 監視及び制御機器 2014/7/22
工業用監視・制御装置 2017/7/22
10 自動販売機 2006/7/1
11 上記カテゴリに入らないその他の電気・電子機器 2019/7/22

RoHSによって課せられる義務について

RoHS1は生産者のみに法的義務がありましたが、RoHS2はサプライチェーンに関わる生産者・輸入者・販売者それぞれに義務が課されました。そのうち生産者には次の4つの義務があります。

RoHS指令への適合性評価の実施および適合宣言をし、上市前の製品にCEマークを貼り付けること。さらに適合性を証明する根拠を技術文書で明示し、適合宣言書とともに10年間保管すること。
適合維持管理および設計変更や整合規格変更などの際には、適切に対応すること。
製造番号などの製品を識別するために必要な情報および製造者名、登録商標、住所、連絡先を製品若しくは包装や添付文書に記載すること。
上市後に不適合があった場合は、製品をリコールし加盟国の所轄当局に直ちに通知すること。

WEEE指令について

RoHS指令と同じく、2003年に欧州会議で制定された「WEEE指令( Waste Electrical and Electronic Equipment Directive、WEEE Directive )」というものがあります。RoHSが電気・電子機器の製造段階での有害な化学物質の使用制限であることに対し、WEEE指令は電気・電子機器の廃棄処分についての指令です。

EUでは、電気・電子機器を埋立処分していました。しかし、埋立処分では、有害物質が漏れ出し、土壌・地下水・空気を汚染し、埋立処分場の不足という問題も起きています。そこでリサイクル体制の構築を製造者に求めています。具体的には、製品カテゴリごとに「リサイクル率」「リカバリー率」を規定し、達成を要求しています。

製造元はどうすればよいのか

RoHS指令・WEEE指令をクリアし、EUで商品を販売するには、RoHS物質を含まないことを宣言する必要があります。しかし、全製品・全ロットの測定をすることは不可能です。そこで部品製造・組立・販売まで含めたサプライチェーンで以下の確認を行うことが重要です。

サプライヤーの非含有証明を確認する
自社の生産に関しては検査を実施する
第三者機関に分析・検査を依頼する

分析方法として、「蛍光X線法」「ICP発光分光分析法」「吸光光度法」「イオンクロマトグラフ法」「溶媒抽出GC/MS分析法」「熱脱着-GC/MS分析法」「加熱脱離イオン化質量分析法」などがありますが、物質や含有量によって検査・分析方法を変える必要があるので非常に手間がかかります。現実的には、第三者機関での検査がもっとも有効です。

EU以外でもRoHS指令と同様の法律が拡大

RoHS指令は、EU限定の法律ですが、世界的に有害物質制限の法整備が進んでいます。日本では資源有効利用促進法、米国ではカリフォルニア州有害物質取締局(DTSC)によるカリフォルニア版RoHS、中国では電器電子製品有害物質使用制限管理弁法、そのほか韓国やノルウェー、トルコでも関連法律があります。世界的にRoHS指令と同様の法整備が進むことで、原材料や部品の管理、検査・分析の重要度が増しています。

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